演説
―――――正一郎視点―――――
「敵です!その数、およそ六千!」
場内に駆け込んできた兵士が言う
「その敵は今どこに!」
ケインが言う
「城門前です!」
それに兵士が返す
・・・マジ?
(ああ、正面門辺りに敵兵が押し寄せているぞ)
何でわか―――ってそうかお前は上に居るから見えんのね
(まあな)
よし、俺もそっち連れてけ
(却下だ)
何故!?
(前に言っただろう?今更流れは変えられたくないのだよ
この国がつぶれても同じだ
リスティーナとティルト、この二つの国には残ってて貰わないといけないのでな)
そういやそんな事も言ってたな
「何!?何で接近に気がつかなかったんだよ!
見張りは何してたんだ!」
「分かりません!全員気絶させられて居ました!」
「チイッ!・・・誰か内部から裏切りやがったのか?」
・・・見てたか?
(見てたぞ?)
じゃあ真相は?
(あの”速度”の使い手が気絶させていたぞ)
・・・伝えようぜ、そう言う事は
(悪いな、忘れていた)
まあ、今更言っても仕方ない事か
(まったくだ)
・・・そう言うのは張本人が言っちゃいけないって知ってたか?
(いや、初耳だな)
ほほう、だったらその真っ白なお前の辞書に書いとけ
(ちょっと待て?書く物を用意するから)
いや、本当に書こうとすんなよ
(むう・・・で、どうするんだ?)
どうするって、何が?
(観客を鎮めないと”ぱにっく”が起こるぞ)
見回す
・・・ああ、確かに慌てて逃げようとしてるやつもいるな
(だろう?)
そうだな・・・お前に任せる
(いいのか?)
ああ、お前に任せて解決した事は結構多いし、な
(そうか・・・ふふ、少しは信頼されてきたという訳か)
そうだな、本当に”少し”な
(むう・・・つれないな)
釣れる釣れないの問題じゃねえっての
(まあいい)
俺の口が勝手に開く
「あーあーただいまマイクのテスト中」
そして小声でそんな事を言ってくれた
幸い、その声は騒ぎに紛れて消えてくれたようだ
・・・余裕がないって言ったのお前じゃなかったか?
(まあ、りらっくすだ。必要だろう?)
まあ、確かに必要かもしれないがな
俺の口が再び開き、声を発する
「静まれ!」
その声は会場内に響く
そして観客達が一斉にこちらを向く
何百、いや何千もの目が俺を見る
・・・怖え、超怖え
「貴様らに問おう、この大会は何のために開かれたものだ?」
アリスが尋ねる
それに観客の一人が反応した
「この国最強を決めるためd―――
「そう、正解だ」
そしてそれを強引に遮り、話を続ける
「貴様らはなぜ逃げる?怖いからか?
確かにそれは仕方がないのかもしれん
だがその行動は正しいものか貴様らは一瞬たりとも考えたか?
それが兵の進軍を遅らせ、被害を拡大する物だという自覚はあるか?」
アリスが言い、一旦そこで切り、観客の反応を待つ
「・・・無いだろう?
自分の命の保全、只それだけしか考えていないだろう?」
アリスが再び尋ねる
今度はそれに反応した者はいなかった
「それでもいい、それが普通だろう
だがそれが元でもっと大きな物が失われるとは考えないのか?
今貴様らが逃げれば貴様らは確実に略奪され、辱められ、その後殺されるだろう
それでもいいのか?貴様らはこの国と愛する者がどうなってもいいのか?
・・・真に国を、そして人を思うのならば
席に付け
私達の力を信じる者がいるのならば
勝利の報を待て
いいか?良く考えろ?
貴様らの行動一つでこの国は動く」
アリスが言い終わる
すると、今まで立っていた観客達のほぼ全員が座った
・・・なあ、何なんだ?そのカリスマ話術は
(うむ、今日も絶好調だ)
中身はこんな奴なんだがなぁ・・・
(ほれ、早く演説の締めをせい)
・・・え?やってくんないのか?
(やらんぞ?)
・・・ああもう、わーったよ!やるよ、やりゃあいいんだろ!
(物分かりのいい子は大好きだぞ、キスしてやろう)
それは全力で回避させて貰う
(つれないな)
釣れる釣れないの問題じゃないっての
さっさと締めねえとな
・・・何て言えばいいんだ?
(出陣だー!みたいな事でいいのではないか?)
分かった、その案で行こう
「ケイン」
「お、ああ、なんだ?正一郎」
「兵士の指揮は任せる」
「ああ、分かった」
「ラスティ」
「何?正一君」
「国王の探索、及び護衛は任せた」
「分かったよ」
「よし」
息を吸う
やっぱりこう言うのは一発ドカンとやっといた方がいいからな
「絶対に勝つぞ!」
「「オー!!」」
・・・俺、こんな展開にするつもりは毛頭なかったんだがなあ・・・
正「またも書いてるうちに?」
うん、”君”と”アリス”が暴走してくれたよ
正「さてさてなんのことやらっ」
おいこら逃げんな正一r―――行きやがった・・・
次回予告!
(視点が変わり、次は上界!)
ア「一体何が話されるのか!」
ガ「そしてこの戦いの行方は・・・?」
ジ「次回!不穏!」
ル「期待して待っていてくださいねー?」
(注、この物語は作者にも行方が不明なので次回がどうなるかは解りませんぜい