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僕が私になった日。  作者: スラル
5/9

第四話・前編 僕が学校へ行った日。 

こんにちは、スラルです。

今回から学校編が始まります。

四話が思った以上に長いので、前編・後編と分けさせていただきました。

 あーたーらしい、あーさが来た!きーぼーうのあーさーだ!

 この言葉にピッタリな快晴な日だ。しかし、ベッドの上に暗い顔をしてうずくまった一人の()少年がいた。

「うぅ。夢じゃなかった…」

 そう。青島渚こと、僕だ。

 ゆっくりとだるい体を動かして一階へと向かう。昨日は本当にびっくりした――。

「あ、おはよう渚!」

「おはよー」

 朝ご飯を用意していた凪帆が、にやにやしながら出迎えた。

「早く食べて学校へ行くわよ!先生に話つけないといけないんだから」

 だからか、無駄にウキウキしてやがる。


「こ、これでいい?」

「え?かわいいー!」

 僕の前では、キャーキャー言いながら凪帆が、スマホで中等部の女子制服姿の僕を

 連写している…。

 凪帆が少し前に来ていたやつだがピッタリだ。

 うれしくないけどー。

「よし!準備できたわね。レッツゴートゥスクール!」

 ホクホク顔の凪帆に引っ張られて、僕は家を後にした。

「気が重い…てか、女子制服って動きにくい!」

「いいわね。その顔でもう一回写真撮っておく?」

 スッとポケットからスマホを出し、ニヤつく凪帆。

「絶対にやだ!!」


 海風中学・高等学校。要するに、中高一貫校だ。市内唯一の中高一貫校にして、市内最大人数、最大面積の我が校。

 そんな我が校。中学校を卒業したら、このまま海風高校へ受験することも可能だし、他の学校への進学も可能だ。しかし、生徒の99.8%は受験を受ける。

 理由は明確だが、今度説明するとしよう。

 さて、正門へと到着した。ぱっと見は普通だ。だが、中に入ったら必ず違和感を覚えるだろう。

 目の前には、学校の玄関へ続くコンクリートで出来た道――を挟む二つの校庭。

 普通の学校にある大きさの校庭が我が校には二つある。ひとつは中等部専用、ひとつは高等部専用。

 豪華だよねぇ、僕もそう思う。

 では、左をご覧ください!そこには市内に一つあるか無いかサイズの図書館(一般人使用可)これはOBやOGの募金で建てられた図書館だ。

「お~い。ねーね!お~い!!渚?戻ってきてー」

「あ、あぁ、ごめん。職員室行こっか」

 気付いたら足が止まっていたようだ。

 さて、目指すは職員室!恐ろしいのは中等部・高等部両方の教師がこの部屋に集まっていることだ。というか、全国の子どもも職員室は嫌いだろう。

 早い時間から登校したおかげで生徒はあまりいない。

「あ、凪帆さん?おはようございます」

 後ろから、明るい声が聞こえた。

 たしか、凪帆の担任の美林みは先生だな。

 今年で二十五歳、一つ年上の男性と交際三年目(同居中)。

 え、何?情報源?ひ・み・つ!――何やってんだ僕はッ!!

「あれ、若は?今日は一緒に来てないの?」

 少し僕と目があったが、気にすることなく凪帆に話しかける美林先生。

 さすがに教師だからと言って生徒全員の顔を覚えてるわけじゃないしな、初めて見た子だな程度で済ますだろう。

 さて、ここで気になるのが美林先生の言う()だ。

 と言うのも、この()は他でもないこの、僕だ。一体いつから()と言われ始めたのだろか――。

 まぁ、今からどうする事も出来ないため諦めている。意味としては現生徒会長、青島凪帆の弟と言うことで一部の先生や生徒から()と呼ばれている。

「おはようございます!あ、渚ですか?えっと…私、職員室に向かっているのでそこで話します」

 こっちをチラチラ見ながら美林先生としゃべっている。やめろ、見るでない!

