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裏の顔がヤバいイケメン君が狙う美少女を助けてから、気づけば彼のハーレムごとブチ壊して美少女全員オトしていました  作者: 本町かまくら


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第57話 ギャルとギャップ


 あれから数日が経った。


 夏休みもあっという間に折り返し地点を通過し、徐々に終わりが見えてくる。

 俺は相変わらず特筆すべきところもない日々を送っていた。

 たまにというか、二、三日に一回くらいのペースで一ノ瀬たちが来ることはあるが、それ以外は普段の休日と変わらない。

 

「こんなもんか」


 一人、近くのスーパーに向かいながら呟く。

 むしろ中学の時に比べれば充実している方だ。

 家族や従業員以外の、それも同級生と会ってるわけだし。


「そのうち感謝しないとな」


 なんてことを思いながらスーパーに入る。

 今日の夕飯は瞳さんも一緒だから、瞳さんの好きなハンバーグでも作るか。

 えっと、まずは玉ねぎを……。



「九条?」



 声をかけられ振り向く。

 するとそこには、カゴを持ちながら萌子ちゃんと手を繋ぐ瀬那の姿があった。


「瀬那。どうしてここに?」


「夕飯の買い物。そういう九条は?」


「俺も夕飯の買い出し」


 俺が言うと、瀬那が驚いたように目を見開く。


「もしかして、九条が夕飯作んの?」


「そうだけど」


「九条が料理、ねぇ……」


 瀬那が見定めるようにつま先から頭のてっぺんまで見てくる。


「その感じだと、結構いつも作ってる感じ?」


「そうだな。思えば小学生くらいの頃から作ってるかもしれない。そもそも店の手伝いで料理してたし」


「そ、そうなんだ。……イケメンで運動出来て、勉強もできる上に料理もできるとか……恐ろし」


「なんか言ったか?」


 ぼそぼそと独り言のように言っていたから、あまり聞き取れなかった。


「い、いや! なんでもない! マジなんでもないから!!!」


「そ、そうか」


 そこまで全力で否定されたら逆に気になるが、追及しないでおこう。

 ふと、俺の顔をじっと見つめる萌子ちゃんと目が合う。


「お兄ちゃんも料理上手なの?」


「まぁ、それなりには」


「そうなんだ! じゃあお姉ちゃんと一緒だ!!! すごーーーい!!!」


「ありがとう、萌子ちゃん。でもそうか。瀬那も料理するんだな」


「ま、まぁね。親働いてるし、あたしが作った方がみんな楽だから……」


 そういえばこないだ、共働きの両親の代わりに家事してるって言ってたな。

 見た目は結構怖い感じのギャルなのに、普段は家事して、こうして妹の面倒見てるとか……ギャップがすごいな。


 そんなことを思っていると、いつの間にか瀬那にジト目で睨まれていることに気が付く。


「な、なんだ?」


「……今、意外って思ったっしょ」


「…………思ってないです」


「ダウト」


「っ! ……思ってな」



「――ダウト」



「………………すみません」


 諦めて謝ると、瀬那がふんっ! と鼻を鳴らしてそっぽを向く。


「ま、別にいいけど」


 そう言う瀬那の耳がほんのり赤い気がした。










 それから買い物を済ませ。

 

 瀬那の分まで袋を持ち、スーパーを出る。

 ちなみに俺たち二人とも、エコバック持参である。


「それにしても、ほんとにいいの? 送ってもらっちゃって」


「いいよ、まだ時間あるし。それに一応、“あれ”だろ?」


「っ! ……じゃあ、お言葉に甘えて」


 瀬那が俺から視線を逸らす。

 そして俺と瀬那の間を歩く萌子ちゃんに笑いかけた。


「最近は大丈夫なんだよな?」


「うん、視線とかはあんま感じないかも。相変わらず連絡は来るけど……九条がなんかしてくれたんだよね」


「まぁな」


 瀬那に詳しくは言っていないが、実は荒瀧組の組員を何人か借りてこっそり瀬那の周囲を警戒してもらっていた。

 その人たちの報告によると、確かに瀬那を監視しているそれっぽい人はいたらしいが確証を得ることはできなかったらしい。


「ほんと助かるよ。おかげでこうして、安心して外歩ける。ま、元々懸念? くらいだし気にしすぎてはなかったんだけどさ。でも……萌子いるし」


「私?」


「そ。萌子は気にせず笑顔でいてくれる?」


「わかった!!!」


「よくできました」


 萌子ちゃんに優しく微笑みかける瀬那。

 そんな瀬那を見ていたら、胸の奥底から伝えたいという衝動が湧き上がってきた。

 そして考えるよりも先に、俺は言葉に出していた。






「いいお姉ちゃんだな、瀬那は。いい奥さんにもなりそうだ」






 俺の言葉に固まる瀬那。

 そしてやがて、


「……へ? へぇっ⁉⁉⁉」


 驚いたように声を上げ、顔を真っ赤にする瀬那。 

 いつもクールな印象があるので、なんだか珍しいものを見ているような気分になる。


「な、な、何言ってんの⁉」


「いや、普通に思ったことを言っただけで」


「思ってもそんなクサいこと言わないっしょ!!!」


「く、クサいのか……」


 全く意識していなかったが、瀬那がそう感じたのならクサいんだろう。

 落ち込んでいると、瀬那が慌てたように言葉を補う。


「いや、そういう意味じゃなくて! 全然嬉しかったっていうか、なんていうか……!! ――あっ」


「ッ!!!」


 俺を見ながら歩いていたので段差に気が付かなかったらしく、瀬那がそのまま体勢を崩す。

 俺は咄嗟に反応し、瀬那の体を受け止めた。


「大丈夫か?」




「ッ!!!!!!」




 瀬那の体が一瞬にして固まる。

 そしてすぐに俺から離れた。


「だ、大丈夫! ありがとう!! た、助かった!!!」


「そうか。よかった」


 瀬那の顔が真っ赤に染まる。

 もしかして……照れてる、のかな。

 いや、そんなわけないだろ。

 瀬那はきっとこういう経験をたくさんしてるはずだ。

 たかが俺に触れられたくらいで照れるわけがない。

 むしろ嫌だった可能性あるよな。

 だとしたら申し訳ないな。


「…………ふぅ」


 瀬那が顔を手でパタパタと仰ぎながら息を吐く。

 普段のクールな瀬那からは想像できない様子に、俺は思わず頬が緩んでしまうのだった。



 ――だから俺は、そんな瀬那に気を取られて気が付けなかった。

 そんな俺たちを見る、“おぞましい”視線に。



 


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