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2話 女神

1話の少し前の話

フトリ=ニッケーリがここに居る理由とは…

第2話です!

時は遡り数時間前。

「空?なんで?」

ふと目を覚ますと目の前に広がっているのは青い空と白い雲…

何が起きているかを理解することが出来ないままぼーっと空を眺め続ける。

このまま現実逃避を続けていてもいいのだがそろそろ状況を整理しよう。

俺が記憶しているのは…ああ、そうだ田舎の空気が吸ってみたいからと春休みを利用して旅行に行ってたんだったな。

起き上がろうとすると体が異様に重い。

周りを見回してみるとどうやらここは森の中にある水場のようだった。右を見ると池かなにかがあり周りを木々に囲まれているが、こんな場所に来ていた記憶はない。

こんな場所で寝ていたので体が重たくなるのも仕方がないのかもしれないな。

状況を確認するためにも体を起こさなくてはいけないのだが体が持ち上がらない。

そういえば、ここには俺しか居ないのか?

一緒に旅行に来ていたはずの奈津子はどこに行った?

まさかあいつ俺だけを置いてどこか行ったなんてことは無いよな?

「おい、奈津子どこ行った?」

さっきもそうだったが、声がおかしい。

聞いたこともない声を自分の喉から発している。

異様に重い体と聞き覚えの無い声…

何が起きているのかを確かめるために水面を眺めるとそこには見知らぬ男の顔があった。

至るところにニキビが出来ていて不摂生な生活をしているのがうかがえるものだった。

「だ、誰だよこれ…でも喋ってるのは俺だよな…」

何より信じられないのは下をむいているのに顎の位置がよくわからないほど太っている。

体が重たかったのはあれか物理的な原因があるのか…

「いや、待て!何なんだよこれ!」

地面に手をついて反動を使って立ち上がると見たことも無い光景が広がる。

お腹周りにでっぷりとついた贅肉のせいで足元が見えない。

なんだってこんなことになっているんだ?

あまりの情報量に頭が全くついてきていないのかぼーっとしてしまう。

ぼーっと池を眺めていると風も無いのに水面が波打ち始める。

「な、なんだ?何が起きているんだ?」

魚がはねたわけでも無いのに池の中心から波紋が広がりはじめる。

波紋は次第に大きくなり始め、池の中心で何かが光っているのを確認した。

急に発せられた強い光に目がくらみ、目を閉じてしまった。

恐る恐る目を開けると池の上に人影…人影!?

信じがたい光景だが目の前に現れたのは一人の女性だった。

人のものとは思えぬほど白い肌に絹のようななめらかな光沢を放つ服を着て半透明の羽衣のようなものを身にまとっているところを見るとコスプレかなにかなのだろう。

だいたい水の上に立っているなんて何かトリックがあるに決まっているのだ。

俺が観察を続けている間もその女性は一歩また一歩とこちらに近づいてくる。

「あなたが…」

声をかけられるとは思ってもいなかったのだが、どうやら俺に向けて声をかけてきているようだった。

「あなたが今困っていることはなんですか?」

そんなもの決まっている。

「全てだ!ここはどこだ!この体は何なんだ!お前は誰なんだ!」

先程までは無表情で話しかけてきていただけだった女性の顔が明らかに引きつり始める。

「はぁ…めんどくさいですね。はいどーぞ」

女性はパチンと指を鳴らす仕草をする。

その音が聞こえた瞬間に頭に一気に情報が溢れてきた。

この体の主の名前はフトリ=ニッケーリ。

ニッケーリ家の次男として生まれ、いつも兄の背中を追い続けてきた。

兄のホソリも決して恵まれた容姿ではなかったが、何をしても優秀であった。

そんな兄に追いつこうと努力をしてきたが何一つ勝つことが出来ないとわかったその時にコイツは諦めてしまったらしい。

ふてくされて部屋に引きこもり続けたこいつはついに父親の怒りに触れ追い出された。

コイツなりに必死に抵抗をしていたようだが…

「デブでブサイクに人権なんてあるわけ無いだろ!」

この父の暴言により完全に戦意を喪失して追い出されることとなった。

普段部屋から出ることもなく、外を歩くなど何年もしていなかったフトリはここまで歩いてきたが疲れ果てて眠ってしまったと…

情報が多くそれは頭痛となって返ってきた。

「ぐぁっ!な、何なんだこの記憶は!」

「あなたが望んだんじゃないですかフトリ=ニッケーリさん?それとも小川昌人さんと呼んだほうがいいかしら?」

コイツ…なんで俺の名前を!?