「あらそう?若に何かあったの?ところで、そちらの女の子初めて見たけど、どなた?」

「ひっ!?職員室で話しますので…」

 いきなり矛先が向いてびっくりした――、そのせいで凪帆と同じ返事しちゃった。

「え、あなたも?珍しいこともあるのね」

 愛想笑いしながら職員室へ向かう僕ら。気まずいな。

「おはようございまーす!」

 先陣を切って、美林先生が先に中に入る。

「おはようございます!高等部二年三組、生徒会長。青島凪帆です失礼します」

 ハキハキとあいさつをして中に入る凪帆。家でもそうして欲しい――。

 さて、緊張するが仕方ない。意を決し僕は中に入った。

「お、おはようございます…」

 一気に全員の目線が注がれる。

 え、なんかした!?え?

「君、中等部の制服を着ているが、クラスを言ってくれるか?」

「ひっ!ご、ごめんなさい!」

 え、どうしよう正直に言うべきなのか?どうするのが正解だ!?



 相変わらず職員室っていうのは緊張するんだけど。

 生徒会長になってから結構行き来することが増えたけど、慣れるのは無理ね。

 横では、クラスを言い忘れた弟。青島渚があわあわしている――。写真撮ろっかな。

 そうじゃない!凪帆、しっかりしなさい。また今度にしなさい!

 と、自分に言い聞かせる。

「先生方に弟のことで大切な話があります!」

 私は広い職員室全体に響き渡るほど、ハキハキとした声で話す。

「こちらにいる、女の子。先生方は初めて見るでしょう」

 そういって、私は隣で体を縮めてして震えている渚に指をさした。安心して、私が必ずどうにかしてみせる。

「この子は…中等部一年五組、青島渚。私の弟です!!」

 弟と言うところを強調し、先生方に話しかける。

 多分私の言っている事を理解することで精一杯の状況だと思う。私の横にいる可愛らしい女の子と、私の自慢の弟。この二つを結びつけることは絶対に難しい。固定概念に捕われていたら、絶対に無理!てか私も無理だった。

「ちょっと、理解できないかな、凪帆さん。詳しく説明してくれるかしら?」

 私の前で美林先生が心配そうな顔をして、私の顔を覗き込んでいる。

 もっと、詳しく。納得するまで説明し続けてみせる。


 あれから、二十分程。私と渚で協力して先生方に説明した。冗談にしては酷すぎるなどと、言われた。

 しかし、この学校で渚以上に記憶力のいい生徒はいないためか、渚が必死に記憶力を披露したのと、私たちの必死な説明。そして教頭先生の一言で納得していただけた。

 教頭先生が、認めてくださらなかったら先生方を納得させるのは難しかっただろう。

 理解の速い教頭先生には感謝しないと。



「まさか、そんなことがあるのね…。渚さんは大丈夫なの?」

 僕の顔を美林先生がしゃがんでのぞき込む。大丈夫?か――。

 違和感があるな、とくに下半身が半端じゃない。

「はい、どうにか頑張ってます」

「そう?何でも相談してね?」

 それだけ言い残すと、美林先生は凪帆と一緒に職員室を後にした。

「災難ね、渚さん」

 肩を叩かれ、振り向くと僕の担任の雪林(ゆきばやし)先生が心配そうにしていた。

 雪林先生、二十七歳。同い年の男性と結婚している。

「心配なさらなくても大丈夫です、災難には慣れていますから」

「そう?じゃあ、教室に行きましょうか。みんな待ってるわ」

「先生。これって、僕が説明した方がいいですか?」

「う~ん、私が説明するわ。そっちの方が信じやすいでしょ?」

「そうですね、ありがとうございます」

 先生と喋りながら廊下を歩いていると、やはり周りからの視線が気になる。

「なんだろう、あの子?」

「転校生かしら?」

「えー、かわいいな。どのクラスだ?」

 などなど、勝手な憶測が飛び交っている。いやだなぁ変にぞわぞわする――。

「おい、五組に入ってったぞ!」

「転校生!?やっぱそうなのか!」

 ふぅ、自分の教室に入っただけでバカ騒ぎになるのか。

 まぁ、いい!一旦自分の席に座って休むとしようか、気にするだけ無駄だしな。

「おい、渚の席に座ったぞ!?なんでだ?」

「渚…転校しちまったのか?寂しいな」

 今度は自分の席に座るだけでバカ騒ぎかよ!!何なのこの学校!?落ち着いた奴いないのか?

