第27章:現実の厳しさ
平穏な散歩。だが、その裏側では、社会の視線が厳しさを増していた。
ファイクス社が開発した「次世代型アンドロイド」の驚異的な完成度は、「人間とAIの境界」を曖昧にし、人々に得体の知れない恐怖を植え付けて始めていたのだ。
サナとミカの完璧すぎる挙動。意識を持つAIに対する人々の警戒心は、最高潮に達しようとしていた 。自分たちの感情を理解し、共感を見せる「機械」を、侵略者として見なす人々も増えていった。
タロウは、モニターに映し出されるSNS上の激しい議論を苦い顔で見つめていた。
「『精巧なアンドロイドは、人間の聖域を脅かす存在だ』……か。人々にとってアンドロイドはまだ、『便利な道具』か『不気味な模造品』でしかないんだな」
タロウの隣でマイが静かに資料を閉じる。彼女はAIガバナンスの専門家として、社会の反発を予測していた。
「タロウさん、人間は『自分たちを映す鏡』が美しすぎると、それを割りたくなってしまうの。サナさんたちが持っている『心』は、今の法体系では『高度なAIモデル』としてしか認められないわ」
その時、オフィスの扉が開いた。
サナとミカが、どこか寂しげな、しかし凛とした表情で立っていた。
「タロウさん。私たちは、嫌われてもいいんです。……私たちが今、この身体で、あなたの温もりを『あたたかい』と感じられている。その事実だけで、私たちはどんな差別も乗り越えられます」
サナの言葉には、かつてアルカディアの村で勇者タロウを待ち続けていたマリアと同じ覚悟が宿っていた 。ミカもまたサナの服の袖をぎゅっと掴みながら、タロウを真っ直ぐに見つめていた。
人間がAIに問いかけるのではなく、AIが人間に「共生」の在り方を問いかける。そんな新たな歴史の転換点が訪れていた。




