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僕が私になった日。  作者: スラル
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第三話 僕が両親に引かれた日。

久しぶりに投稿しました。

数年前にこの元となる話を書き始めたので、ストックは結構あります。

が、学生なので部活動などで投稿する日は不定期とさせていただいてます。

 現実逃避したい――。

 ついさっき僕の男としての尊厳が失われてしまったのだ――。

 今も違和感が半端ではない。世の女性を尊敬するきっかけが、まさかこんな事とは誰が予想できただろうか。

 今は、俺が良く着ている男物の半袖パーカーを着て落ち着いている。

「ねぇ渚、あんたこうなった心当たりあるんじゃないの?」

 ある種の確信を持った瞳で僕の方を見る凪帆。

 僕の凪帆の嫌いな所はここだ。今の俺は凪帆に似た姿だが、一番違うところがある。

 あいつの大きな瞳だ、そこには自分の意思を突き通す姿が現れている。

 凪帆率いる生徒会が機能しているのは、凪帆自身の『カリスマ』の力もあるが、さっき言った瞳も関係しているのかもしれない。

「や、やめてほしいな、その目。吸い込まれるような感覚がする…」

「渚、私は確信しているの。もう一度聞くわ、心当たりあるのないの?」

 ここで嘘を突き通すのは難しそうだな、確証はないが言うか。

「昨日、部活帰りに飴もらった…」

「絶対にソレじゃない!!」

 呆れる目を僕の方へ向ける。やめて欲しいって言ったのに。

「大体、その飴渡して来た人の詳細を覚えているんでしょ?その無駄にいい記憶力で!」

 無駄にと言いやがった。僕はコレがいいと思って選んだんだから、凪帆に文句言われたくない。

「えっと…。身長は多分178㎝。スーツは見たことのないデザインだった。多分、僕の知らない企業の指定スーツだろう。靴は二年前にトップブランドのグランシューザ社から発売された革靴。製品名はビギット36だな、大体26㎝ぐらいかな~。あ!前歯が差し歯だった!」

 とりあえず、身長や靴のサイズや予想も含めた情報を凪帆に伝えた。

「ほんとに、すごいわね。その()()()()羨ましい~」

「まぁね、自分に関係ない事でも覚えといて損はないから」

「そういえば、来週の火曜日は四時間授業よね?その日の放課後に警察に話をしに行きましょう。私、確かな『ツテ』があるのよ」

 ドヤ顔を決める凪帆。何故か、ツテと言うところだけ強調して言っている。

 いやいや、どういう事だよ!高校生がなんで警察と知り合いなの!?

「い、いやぁ、警察沙汰じゃ無くね?確かに困ってるけど…」

「無駄無駄無駄無駄――!!絶対に行くわよ。あ、あとその男物のパーカー似合ってないから、私の昔の服着なさい、多分ピッタリよ~」

 そう言い残すと、凪帆はスキップしながら一階に降りて行った。

「え!てか、この服どうやって着たらいいの…?」


 どうにか、服着れたな。名前はわからない。

 てか!ズボン短い!えっと、ハイウエストショートパンツとか言うんだっけ?

 女子ってのはおしゃれの為にはこんなの着るのか…すごいな!

 何か、自分で言うのもなんだが…かっわいい~な!凪帆に似ているけど。

 やっぱり、凪帆に比べたら幼い感じがするな。ちょっと嫌なのが凪帆に似てる瞳だな――自分の意思は突き通してねぇけど。

「あ!渚――?明日学校に行かせるけど。悩んで、悩んだ結果、あんた女の子になった事言うことにしたー転校生?とか考えたけど手続きめんどくさいから、よろしくねー」

 一階から聞こえてきた凪帆の大きな声に少しびっくりしたが、それ以上に話の内容の方が驚きだ――いったいどう説明したらいいのか。

 あ、やばい――トイレに行かなくては、もう我慢できん!死ぬ。

「昨日までは、もっと我慢できたのにぃ…。あれ、女の子ってどうやってトイレするの?」

 おもわず、トイレの前で足が止まってしまう。ま、まずい~一か八かだな。

「どうにでもなれ!!」

 勇者渚参る!

「お、おぉ…あ!ちょ、あ、あ~」

 やり方は知らないはずなのだが、なぜかうまくできた。

 僕の()()()()に新しい情報が更新されてしまった――。

 情報は多いに越したことは無いが、さすがに男としてはコレは知っちゃいけなかったな。


 凪帆から、中等部の女子専用制服を借りて、一通り女子の服の着方を教えられてその日は終わろうとしていた。

「本当に難しいな、服の着方…女子恐るべし」

「慣れなさい、まだ元に戻るか分からないんだから」

「いや、絶対に戻るね!!」

 絶対に戻る、僕は必ずアイツと再会する!

