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付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話。  作者: 頼瑠 ユウ
二巻目

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第八話:ワンコインだけど、確かな愛の証


「♪~」


 馴染みのある某ディスカウントストアで特にあても無く商品を見ている綾乃は、どこか勝ち誇った様だった。


 今頃、ゲームセンターで妙に絡んできた恋人達は妙な雰囲気になっていなければ良いが……。


 悠斗は以前、彼女から『女子は常にマウントの取り合いだ』と聞いたのを思い出す。


「……マウンテングアヤノ」


 この状況を一言で表すのならそうなるのだろう、と特に意味も無く呟いた。


「んー? 何か言った?」


「別になにも? 綾乃は綺麗だなーって」


「もう、ありがとー。ユートもカッコイイわよー」


 うふふーと、彼女に微笑まれ、彼はあははーと返した。


 と、家電コーナー、健康グッズコーナー、文具コーナーを通り過ぎ玩具コーナーに辿り着いた。


 小学生卒業以降、めっきり訪れなくなったその一角は、昔の記憶とは大分違っていた。


 だが、少しずつ色褪せていた思い出が、鮮明に蘇ってくる。


「……そういえば、子供の頃は此処で良く玩具買って貰ってたわね」


「アニメのロボットとかな。流石に、もうあのシリーズは売ってないけど、今思うと結構な出費だったろうな」


「作品ごとに集めてたからねー。私も一緒になって遊んでたもの。だからか着せ替え人形とかには、興味無かったのよね」


「そうだったな。どっちかってーと、男の子寄りの遊びばっかだったな」


「少しでもアンタに構って欲しかったのよ。あの時からね」


 気恥ずかしそうに言う綾乃に悠斗はニマニマと、


「甘えん坊さんだったもんな」


「今も変わらずねー。もっと構えー」


「おー。しつこい位に構ってやるから覚悟しとけー」


 言って、悠斗は綾乃の手を取った。


 指を絡ませキュッと握ると、それ以上に握り返される。


「ねぇ。こういう事、自然にされるの弱いんだけど……」


「嬉しい癖に」


「――くっ、抗えない力が……逆らえない!」


 綾乃は本当にそんな不思議パワーが働いているかの様にピタリと身体を寄せた。


「俺に対してクソ雑魚過ぎないか?」


「何を……っ。一昨日は散々私の胸に甘えてた癖に。どさくさに紛れて、遠慮気味にお尻触った癖に。『またしてあげる』って言ったら、『うん』って喜んでた癖に。男の子としてコーフンしてた癖に。だけど、めちゃくちゃ安心してた癖に――」


