思わぬ誤算
元々、あまり高くなかったので直に地面が見えてくる
あまり高くないとはいえ、やはり頭から落ちればさっきと同じ状況になるだろう
だが―――甘い!
俺が同じ間違いを二度繰り返すと思ったら・・・大間違いだぜ!
手を頭の上に持っていく
そして地面に手がついた瞬間、バク宙の応用で体を動かす
「はいっ!」
目論見通り、俺の体は空中で一回転し、見事に立つ事に成功した
しかも着地後のポーズまでばっちり決める事が出来た
さあ!得点は!?
(3,8だな)
低っ!?しかも微妙にリアル!
(まあ、そんな事はどうでもいい
今はそんな事よりも切羽の詰まった事態なのでな
いいか?私が今だと言ったら竹刀を横に振れ)
え、ちょっと待て説明が全く足りな―――
(今だ!)
アリスの声が聞こえたと共に、駆け抜けて行く一陣の風
(馬鹿者!何故振らなかった!)
いや、竹刀折れてるし
(・・・・・・・・・思わぬ誤算だ)
俺の話聞いてたら絶対分かってたよね!?
と、いうか説明ぐらい前もってしとけよ!
(・・・うむ、説明しよう
丁度今、風が通っただろう?
それは”加速”の使い手な訳だが―――)
待て、ちょいまて、頼むから待ってくれ
(―――何だ?)
今のって人工的な風だったの?
(ああ、で、話を戻すが
その”加速”の使い手がやらかしてくれてだな
リスティーナ王国国王を攫っている所だった訳で―――
・・・どうやったらそうなるのか色々説明が足りて無いと思うんだが?
(そこら辺は察しろ、でだな?
そいつを止めなければいけなかったのに貴様という奴は・・・はぁ・・・)
・・・いや、何で俺が悪い的な雰囲気になってんだよ!
いや確かに折った俺も悪いかもしれねえけど
一番悪いのはそれを考慮しなかったお前だろ!
(何?私が悪いとでも?)
全くだよ、その通りだよ、それ以外にねぇよ
(悪い事が起きたら全て人のせいか。全く、現代の若い奴は・・・
・・・そのセリフ、十数秒前の自分に当てはめてみろよ?
(・・・で、打開策だが―――
流した!!
(―――貴様が奴よりも早く走って追いつくと言う事でいいな?)
無 理 だ
(ふむ、確かに貴様の貧弱な足では無理だろう
だが、安心するがいい!我が”アリスの投合宅配せんたー”ではだな!)
何その俺に対する純粋な悪意!?
(時速400キロでの投合によって
早い、安い、危ない、の三本柱を確立させるに至ったのだ!)
せめて最後の一本を改善してからにしろ!!
(・・・ちっ!)
ちっ、じゃねえよ!
(まあまあ、ちょっとした悪戯心ではないか)
ちょっと!?ちょっとの悪意で俺は地面に半身をうずめる羽目になるのか!?
(・・・かの武田信玄は言った
”遺体は野に捨て、獣に喰わせるがよい”、とな)
良い言葉だけど今使うべきじゃないよねぇ!?
☆
「ガーネット、もっと早く!」
「・・・何も姫様自ら危険に飛びこむなど―――
馬車の前の席からのガーネットの言葉を遮る
「何を言っているんですか!
今知っているのも、動けるのも私達だけなんですから!」
「・・・でも、危ないですよ、姫様」
「そうですー、ここは私達に任せてくださいー」
「唯待っている事なんてできません!」
ガーネットの言葉を指示する二人に反論する
「・・・目の前で、姫様の最も嫌いな人が死ぬ事があるかもしれませんが?」
「・・・それでも、唯待っている事はできません」
助けられる可能性が有るのは私達だけなのだから
「・・・分かりました、もうお止めしません」
その覚悟を分かってくれたのか
ガーネットがこちらを向き、そう言った
その瞬間
馬車が何かに当たった様に揺れ、止まった
シ「な、何が起きたんでしょうか?」
はて?それは次回のお楽しみって事で
ル「隠し事はー良くないですよー?」
いやいや、展開を教えたらつまらないだろう?
ジ「まあどうせ毎日更新だしね!」
そゆこと!流石ジェシカ、話が分かるね!
ジ「まあね~」
では次回予告!
ガ「ぶつかった物とは何だ?
そしてそれがもたらす物は一体・・・?
次回!誤算も有れば福音も有るさ!」
シ「皆さん、楽しみにしていてくださいね!」
☆
正「・・・主人公って、何だろうな」
・・・どんな扱いを受けても挫けぬ心を持つ者って事だろうな