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付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話。  作者: 頼瑠 ユウ
二巻目

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第十八話:勇者と姫と涙の魔王


 ――長い旅の末、遂に勇者と姫は魔王の城。その玉座の間の前に辿り着きました。


 此処まで長い長い旅でした。


 二人は今まで訪れた村々で多くの人々と出会い、助けました。


 怪物を倒し、盗賊から大切な物を取り戻し、食べ物を調達し、子供達を仲直りさせたのです。


 彼等は皆、泣いていました。その涙は魔王の呪いのせいでした。


 そして、姫も呪いに苦しんでいたのです。


 勇者は世界と、なにより姫を助ける為に頑張りました。


 その戦いもこの先に居る魔王を倒せば、お終いです。


「姫、覚悟は良いか?」


「はい。私も頑張ります勇者様」


 二人は頷き合って大扉を開きました。


 広い部屋の奥にある玉座に魔王は座っています。


「良くぞ此処まで来たな勇者と姫よ」


 低く冷たい声。


 魔王はゆっくりと立ち上がります。


「魔王! 今直ぐに、呪いを解け!」


 勇者が勇気の聖剣を抜き叫びました。


「我はこの世界を支配する。貴様らの涙が我の力となるのだ!」


「そんな事、させて堪るか!」


「ならば我を止めて見せよ――その聖剣でな!」


 魔王は涙の力が込められた魔法を放ちました。


 それを勇者は聖剣で斬り払い、駆け出します。


「勇者様、私も戦います!」


 姫が優しさの力が込められた魔法を放ち、魔王に当たりました。


 魔王の纏う涙の力がほんの少しだけ弱まり、魔王は苦しみます。


 ですが、魔王は吠えて再び魔法を使いました。


「させない!」


 勇者は姫を守る為に聖剣を振るいます。


 そして魔王は世界を支配する為に魔法を放ちます。


「――はぁっ!」


「ぬおお――!」


 勇者と魔王の攻撃が何度もぶつかりました。


 互いの力は互角です。


 ――ですが、勇者は一人ではありません。


「勇者様!」


 姫の魔法が勇者に力を与えました。


 姫の優しい力を得てより強くなった勇者の勇気の力が魔王の涙の力を凌駕したのです。


 勇気纏う聖なる剣の一閃が魔王に膝をつかせました。


 ――勇者と姫の勝利です。


「ぐっ……見事だ、勇者よ――」


 魔王はもう立ち上がる事が出来ません。


 涙の力が弱くなっていきました。


「――我を消す事が出来るのは、その勇気の聖剣のみ。我をお前の勇気で切り裂くが良い。さすれば、世界から涙は消える――涙を流す者は居なくなるだろう……」


 勇者は魔王に聖剣を振りかざしました。


 魔王を完全に消してしまえば、世界から涙が消え、どんなに悲しくてももう誰も涙を流す事はありません。


 ――どんな時にも涙を流す事が出来なくなるのです。


「……どういう事だ?」


 勇者は聖剣を下ろしました。


 代わりに魔王に手を差し伸べたのです。


「――魔王。貴方は涙を世界に広げる存在です。ですが、貴方は悪では無い。――涙は、消して良いものでは無いんです」


 答えたのは姫でした。


「俺達は色々な涙を見た。襲われて怖い思い、大切な物を奪われて悔しい思い、お腹が空いて辛い思い、友達と喧嘩して寂しい思い――泣く理由はそれぞれだった。けど、涙は悲しい時以外にも流すものだった」


「安心した時、嬉しい時、お腹いっぱいになった時、楽しい時――そういう時にも涙は流すんです。そして、泣いた分だけ人は強くなれる。――私もそうだから」


「もしもお前が……涙が消えてしまったら、どんなに辛くとも、嬉しくとも泣けなくなる。そんな世界はきっと悲しいと思う」


「――――」


 二人の言葉を聞いて、魔王は驚きました。


「我は消えなくとも良いと言うのか……?」


「そうだ。お前もこの世界に必要な存在だ」


「もう貴方の力は弱まりました。少し位辛くても、同じ位楽しい事があれば私達は涙を我慢できます」


「また我の力が溢れたらどうする?」


「その時は、俺達がまた此処に来るよ。お前の涙の力が大きくなるのは寂しいからだ。だったら俺達と友達になればもう寂しくないだろ?」


 勇者は笑い、姫は優しく微笑みました。


「……そうか――」


 魔王は力無く呟きました。


「我はもう……一人で泣かずとも良いのだな……」


 ポロポロと涙を流し、勇者の手を取りました。


 そうして、勇者と姫は魔王と友達になりました。


 世界に溢れた涙の力は弱まり、人々は嬉しくて涙を流しました。


 姫の涙も止まり、勇者と末永く幸せに暮らしました。



 ですが、やはり時々無性に泣きたくなる時がありました。


 そんな時は、勇者は姫を優しく抱きしめて一緒に泣いてくれました。


 そして二人は友達が寂しくない様にお菓子を持って遊びに行くのでした。


お読み頂き、ありがとうございます。


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