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6話「避難は完了しましたが」

「先ほどは……感情的になってしまいすみませんでした」


 避難完了後、私は侍女に謝罪した。

 なぜって、ここへ来るまでに散々わがままを言ったうえ攻撃的な物言いまでして迷惑をかけてしまったからだ。


 侍女は私の安全のために付き添ってくれていた。本当なら一刻も早く逃げたいだろうに。仕事だからにしても。事実、私のために逃げ出さず傍にいてくれたのだ。なのに私はその行いを否定するも同然のようなことをしてしまった。


 今、深く悔いている。


 子どもではないのにあんな勝手な主張を繰り返すなんて、あまりにも幼稚だった。


「いえ、気になさらないでください」

「……でも」

「大丈夫ですよ。問題はありません。貴女がご無事であればそれで良いのです」


 後悔する私を侍女は許してくれた。本当のところなんてものは分からないけれど。実は怒っているということはあるかもしれないけれど。ただ、彼女は私を責めることはしなかったし、それからも傍にいてそっと見守ってくれていた。


「……ポポさんは大丈夫でしょうか」


 避難完了からしばらく時が経って、そんなことをぽつりと呟いてしまう。


「恐らく問題ないかと」

「でも、もし、あのまま逃げ遅れてしまっていたら……」


 やはり彼のことが心配だ。

 本来行くべき方向と真逆の方向へ行っていたのだから、万が一ということは考えられる。


 考えたくないけれど……。


「情報が入りましたらお伝えします」

「……ありがとうございます」


 憂鬱な夜は長かった。


 こんなに長い夜がこれまでにあっただろうか?

 そんなことを思うほどに長い夜。


 どんな夜もいつかは必ず明けるもの。

 遥か昔の人もそう言っていた。

 辛い時、苦しい時、涙こぼれる時も、たとえ長くとも夜は明けいずれ陽は射すもの。


 それはこの世界の絶対。


 ただ、それを誰もが純真に信じられるかといえば、そうではない。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 私もポポが心配… (´;Д;`) 端っこが焦げたりして香ばしい感じになってないと良いけれど… (´;ω;`)
[良い点]  ちゃんと謝るエーメラ。いい人ですね。  ポポのことを思っての行動、侍女さんもわかってくれているのでしょうね。  ラストのエーメラの気持ち。  本当に。その通りだと思います。  いつかは…
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