端っこの家の怪奇事件
誰も来ないような山奥の端っこにある小さな家で、当時行方不明であった男の死体が発見された。
不可解だったのは、その死体は腸だけが腹を裂かれ取り出されていたこと、そして体の外に出された腸の中には、生後間もない赤ん坊の死体がどこの部位なのか分からなくなるほどにバラバラにされて詰め込まれていたことであった。それが原因かは分からないが、夜になると端っこの家では気味の悪い嫌な音が聞こえるようになったらしい。
「——————って言うのがこの近くであった怪奇事件の話でね。もう20年も前になるんだけどもぉ、今でも思い出すね。なしにろぉ衝撃的だったからさぁ。・・・それでぇ、兄ちゃんはよくこんな話聞いきたいなんて言えるねぇ」
そう言ってハンディキャップからはみ出た薄い白髪を左に流し、穏健そうな老人はアクセルを踏み、なだらかな道をタクシーで走り進めた。
「あっ、まぁ、そのぉ・・・趣味と言いますか、何と言いますか・・・。普段の生活って僕あんまり刺激とかなくて。たまにこういうお話を旅路で聞くのが好きなんです」
「兄ちゃん変わってんねぇ~」
「ははは。・・・あのっ、ところでその後その事件はどうなったんですか?」
老人はまたその白髪を左に流し、少しだんまりとした後、静かに口を開いた。
「犯人はあっさりと見つかりましてね。たしかぁ、その家に住んでいた若い別嬪さんさ。ここからは私も良くは覚えていないから多少の相違があるかも分かんないけどね、その赤ちゃんってのは別嬪さんと行方不明だった男との子どもって話さ。今じゃぁその別嬪さんは精神科へ行かされたって聞いたねぇ。まぁ無理もないと私は思ったよ。元々その別嬪さんってのは噂じゃぁ奇行の多い人だったってねぇ、あの人ならやりかねないって具合にね」
その後しばらくの静寂が続いた後、この運転手が”着きましたよ”と言うと、海のような深く青い色をしたジャンバーを着た青年は年季の入ったリュックを背負って車内を降りた。そしてそのまま歩き出した。
「――――っわあ!!ちょっと待ってくれ兄ちゃん!!!お会計頼むよ!!!」
「あっ!・・・すっ、すいません忘れてました」
青年は支払いを終えると軽く会釈をしてから、歩き始めた。




