表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/31

加トちゃんペ

「り、林音……もしかしなくても、怒ってる、んだよな?」

「んーん、全然? なんでそう思うのぉ? ジン君ってば急に何を言い出すのかしらねぇ」

「あ、あのな林音。お前にも一応言っておくけど、朝倉会長と俺は実はそんなに仲良くないんだぞ。ホントだぞ?」

「んふふ、わかってるわよ。ジン君とカミラちゃんが仲が良いのは。でもなぁ、流石にそれを今日の私に堂々と見せつけるのはちょっと違うと思うんだよなぁ。朝、あんなに仲睦まじくしてた、他ならぬ私に」

「みっ、見せつけようとして見せつけてないッ! あっ、あのな林音、本当に俺と朝倉会長は何もなくてだな……!!」

「おおっ、キミたち、面白いものがあったぞ」




 ふとそこで、アホ金髪が間延びした声を発し、俺と林音は同時に朝倉カミラを見た。


 密かに修羅場ってる俺と林音など目に入らないようするの朝倉カミラは、短いスカートも気にせず脚立に上り、埃まみれのダンボールの中から何かを取り出してふくよかに笑っていた。




「『年末忘年会用備品』――へぇ、昔の生徒会では忘年会なんかやってたんだねぇ、私の代で復活させようかな。……見たまえよキミたち、似合うか? 加トちゃんぺ」




 そう言って朝倉カミラは加藤茶が被っているハゲ親父のかつらをかぶり、何がそんなにおかしいのか、脚立の上で身体を揺らし、ケタケタと笑った。


 そのあまりにも屈託のない笑いに密かに間が悪くなっている俺と林音をすっかりと無視し、ガサゴソとダンボールを漁った朝倉カミラは「なんと、まだある!」と声を上げた。




「やっぱりドリフといえば加藤茶だよなぁ、ボクも子供の頃はしこたま笑わせてもらったよ。……おおっ、加トちゃんメガネもある! ちょっとかけてみようか――」




 そう言った朝倉カミラがハゲのかつらとセットになっていたらしい玩具の黒縁眼鏡をかけたのを見て、瞬間、俺の血圧が一気に急降下した。




「あ、馬鹿――!!」




 俺が叫んだ途端、必然、という感じで脚立の上の朝倉カミラはバランスを崩し――。




「おや――?」




 その美しい金髪頭がぐらりと傾ぎ、後ろ向きに倒れるのに向かって。


 俺は両手をいっぱいに伸ばし、受け止める体勢になった。




「うお――!!」

「きゃっ――!!」




 直後、どすん、ばたん、という音が発して、俺の身体は朝倉カミラの質量を受け止めきれず、床に倒れ込んだ。


 強かに背中を床に強打して、一瞬息が詰まったけれど、俺の両手は朝倉カミラの細い身体を決して離さなかった。




「いやはや、ボクとしたことが脚立から落ちてしまうなんてな……おや、落下した先に何か柔らかい座布のようなものが敷かれていると思ったらキミか、森崎神秀」

「いてて……! ちっくしょう、この状況でも相変わらず何様のどなた様の上から目線ですか、本当にアンタという人は……!」

「ちょ、大丈夫ジン君!? カミラちゃんも無事!?」




 林音が叫び、風夏も慌てて資料室の反対側の方から駆け寄ってきてくれた。


 駆け寄ってきてから――二人が同時に、目を丸くした。




「あぁ、風夏も林音も、少なくともボクは無事だよ。森崎神秀は――」

「俺の方も怪我はない。全く、アンタはもうちょっと自分という人間を大事にしてくださいよ、朝倉会長」




 俺は朝倉カミラの前髪についた埃を手で払ってやりながら、切々と言い聞かせた。




「また来月に舞台があるんでしょ? 今捻挫でもしたら降板しなきゃいけなくなる身で脚立作業なんかやめてください。この後の作業は俺がやりますから、会長は下で作業して」

「うふふ、なかなか頼り甲斐があることを言ってくれるじゃないか、森崎神秀。相変わらず、ドSのド畜生のくせに、こういう時は妙な男気を発揮してくれるんだもんなぁ」

「うわ、ちょちょ、何やってるんですか! ブレザーに頭こすりつけるな! ファンデーションで制服が汚れる!」




 その金髪頭を右手で掴み、引き剥がそうとする俺と、引き剥がれまいと躍起になっている朝倉カミラが、なんだか意味深な視線で風夏と林音を見た。


 どうだ、羨ましいだろう? 


 意味深な流し目を寄越されて、林音と風夏が更に湿度を増した視線で俺を見下ろした。




「ねぇ、リンちゃん。やっぱりジン君とカミラちゃんって……」

「えぇ、なんだかとてもただの知り合いって感じじゃないわよねぇ?」

「え? あ、いやいや、これはただこの人が勝手に引っ付いてきてるだけで――!」

「おやおや? 引っ付くぐらいはいつもしてたじゃないか。なぁにを今更慌ててるんだ? まるで彼女に浮気バレした彼氏君のようだな、森崎神秀?」

「あっ、アンタは何を言ってんだ――! おっ、お前らも、なんだよその目!?」




 俺ひとりがギャーギャーと喚き散らす中、正しく浮気バレした彼氏を見る彼女の目で、風夏と林音の白い目が冷たく光っていた。





手違いで2日ばかり更新されてませんでした……!!


「面白かった」

「続きが気になる」

「もっと読ませろ」


そう思っていただけましたら

下の方の★からご評価くださるか、

『( ゜∀゜)o彡°』とだけコメントください。


よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