3話 プレゼント
突如現れた女神によりこの世界に連れてこられた小川昌人はこの世界で生きていくことしか出来ないと伝えられた。
正直な感想を女神に伝えたところ、どうやら女神の機嫌を損ねてしまったらしい。
「おまたせ〜!プレゼントで〜す」
自分の体を見回すが前に出ている醜いお腹以外に異常はなさそうだ。
「何も起きていないぞ?」
「あら、そうでもないですよ?【ステータス】って言ってみたらわかりますよ〜?」
手前であんなことを言われているので信じがたいのだが、今はコイツの言葉に従ったほうがいいのかもと判断して言われたとおりに口を開く。
「【ステータス】」
顔の前にプレート上の半透明の何かが浮かび上がる。
そこに書いてあるものを確認すると…
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フトリ=ニッケーリ
男 20歳
レベル1
体力1 魔力1
攻撃1 防御1
俊敏1 運 1
知力? 精神力?
その他
【女神の悪意】:体型が変わらなくなる
【女神のわがまま】:レベルが上がるまでに2倍の経験値が必要
【女神のきまぐれ】:毒耐性・マヒ耐性・自死不可
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何だこれは…
ゲームの世界みたいにここにはレベルという制度があるのか。
知力と精神力以外の全てが1ってどういうことだ?
それにその他の3行は…
「確認できました〜?さいっこうのプレゼントでしょ〜?知力と精神力に関しては精神に引っ張られてしまったので隠させてもらいました〜ムカつくので。どう?どうどう?私からのプ・レ・ゼ・ン・ト!」
こっちを見ながらニヤニヤと最高に歪んだ笑顔をしてやがる。
「はっきり言って最悪だな。なんだこのその他の内容は!」
「あ〜それですか〜?それは私からあなたへの女神の加護ってやつですよ〜」
こんなとち狂った女神の加護が存在するのか…
「まず〜、私のことを醜いとか言ってくれたので〜その醜い体のままで居てもらおうっていう私からの純度100%の悪意でしょ〜」
純度100%の悪意というパワーワード…
「次に〜、せっかくなら苦労してもガギ苦しんでほしいなぁ〜っていう私のわがままを形にした最高のプレゼントに〜」
わがままでレベルアップまでの必要経験値が2倍って…
苦労してほしいってこれも悪意だろ…
「最後に〜ちゃんと加護っぽいものをあげようと思ってこれよ〜。本心としてはこんなにおもしろいおもちゃが簡単に壊れちゃったらもったいないから〜壊れないように頑丈にしておいたよ〜。死にたいと思っても死ねないのは苦しいわよ〜もがき苦しんで死にたくても死ねない状況に絶望しながら生きなさい」
完全におもちゃって言いやがったなコイツ…
「なになに〜?私からのプレゼントが不満なの〜?」
「これをもらって不満じゃないやつが居るのか?」
「あ〜んもう可愛くな〜い!」
こんなことをされて従順な人間が居ると思っているコイツの頭のほうがどうかと思う。
「そんなに不満なら許してあげてもいいのよ〜?た・だ・し…せいぜいもがき苦しんで絶望に打ちひしがれて私の居るところまでたどり着いて「麗しき女神様。私が全て悪かったです非常に反省をしているので私をお救いください」って言いながら惨めに地面に額を擦り付けながら言ってもらって〜私のつま先にキスをしてくれたら考えてあげてもいいわよ〜?」
何を言っているんだコイツは…
「もし、そうしてくれるなら元の世界の姿に戻してあげてもいいわよ〜?ムカつくけど顔は好みだったのよね〜。だ・か・ら〜私の下僕として生きていくことを誓ってくれるならいいわよ〜?」
「誰がそんな事するか」
「そう。交渉決裂ね。それじゃあ、醜く這いずり回って私を楽しませてね。私の醜いおもちゃ」
そう言うと女神は消えていった。
「なんだったんだよあれ…どうしたものか…」