 とりあえず、リュックの中からUSBを取り出して、机の右上にあるUSBポートに差し込む。

 我が校は試験的に最新技術を取り入れている。

 今やったように、生徒全員に個人用のUSBが配られている。

 このUSBの中にはこれまでの授業内容、教科書のデータ等。普通の学校で勉強する際に必要なデータをほとんど保存されている。

 また、机に設置されているUSBポートに差し込むことで、学校のマザーコンピューターにUSBの持ち主が登校したというデータが送られるため、出席確認など不要。

 各自の机にはノートパソコンが埋め込まれているので、学校へ登校するのに必要なものは、USBと筆箱ぐらいである。

 と、まぁ出席確認を済ませて、ぼーっとしていたら、誰かから話しかけられた。

「おはよう、渚君」

「ん?あぁ、おはよ」

 隣の席の、浮真ふま 歌志希かしぎ同級生の女の子だ。クラスでは少し浮いた感じだ、というか不思議系の子なのが主な要因だろう。

「歌志希は、いつも通りで安心したよ」

「そう?ありがと」

「おう…てか、はぁぁ!?お、お前なんで僕ってわかった!?」

「ん?えっと、少し雰囲気が変わった?イメチェン?」

「いやいや、イメチェンどころじゃないでしょ!僕別人だもん、女の子だもん」

 ほんとになぜ気付いた?まじで何考えているかわからないな。

「確かに変わったけど、渚君は渚君でしょ?私はわかるよ」

「すごいな…」

 周りは相変わらず、僕のことで話している。飽きないものなのかまったく――。

「一気に人気の的になったね、渚君」

「そうだな。その人気の的の僕と喋っている、歌志希も注目されていないか?」

 矛先は僕だけでなく歌志希までにも向き始めた。

「確かに、そう言われるとそうね。カップルとかに勘違いしてるのかな?」

「今、女だし…お前もいい迷惑だろ」

「別にそんなこと思ってないけど?あと、私はそっちの渚君も好きかな」

「そーか、ありがとな」

 もうそろそろ朝の会が始まるから喋るのをやめるか、そこで先生が説明してくれるし。

 ――『も』!?いや、気のせいだな。変なことを考えるな渚!

「はい、静かにして。朝の会始めるわよー」

 雪林先生の一言でさっきまで騒がしかったクラスが一気に静かになった。

 その後は、淡々と朝の会が進んでいった。

 先生の話の際、さっきまで椅子に座っていた雪林先生が僕の方を見てうなずいた。

「えっと。みんな気になっているであろう、渚さんの事とそこの女の子について説明します」

 一気にクラスが騒がしくなった。

 そりゃそうだ十数分前から、それについて朝から持ちっきりだったからな。

「それじゃあ、来てくれる?」

 雪林先生に呼ばれたので僕は教壇へと進む。

 すれ違う時、周りからこれでもかと言うほど目線を浴びた。

 五分ぐらいかけ、雪林先生が一通り説明してくれたが、女の子になったというところを言った瞬間に空気を裂くほどの大きな驚きの声がクラス中に響いた。

 わからない事もないが、大げさな反応だな。

「じゃあ、渚さん一言お願いできるかしら?」

「はい」

 説明は雪林先生がしてくれた。だったら何を話すか――。

「おはよ。先生に説明していただいた通り、僕は青島渚だ。決して僕っ子なんかじゃない。お願いが一つだけある。これまで通りに僕と接して欲しい」

 生きてきた中で一番微妙な返事が返ってきた。

 やっぱ泣こうかな?

「あ、男子諸君。かわいいからと言って求愛して来たりするな。女子諸君。心外だが女子の仲間入りしてしまった、これからよろしくね!以上」

 凪帆が得意とする、ウィンクを真似してみた。

 何かを失った感覚がする――。

「うるっせぇ!お前なんかに誰が求愛するか!」

「ぜ、ぜってぇに…する、か…」

 おい、野次の中に一つ怪しいのがあるぞ!

 いやぁ、女の子系の喋り方も意外と面白いな――。

 って、おい!!僕はマジで何をしているんだぁ!

どーでしたか?

今回登場した、雪林先生は『プロローグ』にて登場した雪林刑事の奥さんです。

今後、ストーリーに関係してくるかもしれないので、覚えていただければ幸いです。

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