《第一部 完》 第十二幕 扉は・・・開かれた。
「陛下。光の日をお迎えになられたこと、心よりお慶び申し上げます。」
皇家と神殿との古き慣約により、宵の暦による光の日に神殿領域のこの地に入って待つこと幾日経つか。
暁の暦による光の日たる今日、ルルディは新女王として、神殿に向かう。
辺境伯が先頭に立ち、聖皇騎士団から選抜された近衛隊メンバーが女王を取り囲むように配置され馬を進める。
日中にも関わらず、暁の森はそのうっそうと生え茂った木々の重なりによって光が差さず、物音を遮断したかのような静けさが明けぬ宵闇の絡繰りの中を回っているかのような錯覚に陥りそうな空気を醸し出している。
だが、そんな中を辺境伯は一切躊躇することなく、獣道を開いて先頭を進んでいく。
そして、一挙に森を抜けると、パアーっと開けた視界に目が眩みそうになった。
前方の正面に大きな洞窟にそのまま扉を封じたかのような門が見えた。
辺境伯がさっと馬を降りる。
「陛下。ここからは徒歩になります。」
全員が馬から降りた後ではあったが、まるで本能を御すことから解放されたかのように馬達が一斉に森に向かって走りだした。
騎士団の者達が慌てて馬を追いかけようとしたが、その動きを制止する辺境伯の声が響いた。
「大丈夫だ。馬たちは森が面倒をみてくれる。ここはそんな場所故に。安心していい。それより我々がここへ来たのは・・」
騎士団の者達に放つ辺境伯の言葉に被さるかのように、ギッギッギーという大きな音を響かせながら正面の門扉がゆっくりと開いた。
そこから神官らしき者が姿を現し、こちらに向かって一礼する。
「お待ち申し上げおりました。どうぞお入りください。」
神官の後に続いて一歩足を踏み出すと、その空間は、とても洞窟の中とは思えないほど果てない空のように広がっていた。
「これは、聖魔力?次元を編み上げて結界を張って作った箱のようなものなのかしら。」
ルルディは興味深々な自分を止められない。
足元に広がり続く道のような幅広い白い帯にそってしばらく進むと、広場のような場所に出た。
「御付きの方々にはこちらでお待ちいただきます。
女王陛下にはこちらへ。」
案内してきた神官が言うと、近衛騎士達が騒然となった。
「私たちは陛下をお守りするためにここに来た。陛下お一人を行かせるわけにはいかない。」
血気立つ騎士達を辺境伯が宥め、最後にルルディが柔らかな微笑みと共に言葉を差し出した。
「この空間には神殿が許したものしか入ることはできないはず。そういう種類の結界が張り巡らせてあるもの。だから、私は大丈夫よ。みんな安心してちょうだい。」
そうして、彼女は皆に背を向けた。
そう、彼女はその場所へ。
彼女を待つ宿命へと、その一歩を踏み出したのだった。