それから数時間本当にこの世界から去る方法を試し続けたが結局どれも成功することはなかった。
何かを試す度に頭の近くに現れる謎の光の玉に今回はどうして死ねなかったのかを説明をされることを繰り返しているうちに何もする気が起きなくなっていた。
仰向けでまた大地に寝そべる。
ぼーっと空を眺めて居ると太陽が随分と傾いている。角度からしてあと3時間ほどで日没になるだろう。
ぐぅ〜っと腹がなる。
コイツ…フトリ=ニッケーリの記憶によれば今日は特に何も食べていないようなので半日近く何も食べずに活動していることになるのか。何もしていなくても腹は減ってしまう。
まずはこの場所で夜を越すことができるのかどうかだ。
フトリはろくに勉強をしていなかったからこの辺りの気候にまでの知識に関して非常に乏しいようだった。
周りの樹木を見てみると見たことも無い植物ばかりだが広葉樹のように見えるのと今の気温があつすぎたり寒すぎたりすることが無いのでおそらくは問題ないだろう。
次はどうするべきか…まずは食料の調達から初めなくてはいけない。
だが、幸い目の前には池がある。
先程水の中に入った際に口の中に入ったので淡水ということはわかっている。
ここから見ているだけでも小さくはあるが魚影が見えているから淡水魚が居ることはわかっているのだ。
わかっているのだが、どうやって捕まえるかが問題だ。
手で捕まえることなど不可能に近い。道具も無い。
つまり、魚を捕らえて食べるのはまず難しいとだと言う判断に至るまでに時間はかからなかった。
この知覚には獣が居るのかもわからないからひとまず焚き火の準備でも…
火を起こす?どうやって?
摩擦…は現実的ではないな…
太陽光を凸レンズなどで集めて…も凸レンズが無いから不可能と…
必死に頭を回転させて案を巡らせる。
「魔力…魔法か…」
兄のホソリは魔導書を呼んだだけで出来ていたが、俺はどうなんだろうか?
過去にホソリにあこがれてフトリも魔導書を呼んでいたことはあったようだが…
ええっと?詠唱をすれば発動するのか?
「大いなる炎の精霊よ。我が願いに応えて顕現せよ。我が求むは小さき炎。我が魔力を糧に我が願いを叶え給え!」
なんとこっ恥ずかしい詠唱なのだろうか…
ズキンッと痛みが頭に走る。
ズッと体から何かが抜け出るような感覚で一気に体に訪れる倦怠感。
「ぐうぅ…な、なんだこれ」
目の前に俺が望んでいた火が現れることがなかった。
何も起きなかったにも関わらず体からは力が抜け、激しい頭痛に襲われる。
何が起きたのだろうか?
「【ステータス】」
この体の変化が何に起因しているのかを確認するためにもこれを確認するのが一番便利だと判断したのだ。
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フトリ=ニッケーリ
男 20歳
レベル1
体力1 魔力0/1
攻撃1 防御1
俊敏1 運 1
知力? 精神力?
その他
【女神の悪意】:体型が変わらなくなる
【女神のわがまま】:レベルが上がるまでに2倍の経験値が必要
【女神のきまぐれ】:毒耐性・マヒ耐性・自死不可
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何も起きていないのに魔力だけ持っていかれている。
つまり先程の詠唱に関しては成功していたと考えるべきなのだろう。
考えられる原因は必要だった魔力量を供給することが出来なかったことなのだろう。
「となると…魔法で火を起こすのも出来ないってことだな…どうするんだよこれ…」
フトリ=ニッケーリの0円サバイバル生活が始まったのだった。
3話最後までお読みいただきありがとうございます。
最高に良い正確してますよねこの女神様。全ては自分の楽しみのためにってところが好きです。
何をするでもないのにお腹って減っちゃいますよね。
さて、この食糧問題を彼はどうやって解決するのか楽しみですねー(棒読み)