第78話 大号泣のイケメン君
※須藤北斗視点
「ハァ……ハァ……ハァ……」
息が荒い。
上手く呼吸ができない。
全部バレた。
俺がこれまで守ってきた“須藤北斗”ってブランドがァ……全部ッ……!!!
俺の周りを生徒が避け、ゴミでも見るような目を向けてくる。
「ね、ねぇあれ」
「うわ、須藤じゃん」
「あの様子だとこれマジじゃね?」
「信じられないわ」
「ずっと猫被ってたってことでしょ?」
「マジありえないわwww」
「キツイわこいつ」
「きしょすぎだろwww」
「ってかダサくね?」
「顔だけってことじゃん」
「前から須藤のこと怪しいなって思ってたんだよなー」
「マジキモイんですけどwww」
……これじゃない。
俺が知ってるみんなの目は、こんな冷たくないィッ!
もっと俺を尊敬して、憧れて、女は惚れた目で俺のことをォ……!
「あ、映像切り替わった」
「ニュース?」
手に持っていたスマホの映像が切り替わる。
こ、今度は一体……。
『速報です。○○市にて、大手不動産会社○○代表取締役社長、須藤隆二容疑者が脱税や薬物の売買、そのほか指定暴力団と共謀して不正な土地開発を行ったなど、様々な容疑で逮捕されました』
「………………へ?」
す、須藤隆二?
○○って、父さんの……会社?
スマホに映し出される、連行される犯人。
大勢の警察に囲まれる中、パトカーに乗せられていたのは……。
「と、父さんッ⁉⁉⁉」
『うわぁあああああああ!!!! 離せェ!!! 俺様に触るなァ!!! ウガァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!』
暴れる父さん。
さらに校内がざわつく。
「おい、これって須藤の父親の会社じゃね?」
「須藤の父親捕まった!」
「これヤバくね⁉」
「ってことは須藤って……」
「あの映像見た後だとなおさら……」
「アイツ、犯罪者の息子じゃん」
「ってか須藤も絶対なんかヤってるだろ」
「ヤバ……」
「ヤバすぎるだろ、アイツ」
う、嘘だろォ⁉⁉⁉
どうなってんだ……どうなってんだァ⁉
何捕まってんだよ父さんはァ⁉
信じられねェ……ありえねェ!!!
あれほどバレないようにって工夫を凝らして、ここまでバレずに来てたのになんでバレてんだよォ!!!
どうにかするって言ってただろうがァ!!!!
つーかヤバい!!!
このままだと俺の売春とかクスリとか、詐欺とか全部バレちまうぅうううううううううううう!!!!!!!!!
「ヤバい……ヤバいヤバいヤバいィイイイイイイイイイイ!!!!!!!」
もうこんなの収拾つかないじゃん!
マジで終わったのか⁉
アァ……アァッ!!!!
こっからどうすれば……いや、まだ何かできることが……いやいや、何ができんだよ俺にィ!!!
「おい! また映像切り替わったぞ!」
「今度はなんだ⁉」
またァ⁉
スマホに映し出される映像。
薄暗い地下室で、椅子に座っている一人の女が話し始めた。
『須藤くんには何度も何度も犯されました。その度に中に出されて……もしかしたら私、妊娠するかもしれません』
神妙な面持ちでそう語るのは……。
「か、佳奈子ォ⁉⁉⁉」
なんでお前が映像に出てるんだァ⁉
ってか何話してんだよ!!!
マズいだろそんなこと言ったらァ……!!!!
『それに須藤くんにはクスリを何度も飲まされて……私、もう普通じゃないんです。体も、心も……ふふっ、全部ぅ♡』
『須藤くん……いや、北斗さまぁ♡ 私にいっぱい楽しいことを教えてくれてありがとねぇ? ふふっ、大好きっ♡』
そこで映像がぷつんと切れ。
元の配信に戻る。
…………終わった。
「今の聞いたかよ」
「千葉学校に来てないと思ったら須藤と……」
「二人ともキモすぎだろ」
「ってかクスリって」
「もう弁解の余地ないだろこれ」
「終わったな、須藤」
「ヤバ……ありえないんだけど」
「須藤くん最低」
「二人とも終わってる」
凍り付く校内。
綺麗に誰もいない俺の周り。
俯いていると、俺の視界に足が映る。
「見てくれたぁ? 北斗様ぁ♡」
「ッ!!! 佳奈子ォ……テメェ!!!」
立ち上がり、佳奈子の胸倉をつかむ。
「何してくれてんだよォ!!!! なんでお前が映像でべらべら喋ってんだ!!!」
「だってぇ、こうすれば北斗様一人ぼっちになるでしょ?」
「……は?」
「そしたら私が独占できるじゃん。ふふっ、完璧な作戦だと思わなぁい? だからぁ~お願いされて快く出演しちゃったぁ♡」
「このクソ女がァッ!!!!!!!」
佳奈子を投げ飛ばす。
廊下の壁に打ち付けられる佳奈子。
「うっ……!」
うずくまり、悶えながらもその目を俺を見ていた。
「北斗様ぁ♡」
「ッ!!!!!」
俺は逃げ出すようにその場から去る。
……終わった。
これは本当に終わった。
もう挽回の余地もない。
全部バレたし、父さんだって捕まった。
そのうち俺も捕まって、牢屋送りになって……。
「アァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」
こんなはずじゃ……こんなはずじゃぁあ!!!!!!!!!
目から涙がボロボロと零れ落ちる。
「うわっ、須藤だ」
「こっち走ってくるぞ」
「うわ、キモ……」
「めっちゃ泣いてんだけどwww」
「きゃーーー!!!」
「きしょすぎるってあれ!!」
「誰か先生呼んで!!!」
アァ……アァ!!!
うわぁああああああああああああああ!!!!!




