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付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話。  作者: 頼瑠 ユウ
二巻目

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第十三話:将来の夢


「――こう見ると結構、特殊な職業って多いわよね」


「な。しかもどれも年収がエグい」

 

 ――二〇時頃。


 いつもの様に二人は一ノ瀬綾乃の自室でのんびりと過ごしていた。


 この日は、『子供がなりたい憧れのあの職業』と銘打った特番があった。


 宿題を終え、アクション狩りゲームを携帯状態で素材を求めモンスターを乱獲していたが、何となく片手間で見ていると不思議と気になり始め、ついにベットを背もたれにした悠斗を綾乃が背もたれにする形で見入っていた。

 

 俳優を始め、野球やサッカーなどのプロ選手。


 独特な部類では珍しい魚や野菜を捕り、栽培する漁師や農家。


 金庫などの鍵開士。空港の検疫官。


 歌手、漫画家、アニメーター、声優等々。


 最近では、自主動画制作で収益を得る事を職業とする流れもある。


 その特番ではそれぞれの職業に憧れを持つ小学生達の見学や体験を通じて紹介していた。


「仕事、っていったら会社員のイメージが強いけど、自営業ってのも普通にありだよな」


「自分で好きな様に働けるからやり甲斐もあるでしょうね。まぁ、その分リスクもあるんだろうけど」


「安定した給料か、それとも夢を取るか……か」


 CMに入り、悠斗は綾乃を抱き寄せる様に腰に腕を回した。


 それに身を任せた彼女は、小さく声を漏らして彼の手に自分の手を重ねる。


「――まぁ、どんな仕事でも永遠に続く訳じゃないけどね。近所のラーメン屋だってあんなに繁盛してたのに、急に人気無くなって潰れちゃったし」


「あそこな。いつか行こうと思ってたけど結局、行かないままだったよ」


 答えて悠斗は綾乃の肩に額を乗せる。


 少しの重みと温もりを感じて、彼女はまた「ぁぅ」と小さく吐息が漏れた。


 口元が緩みそうなのを何とか堪えつつ、


「ね、ねぇ、さっきから……ぁ、甘えてるの?」


「ん? 何が――?」


「何がって……いや、別に全然、良いんだけど……何か今日、ぅわぁ……すごっ……ィィ、ゕも……」


 プルプルと震え出す綾乃と、彼女の髪や肌の香りにようやく悠斗は自分のしている事に気付く。


 後ろから腰と肩に腕を伸ばし、彼女の首元に顔を埋めて抱きしめていた。


「あ、ごめん。ガチで無意識だった」


「ちょ、何でやめるの! まだ私、満足してない……!」


 手を離す悠斗に、綾乃は寧ろ不満気に眉を吊り上げる。


 ……数秒の間の後、『ヘイ、カモーン!』と悠斗は両手を広げた。


「そのドヤ顔は何よ。なんか腹立つぅ……!」


 文句を言いつつ、綾乃は前から抱き着いた。


 互いの温もり、匂いに――不思議な気持ちになってくる。


 いい加減こうする事も馴れて来たが……それでも、この胸の高鳴りはまだまだ無くなる事はないと思う。


 ――そして、この安心感も。


 彼と自分の首にかけられた紐に通された五〇〇円の結婚指輪が幸福感を割り増しにさせていた。


 ギュッと悠斗に抱きしめられ、綾乃は存分に甘える。


 猫の様に頬をすり寄せていると、CMが空けて番組が再開し絵が好きという少女が漫画家のアシスタントの体験をしていた。


「ねぇ、ユートはやってみたい仕事とかってある?」


「そーだな……」


 トーンがどうのベタ塗りがどうのと、その手に興味を持つ者なら目を輝かせるだろうシーンを流し見つつ、


「――特に無い、かな……。強いて言えば、福利厚生費の整った給料の良い会社に入りたい。ボーナスもちゃんと出て、週休二日。有給も使えて、育休も取れるアットホームで笑顔の絶えない職場が良い」


「そんな会社あったら私も入りたいわ。あと、噂じゃ『アットホームな会社』って文句はブラック求人の代表だって言うわよ」


「真っ黒な会社は嫌だなー。心と身体がボロ雑巾になるのは嫌だなぁー……」


 遠い目の彼に彼女はクスクスと、


「純粋に憧れは無いの? 男の子なら野球選手とかじゃない?」


「男が全員、スポーツマンシップがある訳じゃねーですよ。俺はインドア派なのさ」


 肩を竦ませる悠斗はそれでも少し考えて、


「でもまぁ……そういえば、子供の頃はパイロットに成りたかったかな」


「旅客機とかの? なんか男の子っぽい」


「おう。昔見たロボットアニメで変形したのがカッコ良かった」


「そこは、『世界中を回ってみたい』と言って欲しかったなー」


「操縦席側が開いて腕と頭出て来て、尾翼が脚になるの」


「そんで車ロボットと合体するんでしょ。そのアニメ覚えてる、玩具も持ってた」


 悠斗がその懐かしの主題歌を口ずさむと綾乃も合わせる。


 だが、肝心なサビの部分で二人の記憶が曖昧で、何となくのリズムで誤魔化すが――誤魔化し切れずにグダグダになった。


「まぁ、良い給料なら仕事に拘らないよ。兎に角、高校を卒業したらそのまま就職かな」


「今から決めるの早くない? 他にしたい事とかないの?」


「そりゃ、妻が居る身ですので。遊んでばっかりな夫も嫌だろ?」


 悠斗は、綾乃の頭を撫でながら冗談交じりに小さく笑った。


「いつかは家族が増えるんだ。その分、お金も掛かる。……綾乃にも子供にも苦労掛けたくないからさ」


「そりゃ、お金は必要だけど別に共働きでも良いのよ。夫婦なんだから苦労も幸せも一緒に感じるものでしょ?」


「……そうだな。一緒に頑張ってくれるか?」


「当たり前よ」


 綾乃は頬に添えられる悠斗の手を受け入れた。


 少しだけじゃれ合って、


「綾乃は卒業したらどうしたい?」


「アンタが就職するなら、私も余裕が出るまでテキトーに働こうかなー。おばさんみたいにパートとかね」


「余裕が出来たら辞めるのか?」


「そうね。ちゃんと家庭に入りたいかな。だって――」


 彼の問いに、綾乃はどこか悪戯めいた笑みを浮かべた。


「お仕事で疲れて帰って来た旦那(ユート)に『ゴハンにする? お風呂にする? それとも――』って、やってあげるのに憧れるの」


 聞いた事のある新妻の三択に悠斗は目を丸くして、

 

「――ゴハン食べて、お風呂入って、綾乃とのんびりまったりイチャイチャする!」


「わぁ、この旦那、顔真っ赤にして喜んでるぅ」


 そういう綾乃の頬も真っ赤になっていた。


お読み頂き、ありがとうございます。


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