贔屓
右から羽が伸びてくる
それを竹刀で撃ち落とす
同時に、左からも羽が伸びてくる
そちらは籠手で防ぐ
籠手と羽がぶつかった瞬間、左手に強い衝撃が走る
それこそ骨が折れるのではないかと錯覚するほどのが
あまりの痛みに思わず目を瞑ってしまう
それがいけなかった
「っ!」
腹部に向けての蹴り
見えなかったのでもろに食らう事になってしまった
再度の体が浮く感覚
地面に激突した瞬間、一瞬視界が暗転するも直に強烈な痛みによって覚醒させられる
「っ!・・・」
あまりの痛さに絶句する
じんじんするなんてもんじゃない
鈍器で打たれ続けてるような痛さだ
蹴られただけでこれかよ・・・
神はどんだけ自分達を贔屓してんだ・・・
激痛を訴える脳を無理やり動かし、そんな事を考えて痛みを紛らわす
・・・駄目だ、全く軽減されねえ
しかし倒れた所に追撃してこないのは何でだ?
せめてもの情けか?それとも奢りか?
痛む体を起こし、前を向く
そこでは羽女が俺を挑発するかのように手をクイクイ、と動かしていた
・・・くそ、冗談じゃねえ。対処しきれねえよ
あっちはほとんど、鈍器を持った手が十二本有るのと大差無い
じゃあその三面阿修羅に対抗する俺は?
手は二本、足も二本な普通の人間だ
如何しろってんだ?
・・・考えろ、俺。死にたくなかったら
1、戦う・・・いやだから正面からじゃ無理だ
2、逃げる・・・MU・RI☆
3、頑張る・・・何を!?
うがあああ!!ねえよ!無さ過ぎるよ!
あれだよ!妖怪退治は陰陽師に任せとこうよ!
俺には無理だよ!
ふと、有る考えが俺の頭をよぎった
いやいや、何考えてんだ俺
効く訳がな・・・いって訳でもないのか
そうだよな、神でも考える事はするはずだ
・・・だったら、効く・・・のか?
一か八か、使うか?
だがなあ・・・せっかく悪夢も沈静化・・・って最近はそうでもないけど
・・・如何しよう、いやマジで
でもどっちにしろ、何もしなきゃこのまま追い詰められて負ける
・・・今、ご丁寧に”負け=死”なんて方程式まで頭に浮かんできたよ
逃げることはできない、けどこのまま死ぬのも嫌
・・・仕方、無いのか?
「おい、羽女
俺の声は聞こえてるか?」
「聞こえてる
・・・私の耳は良い、周囲三十キロメートルくらいでの物音位なら聞き取れる」
それは良すぎるだろう
ピッOもびっくりだよ
「凄えな」
「そう言うお前もだ
唯の人間なのに私の攻撃を二発も防いだんだ、もっと誇れ」
余裕なのか、饒舌な羽女
「そうか?」
「ああ、私の動きに反応できる時点で既に人間を超えている」
マジか
「・・・俺なんかが超人なら、爺はウルトラマンだよ」
「うるとらまん?」
「凄い奴って意味だ」
なにせウルトラ男だもんな
「まあそれは良いとして」
「?」
首をかしげる羽女
フードで顔が見えないのが残念だ
その行動は魅力を五割増しなのにな
ただし美女に限る
「・・・面白い物、魅せてやろうか?」
「面白い物?」
「ああ。多分だが・・・お前は見た事がないだろうな」
「・・・強くでもなるのか?」
「ならねえよ」
どっかの戦闘民族じゃあるまいし
別に強くなる訳じゃない
ちょっとした小細工だ
「で?魅んのか?魅ねえのか?」
「面白いのなら見せて貰おう」
「そうか。・・・ちなみに、撤回は聞かねえからな」
力を抜き、両手を垂らす
かなり久しぶりだが・・・出来るよな?
構える
俺と羽女との距離は・・・だいたい三十メーターぐらいか
・・・良く吹き飛ばされて死ななかったな俺
やっぱ体も強化されてんだなあ、と今更ながらに実感する
じゃあその強化された体で魅せてやるよ
俺の最も得意で、最も嫌いな技
”無拍子”を、な
唐突だが、魅せると見せるの違いってなんだ?
正「随分と唐突だなおい」
だから最初に言っといただろ
唐突だって
正「確かに言ってたが・・・
まあいい、で?見せると魅せるの違い?
んなもん簡単だ!」
おお!納得のいく説明を頼むぜ正一郎教授!
正(教授)「アー・・・オホン!
ではそもそも魅せるとはどんな事なのかから説明するとだな――――
(中略)ここから下は予告以外読まずともおk
ここで出てくるのがさっきの、竹刀と木刀の違いだ!
つまり!木刀とは機能性に特化している!
だが!そのせいで昨今では暴走族の凶器としてもよく使われる!
しかーし!そこで出てくるのが救世主こと竹刀だ!
竹刀とは機能性、造形美、持ち運びの易さ!
そのどれを取っても”完・璧”であると言える
なおかつ伝統が――――
(更に中略)
・・・と、言う事だ!解ったか!」
さ、サー!
正「・・・ふぅ、久しぶりに全力で解説したぜ」
(・・・お前の竹刀への賛辞だけで一話分位はできるな)
正「ふっ、あんまり褒めるなよ。照れるぜ」
・・・さ!次回予告!
正「おう!
”無拍子”とは一体・・・?
激動?の次回を見逃すなッ!?」
(次回!”結局魅せると見せるの違いってなんだろう”
活目して待て!)
注:そんなタイトルではありませんのでご留意を