竜巻
思い付いた作戦はとても簡単だ
たった三つの作業しか必要としない
第一に”風”の魔法で体をできるだけ軽くする
これに関しては何時も使っているのであまり問題は無いと思う
馬車の速度を上げるのも、これを使ってやった事だしな
第二にここから処刑台まで跳ぶ
・・・ここが問題だ
幾ら体を軽くしようとも、跳べる距離には限界がある
しかも、処刑台は広場の中心にあるのでここからも結構距離はある
それに、飛んでいる最中は全くの無防備だ
つまり、矢だの魔法だのが飛んできたら防げない
最後に、着地したら国王様を救うだけだ
ここからはもう流れに身を任せるしかないだろう
・・・恐ろしく穴だらけな作戦の気もするが、一騎当千の力も無い俺にはこれしか手は無い
「・・・行くぞ」
俺は助走をとるために、建物の端から出来るだけ離れる
んで、十分に離れたら―――
「”身体能力強化”っと」
唱えると同時に、心なしか体が少し軽くなった気がする
いや、気がするじゃなくて軽くなってるんだろうけどな?
俺には調節できないんだよな、どれくらい身体能力を強化するかは
多分それが出来るのは、魔法戦士のジェシカさんぐらいだろう
なんだかんだいってあの三人ってかなり強い方なんだよな
例え囲まれていても、一兵卒相手なら包囲網を難なく突破するだろう
・・・俺はそういう場合に何人位倒せるだろうか?
・・・・・・・やめよう、なんか悲しくなってきた
まあ!戦法の問題も有るしな!
あっちは三人として考えてるし!
負け惜しみなんかじゃないからな!
・・・まあいいや、そろそろ真面目に―――行きますか
☆
”人獣”の使役する三匹のリザードマンが、素早い動きで父上の居る方の道上の敵を駆逐していく
その動きは、野生のそれの数倍はあり、普通の人間では目で追う事すら敵わない
まあ、本当はゴーレムを出させて目の前を一掃できれば楽だが
そんなものを出したら、魔物を倒せると言う正一郎の格好の餌食だろう、と言う事で出させていない
”人波”は、後ろからの追撃してくる兵士を、波で押し流して防いでいる
何もない所から急に現れる波には
どんなに屈強な兵士であろうとも、太刀打ちできずに流されて行く
”人面”には遠くに見える魔物使いを狙わせている
魔物を倒せるのは魔物だけ―――俺が知っている中で唯一人の例外、正一郎を除けばだが―――なので、使役している本人を叩くのが一番手っ取り早い
この三人の連携のおかげで
第三勢力の介入によって混乱していた父上の側の兵士たちは、俺達に近付く事すら敵わない
・・・俺の仕事が全く無いのは、少し疎外感があるが
☆
「この分ならーまだまだ持ちますねー」
もう何人倒したかは分からない位に兵士たちを斬り倒した頃、不意に隣に居たルシアが呟いた
「そうだね、確かにこれなら・・・ね」
私は更に二人斬り倒しながら答えた
周りの兵士たちの何人かが、それを見て更に顔を青くした
・・・今ので兵士の反応からでも解るように、何故か敵の士気が異様に低いのだ
姫様・・・つまりは、こちらの第一王位継承者が居ると言うのだから
手柄を求めて一斉に殺到してくるかと思えば、一度に数人しかかかって来ない
まあ、それも仕方が無いのかもね
何せ・・・あれを見ちゃあ・・・ねぇ?
少し視線を反対側に向けてみる
ルシアもそれに釣られて私と同じ方向を見て―――直に視線を逸らした
多分今見た物を見なかった事にしようと思っているのだろう
・・・無駄だって、ルシア
ルシアは横から回り込んでくる敵担当だったから
あんまり見る機会が無かったんだろうけど
・・・あれは少し前からずっとあるよ?
そう、少し前からあそこは―――目視が出来るほど強力に風が渦を巻いている
それに巻き込まれた兵士たちは、皆青い空へと呑み込まれていった
・・・つまりは竜巻、しかも人工的な
何で人工的か解るかって?そりゃあ出来る現場を見たからね
そう、あれが出来る少し前、私は見たんだよ!
正一君が剣を構えながら回り、それで起こした衝撃・・・かな?によって周りを囲んでいた兵士たちを吹き飛ばした所を!
そして、次の瞬間にあんな恐ろしい物が出来ていた所を!
・・・うん、取り敢えず正一君は怒らせてはいけない人だね、絶対
オ「・・・私達の会話の続きはまだかね?アリス」
ア「・・・おそらくは、この戦争が終わるまでは続くんじゃないでしょうか?」
オ「困ったな・・・その間ずっと話し続けねばならんのか」
ア「?戦うよりかはマシかと思いますが・・・?」
オ「・・・話題が尽きたのだよ」
ア「!!」
☆
さあ今回もやってまいりました!次回予告のお時間です!
ラ&ケ「「いぇ~い!!」」
それでは次回予告ぅ・・・スタートッ!
ラ「了解!
飛ぶ人いれば撃ち落とす人あり!
ケインは熾烈な弾幕を避けきれるのか!?
次回!DIVE!」
ケ「期待しててくれよな!」