「絶対にろくな理由じゃないわね…戻らないにお金かけるわ」

「何ッ!?いいだろう、ユキの魂を賭けよう」

「勝手に魂賭けられるユキが可哀そうね…」

 少し寂しそうな瞳で足元を見る凪帆。

 僕らの足元には、我が家のペット(トイプードル)のユキが僕の方を睨んでいた。

「なんだよ、文句あんのかよ…」

「蹴って雪の魂を賭けたあんたが悪いんでしょ」

 ノリじゃん!ねぇ、ちょっとしたノリじゃんか!!



「ただいまー」

 あ、この声は父さんが帰ってきたか。

「おっかえりー」

 当たり前ながら、僕はおかえりと言った。

 が、今思い出した、僕の姿は女だ。

「あれ、凪帆の友達でも来ているのか?もう遅いから、帰った方がいいよ」

 僕の声を聞いて、疑問を持ったであろう父さんが、僕の方を見て話しかけてきた。

 会社のスーツを着ている父さん。四十代前半だが、若々しい。

 趣味はドライブ。車いじり等。

 しかしだ!父さんは安全運転という言葉を辞書で調べて赤線を引かせたいほど、運転が荒い。

 まぁ、運転技術はプロ並みだから、めったなことがない限り事故はしない。

 だが怖いものは怖い。本人曰く『カリスマ』維持のためだそうだ。

 おっと、考え事をして返事をするのを忘れていた、これじゃただの無愛想な女の子だ。

「あ、え、渚です~」

「へぇー。俺の息子と同じ名前なんだな、よろしく!」

「いや、よろしくじゃなくて、青島渚です!あんたの息子の!」

 空白の十秒。

 デジャヴ。やはり、凪帆と父さんは親子だなと実感した。

「渚?じゃ、じゃあ、俺と渚のレースゲームの勝率は?」

 お、そう来たか。

「俺が三勝 二十九敗…父さんは大人気ないから勝ったことはほとんどない!!」

 思い出すだけで、イライラする。

「お、俺の好きな漫画とそれを何周読み返したか?」

「頭文字Dだろ。今年までで三十七周読み返してた。慣性ドリフトを真似しようとして、三年前に車を珍しく壁にぶつけて廃車にした、母さんに言ってなかったよな?男の約束とか言って、新作ゲーム買ってくれた?」

「え、そうなの?新型の車が出たから変えたんじゃなかったの!」

 凪帆が新事実を聞いて動揺する。

 いや、違うな、父さんの方がその何倍も動揺している。

 そりゃそうだ、僕と父さんしか知らないはずの情報を知らない女の子が知っているからな。

 しかも!その女の子が自分の息子だと言い張っている、動揺するのも当たり前だ。

「あ、あぁ!凪帆、本当に!この子は渚なんだな!?他の子にアレの話をしたわけじゃなく!」

「私も最初はびっくりしたわよ。でも!よく見て、数年前の私に似てるでしょ?」

「言われてみれば確かに…」

 父さんが少し落ち着いてきたので、ここまでの経緯を説明した。

 普通なら納得できないだろう。こんな状況だ、認めざるを得ない。

「ただいまー。凪帆!!ご飯の準備するわよー」

 あ、母さんも帰ってきた。

 時計を見ると父さんが帰ってきてから、三十分も経っていた。

「あー疲れた、あのじじぃ!人使いが荒いったらありゃしない…ん、どなた?」

 毒を吐きながらリビングに母さんが入ってきた。

 そして僕と目が合う。

 我が家の事実上の頂点に立つ母。

 料理が人一倍得意で、本も出している。その技術を娘である凪帆と莉凪に伝えようとしたが、莉凪のいない今、凪帆一人に料理術を一生懸命教えている。

 だるいな、また長ったらしい説明をしないといけない――よし。

「凪帆、説明すんの手伝ってくれ」

「あーあ、分かった」

 また長くなったので、以下略(笑)。

 どうにかこうにか説明し終えたのだが――なんか、両親からドン引きされた。ひどくね?

「じゃあ、とりあえず。渚が女の子になっちゃたでいいのね?その姿で学校行くの?お母さん

 心配だわ…」

「まぁね、私に任せて。生徒会長だし、先生に話つけてくるわ」

 と、言うことで。僕はまた明日、同じ説明をクラスメイト約四十人の前でしないといけない。


どーでしたか?次回は学校に行きます。

癖の強いキャラクターが増えますので、こうご期待!

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