意思は悲しく儚く
男が再び構えた
私は先程から観察していて、気がつく所が有った
―――先程から右手を全く動かしていない
ラスティが戦闘不能にした箇所だろうか
・・・付け入る隙があるかもしれない
残る気力を振り絞り、構える
「行くぞっ!」
接近する
急な動きに頭がクラクラするが、我慢する
そして、剣を持っていない方の手で男の頭部めがけて打撃を放つ
剣を持っている手の方は少し遅く、腹部を横に切り裂くように放つ
男は打撃を、ひょいと頭を動かして避けた
しかし、そのせいで少し変な体勢になる
―――これなら避ける事はできまい!
その勝利を確信した一撃は、空を、斬った
何故と思って確認すると、男は寸前で屈み避けていた
―――まずい、避けられた!直に回避を―――
「終わりだ」
男がそう短く呟いたかと思うと、側頭部に強い衝撃が走った
そして私の意識は、そこで途切れた
☆
渾身の一撃を叩きこまれた男の体が沈んでゆく
側頭部に全力で喰らわせたのだ、万が一意識があっても暫くは動く事も出来まい
「終わりましたか」
「ああ、終わったぞ。・・・さて」
「ひっ!」
俺は”人面”に答えてから、後ろに潜んでいた男に向き直る
「リスティーナ王国国王だな?俺達に付いて来て貰おうか」
「き、貴様ら・・・一体何者だ!」
恐怖を押し殺すためか、少し怒気を含んだ声で尋ねてくる
「俺達か?そうだな・・・」
もう隠す必要もないか
「”人面”、解いてくれ」
「はい」
”人面”はそう短く答えると、俺の顔に手をかざす
「できました」
「ああ、・・・さて国王様よ、俺の顔に見覚えは無いか?」
「な、無いわ!誰だ貴様は!」
・・・無いらしい
敵国の後継者位覚えておけないのだろうか?
いや、俺も人の事は言えないが
「では正式に名乗ろう
ティルト帝国第一皇子、アレックス=ティルトだ」
「き、貴様が・・・?」
国王が驚愕で少し目を広げたかと思うと、直に細めた
「そうか・・・貴様が”不義の子”アレックス=ティルトか
確か正妃ではなく、愛人との子だったかな?」
そして嘲る様に短く鼻を鳴らした
俺が何度も受けてきた行為だ
やはり生まれを重要視する貴族や王族からすると、俺の生まれはみじめな物らしい
何度も、何度も嘲笑われた
だが―――
「そうだな、それで正しい
だがそんな事を言われるのも終わりだ
お前の首を持っていけば誰もが認めるだろう」
「くっ・・・!」
俺に言われて、現状を思い出したのか、下唇をかむ国王
「どうだ?見下していた奴に見下される気分は」
「・・・・・・」
「みじめだろうな、悔しいだろうな
だが、これが現実だ」
俺がそう言うと、国王はうつむく
「まあ安心しろ、ここで殺しはしない
帝都に連れて帰ってから、公開処刑だ」
「ぐぬ・・・!」
「”人面”、身柄を拘束しろ」
「はい」
そう言うと、”人面”は持ってきていた縄で手際良く国王を縛り始める
「・・・・・・」
「どうした?手が止まったぞ?」
「・・・やはり屈辱を与えるのならば亀甲縛りでしょうか?」
こ、こいつは・・・
・・・・・・まあ、良いか
何処でそんな事を知ったのかは気になるが
「何でもいいんじゃねえか?」
縛り方なんて知らねえし
「では持ちやすさを追求して簀巻きでいいですね」
”人面”は直に国王の体に縄を何重にも巻きつける
・・・まあ、確かにその方が持ちやすくはあるか
―――数分後、そこには無様な姿で床に転がされている国王の姿が有った
ゆっくり休んだらこんな時間だったよ!
正「寝過ぎだ」
いやあ、うっかり更新まで忘れかけたよ
正「忘れんなよ!」
うう・・・歳をとると物覚えがのう・・・
正「その年で高齢者って・・・何歳で死ぬつもりだよ」
20歳
正「めっちゃ早い!?死因は!?」
怨殺
正「誰にだよ!」
そこらへんの幽霊
正「何で怨まれてんだよ!!」
『紫鏡』という言葉を20歳まで覚えてたから
正「なんかしょーもない理由だった――――――――――!!」
―――※最近本当に有ったやり取りです
気を取り直して次回予告!
正「連れ去られた国王!
そしてその事実に気がついたシェディは・・・?
次回!盗られた物は盗りかえせ」
皆!期待していてくれよな!