「ごめんごめんごめん。ホント、ごめん。許して、勘弁して。後、お尻に関してはホントに事故だったからホントにごめん!」


「キャミソールの中に手を入れようかギリギリで我慢してた癖に」


「あ、バレてる……」


 表情が引き攣る悠斗を綾乃はお見通しだ、とムスッと睨む。


「――お、怒っていらっしゃる?」


 彼女はプイっと、そっぽ向きつつ、


「今日もしてあげよーかなー」


「…………なん――だ、とぅ?」


「あ、凄い喜んでる。――可愛い」


「……っ。うっせぇーわ」


「もっと、その顔見せて? ホントに可愛いから」


 顔を背ける悠斗の顔を、綾乃は何かにそそられた表情で覗き込む。


 男としてこの場から走って逃げ出したい衝動に駆られるが、同時に――何故か、彼女にされるがままにされたい様な気もする。


 だが、それを認めてしまうと、彼氏として婚約者として、男の尊厳が失われる気がするのだ。


「や、やめろし……」


「――嬉しい癖に」


 耳元で囁かれ、ビクッと身体が震えた。


「い、良いから! 何も買わないならもう次行こうぜ!」


「やん、強引に連れて行かれるぅ~」


 クスクスと笑う綾乃に歩幅を合わせて悠斗は出口を目指して歩き出す。


 彼は店を出る直前に、はた、と思い足を止めた。


「っと……どーしたの?」


 綾乃が悠斗の視線を追うとアクセサリーコーナーだった。


「少し見て良いか?」


「うん。良いよ」


 高い物は平気で数万を超えるが、安い物ならワンコイン程度で済む。


『ピンからキリまで』を体現する様なコーナーだと、改めて見て回るとそう思う。


「綾乃は、ブランド物って興味無いのか?」


「そーね、無いわ。高い服とかバックとか有ってもタンスの肥やしになるだけだし。正直、何が良いか分かんないもの。そんな余裕があるなら、生活費に回したいわね」


 目についたバックの値札を見て、綾乃は眉を顰めた。


 この手の贅沢品はソレで自身の癒しや活力になる人だけが持てば良いと思うのだ。


 彼女としては、そんな余裕があるなら他に使い方がある。


「俺の奥さんは家庭的な人で良かった」


「夫にも無駄遣いはさせないから、そのつもりでね。――子供の事とか何かとお金がかかるんだから」


「今から節約する習慣をつけないとだ」


 綾乃は満足そうに、


「そーよ。ちゃんとお小遣いの中でね。お父さんもその辺はちゃんとしてるんだから」


「はーい。無駄遣いはしないよ」


 返事をした悠斗は、乱雑に小物のアクセサリー類が入れられたカゴを探る。


 シンプルなネックレスやブレスレット、ピアスなどがある中で、彼が求めていた物が有った。


無駄遣い(・・・・)はな」


「――指輪?」


 シルバーのスリムなリング。“ただのステンレス製の輪”と言われればそれまでの物。


 それで一つ五〇〇円なのは綾乃からしてみれば高い部類だ。


「こんな安物だけど、形としてあった方が良いかなって。本物は、追々ということで」


「うん。……え? 待とう? 一回待とう?」


「良いよ。待つ」


 眉を顰める綾乃が、悠斗の言葉を咀嚼し、彼の言いたい事を理解すると、宙に浮いた感覚がしてくる。


結婚指輪も中にはその(・・・・・・・・・・)位シンプルな物もある(・・・・・・・・・・)のだ。


「――これで良い?」


 顔を真っ赤にさせた綾乃に悠斗は尋ねると、彼女はコクコクと頷いた。


 

 ◇



 買い物を終えた二人は、近くの休憩用のベンチに腰掛けた。


 常に悠斗の腕に抱き着いていた綾乃は、よりピッタリと彼に身を寄せる。


「渡すの、今か後かどっちが良い?」


「ぇ……。い、今……ぁ?」


 優しく言われて、彼女はか細く答えた。


 それに、手にしていた小さな茶袋から指輪を取り出して、


「ロマンティックの欠片も無いけど、勘弁な」


 差し出された彼女の左手の薬指にはめた。


「――手慣れてるんだもんなぁ……」


「まぁ、二回目なので。あの時よりは多少は慣れた」


「コッチは心臓、止まりそうだっての……」


 熱を身体中に感じながら綾乃は、ムスッと彼を涙目で睨む。


「でも、俺だって膝ガクガクだかんな」


 苦笑する彼の脚に触れると、確かに震えていた。


「……今更、二人して緊張しまくってるのね」


「揃って、ピュアなんだよ」


「物は言い様ね」


 クスリと笑って、綾乃も受け取った指輪を悠斗の手にはめた。


「――誓いのキスはどうする?」


「バカ。こんな所で出来る訳ないでしょ。――帰ってからよ」


 揶揄う様に、恥ずかしそうに、だけど嬉しそうに彼に言われて、彼女も同じ気持ちになる。


「それまで、我慢出来るか?」


「同じ事、言ってあげるわよ」


 互いの左手を重ねて、二人で小さく笑い合う。


「次はどこ行く? まだ、パフェ食べるには少し早いだろ」


「そーね……」


 綾乃は少し考えて、


「――やっぱり、時間を潰すにはアソコかな」

お読み頂き、ありがとうございます。


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