決意
呼んでから直に国王様と姫様、そしてお付きの三人とラスティ、そしてリーアムが来た
お付きの三人はかなり巨大な荷物を三人で持っている
・・・正直、用意された馬車が普通の大きさだったら入らなかっただろう
まあでも、こいつらはこの国の優秀な騎士のほとんどだ
これだけいれば、追手を撃退するぐらいはできるだろう
「ケインよ、一体どうするのだ?」
顔に少し焦りの色を浮かべた国王様が俺に尋ねる
「あれに乗ってくださいませ、国王様」
そう言って俺は古臭い馬車を指さす
兵士たちに持って来させた物だ
どこかの行商人が使っていた物らしい
だから大きさにはかなり余裕がある
「・・・随分と使い込んでおるな、何か考えが有るのか?」
「はっ!この馬車にした理由は二つあります」
「申してみよ」
「では・・・
一つは王族が乗っている事を悟られないためにです
これは、外装を見て頂ければ解るかと
もう一つはは馬車の素材です」
「何?如何言う事だ?説明せい」
大抵、王族の乗る馬車には、小さいが永続の魔力遮壁が張られている
それにより遠距離からの急な魔法を防ぐのだ
だが、今回はそんな事を言っていられない
だから俺が”風”で速度を上げる
だがその魔法は永続では無いし、あまり速くはならない
その旨を国王様に伝える
「うむ・・・理解したぞ」
どうやら納得していただけたようだ
「それでは、急いでお乗りになってください」
俺は言いながら馬車の扉を開ける
・・・中はとてつもなくカビ臭かった
本来ならこんなものを用意した時点で死罪物だ
まあでも、これならば王族が乗っているなど誰も考えないだろう
「うむ」
国王様が乗る、それに続いて
姫様、お付きの三人、リーアムが乗り込む
最後にラスティが乗り込もうとする
俺はその途中でラスティに耳打ちする
「ラスティ、気をつけろ?反逆者がいるのならば必ず追跡してくるはずだ」
「分かってる、任せて」
「まあ、それだけ揃っていれば多少は安心するがな」
「心配性だね、ケインは
大丈夫だよ、国王様からは国宝の使用だって許可されているんだから」
お付きの三人のの持ってた大荷物はそれか
まあ戦闘に使える奴ならいいんだが
・・・まさか余計な物までは入ってないよな?
それだけ言うとラスティは右手の親指を立て、笑ってから乗り込む
それを見た俺は馬車の扉を閉める
そして、俺は魔力を馬車に張り巡らせる
これで一時的にだが速くなるはずだ
「いいぞ、出せ!」
馬を操る奴に合図を出す
すると、直に馬車が走りだす
ラスティが馬車の窓から顔を出し、こちらを見る
何と無く少し不安そうな顔に向けて俺は親指を立て返してやった
それを見るとラスティももう一度親指を立てる
そして直に馬車は見えなくなった
これで一安心だ
・・・俺は、これが自己犠牲などだとは考えていない
民、兵、騎士、それらは全て頂点を生かすためにいる
少なくともそう考えているからだ
なぜなら
国は、民は、その他も、頂点さえ残っていればまた一から作り直せる
だけど、やはりそいつらにも感情は有る
だから聞こう、意思を
尊重しよう、意見を
「お前らに聞きたい事が有る」
俺は振り返り、言う
「お前らに大切な奴らはいるか?考えろ」
俺がそう言うと兵士たちは顔を下げ、考え始める
中には質問の意味を図りかねた奴もいるようだが
「・・・・・・・・・・考えたか?」
顔を上げた奴が大半になった所で俺は再び話を続ける
「いいか?自分の命が惜しい奴は今からあの馬車を追え
この戦いへの参加は強制じゃねえ、それに・・・確実に死ぬだろう
俺は別に何とも思わねえし、その方が賢明だと思う
それに、それは国王様の馬車を護衛する任務にもなる」
危険さ、そして逃げ出すための名分
・・・我ながら、よくぞ即興で出来るもんだ
「今から十分間、俺は後ろ向いて目を閉じとく、その間に行け」
俺はそれだけ言うと言ったとおりに後ろを向き、目を閉じる
多数の足音がした
それらの足音が聞こえなくなったのは、それからしばらくしてからだった
☆
「じゃあもうい~い?始めても」
丁度、アリスが一人で突出しない様に、と説き伏せたあたりで
フリストが笑いを浮かべながら俺達に尋ねてくる
「いいぞ」
それにアリスが返す
「じゃあいっくよ~?」
そう言いながら目の前の三人が戦闘態勢を整える
俺達も武器を取ったり、構えたりして各々戦闘態勢をとる
少しの間、静寂が場を支配する
それを打ち砕いたのは鎧女だった
「{力よ、我の呼びかけに応じ、集え}{集う力よ、集束し敵を撃ち抜く刃となせ}{全ての―――
直前詠唱か!?
俺が鎧女の方向に向けて魔法を放とうとした瞬間
クレアさんが鎧女に向かって走って行くのが見えた
・・・そうか、一対一じゃねえもんな
鎧女はきっとクレアさんが何とかしてくれる―――はず
だから、目の前の敵に集中しろ
そして―――目の前の羽女を全力かつ全速力で倒せ!
俺は靴の辺りの魔力を調節し・・・全力で地を蹴った
うっひょい!とっても受験前だね!
正「・・・勉強は・・・?」
SI☆RU☆KA!
今の俺を止められるものがいると思うなよッ!?
俺はこのまま垂直に受験という名の大気圏に突入じゃああ!!
正「無理だ!ガンダOでも冷却シートがなきゃ無理だったのに!」
ふ、今の俺に不可能はないッ!
って事でこのまんま次回予告SA!
正「羽女VS俺、いったいどうなる!?」
ケ「下界にも動きが・・・!?」
@「次回、上界デノ決戦!!ソノイチ!」
正義「期待して待っているんだァァアア!!」