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裏の顔がヤバいイケメン君が狙う美少女を助けてから、気づけば彼のハーレムごとブチ壊して美少女全員オトしていました  作者: 本町かまくら


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第62話 守りたかったもの


 ※瀬那宮子視点



 九条との電話が切れた後。

 

 あたしは部屋でスマホをぎゅっと握りしめ、震えていた。


「萌子……」


 萌子が今、見知らぬ人に攫われている。

 それが一体どんなに怖いことか。

 きっとあたしには想像もできないほど不安に違いない。

 

 あたしの大切な家族が、今……。


「……九条」


 思い出すのは、さっきの電話での会話。



 ――俺が萌子ちゃんを必ず連れ戻す。今度こそ、必ずだ。



 電話越しでも伝わってきた九条の覚悟。

 その覚悟があまりにも力強くて、私を少し安心さえさせてくれて。

 ますます九条が何者なのかわからない。

 ……けど、すごい人なんだっていうのはわかる。


 あれだけ能力が高くて、弥生や彩花、一ノ瀬さんにすごく信頼されてる。

 そんなの絶対並みの人じゃない。

 

 それに、九条の言葉や目には身を預けたくなる、託したいと思える強さがあるような気がする。

 どうしてそう思えるのか全然わかんないけど……九条なら何とかしてしまえると、そう思った。


「萌子……!」


 それでもやはり、萌子が心配で心配で仕方がない。

 


 ――大丈夫だ。俺が絶対に何とかする。だから瀬那は家で待っててくれ。



 九条はそう言ってたけど、あたしはほんとにそれでいいのかな。

 攫われたのは、窮地に陥ってるのはあたしの妹だ。

 九条は自分に責任があるって言ってたけど、それで言ったらあたしにだって責任はある。


 ……確かに、あたしが行っても何もできないし、むしろ足手まといかもしんないけど。

 でもそれでいいのかな。

 だってこれは最初からあたしの問題でしょ?

 それを九条に全部丸投げして、ほんとにいいの?

 

 胸の奥底から湧いてくる感情がどんどん膨らんでいく。

 あたしはスマホを立ち上げ、メールを確認した。


「……やっぱり、このままじゃダメでしょ」


 慌てて家を飛び出す。

 そしてタクシーを捕まえると、勢いよく乗り込んだ。


 九条がどうやって萌子を助けるかなんてわかんないけど……あたしも行く。

 九条には絶対に迷惑をかけない。

 それであたしは、あたしのできることをする。必ずだ。

 

 とにかく、あたしは行かないとダメなんだ。

 だってあたしは、萌子の“お姉ちゃん”だから。





     ♦ ♦ ♦





 「九条っ!!!!」「りょうちゃんっ!!!!」


 瞳さんと瀬那が俺の下に駆け寄ってくる。

 

 ぽたぽたと地面に垂れる血。

 体に鋭い痛みが走る。


「なっ……!!!」


 ニヤリと勝利を確信した笑みを浮かべていた男が、表情を変える。

 驚いたように口を開き、ナイフの矛先を見た。


「やっぱり、ダメージは残ってたんだな。もう少し勢いがあったら危なかったよ」


 俺はそう言いながら、“手で”受け止め、がっしりと掴んだナイフを男から奪い去る。

 

「テメェ……良介くんに何してんだッ!!!」


「ガハッ!!!」


 荒瀧さんが、唖然とする男を蹴り飛ばす。

 男は吹き飛ばされ、ばたんと地面に倒れた。


「大丈夫⁉ 九条ッ!!!」


「傷見せて!!!」


「二人とも、大丈夫だよ。手をちょっと切ったくらいだから」


「ちょっと切った量じゃないって! あたしのハンカチ使って!」


「あ、ありがとう」


 瀬那から花柄のハンカチを受け取り、ナイフを受け止めた手に当てる。

 俺の様子を見て、瞳さんと瀬那が大きく息を吐いた。


「はぁ~ほんとよかったよりょうちゃん! 私刺されちゃったと思ってさぁ~!!!」


「間一髪だった。瀬那が声をかけてくれなかったら、どうなってたかわからないけど」


「もう……心配させないでよ~!」


「あはは」


 瞳さんが今にも泣きそうな顔でほっと胸を撫でおろす。

 すると瀬那がわなわなと肩を震わせながら、俺の胸をぽんと叩いた。


「瀬那?」


「……九条、無茶しすぎ。一人で乗り込んだり、ナイフ手で受け止めたり……」


 さらにもう一度、俺の胸を左手で叩く。


「もう、ほんとマジで……っ!!!」


 瀬那が顔を上げる。

 瀬那は顔をくしゃくしゃにして、目にたくさん涙を浮かべていた。


「よかった……! ほんとよかった!!! 九条が……無事でっ!!!」


「瀬那……」


 まさか瀬那が俺のために泣いてくれるなんて……思ってもなかった。

 瀬那に叩かれるがまま、言葉を受け止める。

 瀬那の涙が、俺の服にぽたぽたと落ちた。


「ごめん、瀬那。不安な気持ちにさせて」


「ほんとそうだし……」


「でも、ちゃんと約束守ったから。責任、果たしたから」


「……ありがとう。ありがとね、九条」


「あぁ」



「お姉ちゃんーーーっ!!!」



「ッ!!! 萌子!!!」


 拘束を解かれ、目を覚ました萌子ちゃんが瀬那の下に駆け寄ってくる。

 瀬那はしゃがみ、飛び込んでくる萌子ちゃんを受け止めた。


「お姉ちゃん、なんでそんなに泣いてるの?」


「っ!!! な、泣いてないし! これは嬉しくて出ちゃうやつだから!」


「涙って嬉しい時にも出るんじゃないの?」


「それは涙って言わないの! もう……ごめんね、萌子」


「いーよお姉ちゃん! それより泣かないで?」


「だから泣いてないって!」


 そう言う瀬那は、溢れんばかりの涙をボロボロとこぼしていた。

 二人の姿を見て、思わず頬が緩む。

 よかった。ちゃんと“二人”の笑顔を守れて。


「よかったね、りょうちゃん」


 瞳さんがにこりと微笑む。

 俺は笑顔で返すと、抱き合う二人をそっと見守った。



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