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裏の顔がヤバいイケメン君が狙う美少女を助けてから、気づけば彼のハーレムごとブチ壊して美少女全員オトしていました  作者: 本町かまくら


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第83話 須藤北斗の完全敗北



「あばよォ、九条ォ」



 須藤がそう言った瞬間。

 動きがまるでスローモーションのようにゆっくり見えた。

 須藤が引き金を引く動作。

 瞳さんの焦った顔。

 周りの警察が耐え切れず動き出す。


 そのすべてが俺には見えていて、それでも意識は銃弾が放たれる銃口に向いていた。

 鈍い音。

 銃弾が俺に向かって放たれる。


 ――その前に、俺は動き出していた。

 

 予測する。

 須藤の思考を。

 拳銃の角度、須藤の視線。

 引き金を引く指のわずかな動き。


 そのすべてをかき集め、俺は――





 ――バンッ!!!





「良介ッ!!!!!」


 銃弾が放たれる音と同時に、一ノ瀬の声が響き渡る。

 悲痛な叫び。

 ――しかし。



「ッ⁉⁉⁉」



 銃弾が頬をかすめる。

 俺は寸前のところで銃弾をかわした。





「じゅ、銃弾を避けただとォ⁉⁉⁉」





 俺はその勢いのまま地面を蹴り、須藤との距離を縮める。

 そして須藤が再びセットする――その前に。


「グハッ!!!!」


 須藤の顔面に拳を入れ、吹き飛ぶ須藤。

 その拍子に拳銃が須藤の手を離れ、屋上の床を滑った。

 

 ――この好機を見逃すなッ!



「須藤ッ!!!!!!」



 吹き飛んだ須藤にすかさず間合いを詰め、馬乗りになり腕を押さえる。


「テメェ!!! どけゴラァッ!!!!」




「――黙れ」




「ッ!!!!」


 もうこいつに何もさせない。

 二度、俺の周りの人を傷つけさせない。


 ここで終わらせる。いや……。






「今度こそ終わりだ――須藤」







「ッ!!! このォオオオオオ!!!!! クッ!!! どけッ!!! 離せェ!!! 離せェエエエエエエ!!!!!!」


 須藤が醜くもがく。

 しかしビクともしない。ビクともさせない。

 

「確保ォオオオオオオオオ!!!!!!」


 警察が須藤の足、頭を次々に抑えていく。

 折を見て俺は須藤から離れた。


「うがァアアアアアアアアアアア!!!! 俺に触るなァッ!!!! うぐっ!!! ぐァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」


 須藤の声が響き渡る。

 しかし、もう須藤は何もできない。

 警察が確保した。

 今度こそ終わりだ。

 やっと、終わりだ。


 屋上の床に座り込み、空を見上げる。

 すると、






「良介っ!!!!」

「良介くん!!!」

「九条くんっ!!」

「九条っ!!!!」






「うおっ!!!」


 四人が俺に飛び込んでくる。

 一瞬にして全身が柔らかい感触に包まれた。


「良介くんっ!!! ほんとによかった……よかったよぉ!!!」


 花野井が涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら言う。


「心配かけてごめんな、花野井」


「ほんとだよぉ……!!!」


 こんなにも心配してくれる人が俺にはいるのか。


「九条くん!!! ほんとに死んじゃうかと思ったんだからね!!!!」


「葉月……ごめんな」


「謝らなくていいよ! だってこうして、生きてくれてるんだからさ~!!!」


 葉月がぎゅっと俺の体を抱きしめる。

 まるで俺が生きていることを確かめるみたいに、強く。


「九条のばかっ!!! ほんとばかっ!!!!」


「瀬那……」


「……でもよかった。ほんとによかったよぉ……!!!」


「ありがとな」


 瀬那の見せる涙。

 どれだけ俺を心配してくれていたかが、震える体から伝わってくる。


「良介っ! 良介っ……!!!!」


「……一ノ瀬。怪我はないか?」


「ないわよ! だって良介が守ってくれたんだもの。ありがとう、良介っ! 本当に、ありがとう!!!」


「どういたしまして」


 四人の俺を抱きしめる力がどんどん強くなっていく。

 でもどこかそれが心地よくて。

 心の底から生きててよかったと思えた。


 ほっと息をつく。

 ようやく終わったんだ。須藤と俺の勝負が。


「りょうちゃんっ!」


「瞳さん!」


 ヘリコプターから降りてきた瞳さんも四人のごと俺を抱きしめてくる。

 その目には涙がいっぱいに浮かんでいて、どれだけ俺を心配してくれていたかが痛いくらいにわかった。


「生きててくれてよかったよぉ~~~~~!!!!!」


「あはは、ありがとう」


 五人に抱きしめられて、もはや苦しい。

 でも、人生で一番嬉しくて幸せだった。


「良介くん、よく勝ってくれた。本当にありがとう。これで俺たちの勝利だ」


「はい、荒瀧さん」


 荒瀧さんが笑みをこぼす。


「今は存分に噛み締めるといい。自分が生きて、勝ったっていう実感をね」


「……はい!」


 ちゃんと噛み締める。

 溢れるくらいに噛み締める。 

 俺が勝ったんだって。

 すべてをちゃんと、終わらせられたんだって。


「彩花ぁ! 弥生ぃ! 宮子ぉ……雫ぅ……!!!! こいつらどかしてくれ!!!! なぁ! おい!!!!」


 警察に拘束され、連行される須藤。

 顔は涙でぐちゃぐちゃだった。


「ひぐっ……うぅ!!! 俺様はこんなんじゃねぇんだぁ!! 頼む!!! 離してくれぇ……なぁ!! 頼むよぉ……!!!」


 須藤が助けを乞うように俺を見てくる。

 しかし、俺はそんな須藤を睨み返した。


「ひぃっ!!!」


 須藤は俺の周りの人を傷つけ、さらには俺の家を燃やした。

 色んな人を不幸にした。

 自分のことだけを考え、行動してしまった。

 そんな奴に今更情けなどかけるわけがない。


「く、九条ぉ……頼むよぉ……なぁ!!!!」


「おい、早く来い!」


「っ!!! やめろォッ!!! 離せェ!!! 俺様はァ……俺様はァ……!!! うわぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」


 須藤の叫び声が響き渡る。

 これが当然の報い。

 むしろこれからが、須藤のしてきたことに対する罰だ。

 須藤が警察に連行され、屋上から出ていく。


 俺はしばらくの間、五人に抱きしめられていた。

 これが守りたくて、そして守れたものなんだと思いながら。



 こうして、波乱の文化祭はようやく終わりを迎えたのだった。




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>この好機を見逃すなッ! 「須藤ッ!!!!!!」  吹き飛んだ須藤にすかさず間合いを詰め、馬乗りになり腕を押さえる。 これを先話でやってれば良かったのに……。
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