「あなたのことなら知ってますよ?小川昌人さん?あなたが失ったのは…優秀だった頃の地位ですか?それとも女性に言い寄られるほどの容姿ですか?」

なんなんだこいつは…?

「あらあら〜?ああ、まずは私が誰かわからないと信用できないってことですか〜?本当にめんどくさい人ですねー。私はあなたたちが女神と呼ぶ存在。そして、あなたをここに連れてきたのも私よ」

ニタァ〜っと下品な笑顔を浮かべながらこちらを見ている自称女神。

「なんだってこんなところに…」

「小川昌人20歳大学生。有名私立大学付属中学校に入学しそのまま進学。成績優秀で運動神経も抜群だったためいろんな部活動からの勧誘やヘルプが絶えなかったと。容姿端麗で中学の頃から先輩後輩を含めて告白されること多数…と。なんですかこれ?転生しちゃってるんですか?人生勝ち組過ぎません?親ガチャも無事にSSR勝ち取りましたってことですか?」

なんで俺はこれまでの人生をこの女神にとやかく言われなくてはいけないのだろうか。

「そんなあなたが思いつきで出かけた旅行で迷ってたまたま見つけた民家に助けを求めようとしたことは覚えていますか?」

そうだ…田舎に行きたかっただけだから別に目的地を決めているわけではなかったから運転している途中で迷ってしまったんだったな。

俺がコクリとうなずくのを確認して自称女神は話を続ける。

「あなたはその時落とし穴のようなモノに落ちた。これは覚えていますか?」

そういえばそんな気もするな。あまり良く覚えていない…

「それでたかが落とし穴に落ちただけで、なんで俺がここに居ることになるんだよ」

再びニタァ〜と邪悪な笑顔を浮かべる自称女神。

「あなたが落ちたのは…肥溜めです。あなたは糞尿にまみれて苦しみながら死んでいったんです〜。あー想像しただけでも笑い死んでしまうくらい面白いんですよね〜」

「はぁ!?」

なんだよ…それ…

「それで?あなたが失ったのはなんですか?優秀だった頃の地位ですか?それとも女性に言い寄られるほどの容姿ですか?」

そんなもの決まっているじゃないか!

「その両方だ!俺を元いた世界に戻せ!!」

俺の叫びを聞いて女神の歪んだ笑顔は更に邪悪に歪んでいく。

「うふふ。もしかしてわかってて言ってます?わざとですよね?もし、本気だとしたら頭湧いてません?あ〜ウケる。帰れるわけ無いでしょ〜?」

こ、コイツ…狂ってやがる…

「だいたいこういう展開の時って元の世界に帰れないっていうのがお約束じゃないですか〜。そ・れ・に〜あなたは元の世界では死んだって言ったじゃないですか〜。話聞いてなかったんですか〜?馬鹿なんですか〜?そんな強欲なあなたにはその素敵に太った体をプレゼントしま〜す!」

もらっても困るものとはこれのことだな。

「ねえねえ!今どんな気持ち?最悪?死にたい?その絶望に歪んだ顔が見たかったのよ〜。もともとブッサイクなその顔が更にブッサイクになるのなんてこれ以上面白いこと無いじゃない!!」

「お前…醜いな」

俺の言葉に女神の表情は一変する。

これまでは醜く口角が上がっているだけの歪んだ笑顔だったが、これは…女神とはもう言えないような邪悪な表情をしている。

「はぁ!?私女神なんですけど?美しさの化身みたいなところある私に向けてそんなこと言うなんてありえな〜い!イラッと来ちゃったんでもう少しプレゼントをあげますね〜?ちなみに拒否権はありませ〜ん」

女神が手を前に出して俺に向ける。

手から光が溢れ始める…

うわっ眩しい…

最後までお読みいただきありがとうございます。

この女神のセリフ書いてて最高に楽しいんですよね。僕はいい人なのでこんなこと言わないですけどね!

さて、次回は女神からのさらなるプレゼントのお話です。

楽しみですねー(棒読み)

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