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付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話。  作者: 頼瑠 ユウ
一巻目

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第十一話:既に公認だった件について


「どうしよう、緊張する……」


 一ノ瀬綾乃はお隣さんである上条宅の前で、息を飲んだ。


 学校から帰宅して直ぐにシャワーを浴びて、白いブラウスと赤いミニスカートに着替えて、彼からの連絡を今か今かと、ソワソワしながら待っていた。


 流石に、胸のセッティングはしていない。彼の姉は事情は知っているし、おばさんに変な見栄を張る必要は無いし、嘘もつきたくなかった。


 そして、つい先ほどスマホに一言のメッセージが届き、勢い勇んだものの、やはり三年振りとなると、案外、ビビる。


 もっとお洒落した方が良かったか?

 菓子折りの一つでも用意するべきだったか?

 

 だが、折角の晩御飯のお誘いだ。自分が此処で、ウジウジしていると料理が冷めてしまうし、おばさんにも『迷惑だったか?』と気遣わせてしまうかもしれない。


「よし。頑張れ、私。少し前まで、自分の家みたいにお邪魔してたんだから、変に気負わずに『ただいま!』って感じで――!」


 一ノ瀬綾乃は気合を入れ直し、ドアノブに手を掛けようとするとその手は宙を切る。


 代わりに、目の前で愛しの彼が目を丸くさせていた。


 そして、笑顔で、



「――おかえり、綾乃」



 ◇



「お、お久しぶりです。本日はお招き頂き――」


 上条悠斗に出迎えられた一ノ瀬綾乃は、久々なのだからちゃんとしなければ、と緊張していたが、


「あらぁ! 綾乃ちゃん、お久しぶりね! 随分とキレイになっておばさんビックリしちゃったわ!」


 悠斗の母に抱きしめられ、モガモガと妨げられた。


「そんな他人行儀なのは無し無し! お腹空いてない? 兎に角、入って入って~」


「ちょ、母さん! 綾乃が困ってるだろ!?」


 悠斗が止めるのも聞かずに、彼の母にリビングへとそのまま連行される。


 テーブルには、パエリアやシチュー、トンカツ、煮物etc。


 母が作りたいものを、取り合えず材料があるだけ作ってみた、とビュッフェの様に隙間無く並んでいた。


「うわぁ、凄い……」


「にしても、流石に張り切り過ぎだよねぇー?」


 綾乃がその料理の物量に圧倒されていると、自室から降りて来た姉である祐奈ゆうなが呆れた様に肩を竦ませる。


 ウィンクで姉と綾乃は通じ合った様だが、悠斗は小首を傾げた。


「ほらほら、おしゃべりは食べながらしましょ。腕によりをかけたから、お腹いっぱい食べてって!」


 上機嫌に母が促し、姉は「やれやれ」と席に着く。


 悠斗と綾乃は顔を見合わせ、頷いた。


「その前に、伝えておきたい事があるんだ」


 悠斗は彼女の手を取って、


「俺達――付き合う事になったから……!」


 母と姉に告げた。


 何と言われるか分からない。だが、彼女とのこれからは隠れてでは無く、堂々と過ごしたい。


 そして出来れば、綾乃の父にも認めて貰いたいと思っている。


 まずは、自分の家族からだ。


 綾乃と共に、親と姉の反応に緊張するが、


「まぁ、そうよね」


 と、母。


「まぁ、だろうね」


 と、姉。


「……反応薄くね?」


「いや、だって今更でしょ、あんた達」


 悠斗が眉間にしわを寄せると、祐奈は、ハッ! と笑う。


「別のクラスのイケメンに綾乃ちゃんが告られたって知って、あんたも慌てて告ったんでしょ? んで、両想いだったってオチ」


 見透かされてる!? という弟の顔に、


「御門って子でしょ。そいつの兄貴が同じクラスなのよ。昔色々あって挫折して、今はボッチなんだけどさー」


 やだやだ、と肩を竦ませた。


「そもそも昨日の夜? ってか日付が変わった頃まであんたら、部屋で長々喋ってたでしょ。中学ん時には険悪だった癖に、急にお弁当とか言い出したら――誰でも気づくし」

 

 んーと、母は言うか迷いつつ、


「それに、今日のゴミ出しの時に綾乃ちゃんのお父さんに会ったんだけど……」


「え、父にですか?」


「『悠斗君が娘と付き合う気があるのなら、どうか見守っていて欲しい』って頼まれちゃったのよねぇ。あんまり真剣だったから、二つ返事しちゃったわ」


「お父さん何言ってるの!? ありがとう!」


「報告する前から親公認とか草生える」


 ヘラヘラと笑う祐奈に、母は眉を顰めて、


「兎も角、貴方達が真剣なら私達は反対するつもりはありません」


 けどね、と。


「貴方達は、もう子供という訳では無いけど、まだ大人でも無いの。本当にお互いの事を想うのなら学生の内は“学生らしいお付き合い”をする事――良いわね?」


 いつになく真剣な母の目を悠斗は真っ直ぐ見て、


「わかってる」


「約束します」


 綾乃と共に答えた。


「そう。なら良いわ……。頑張りなさい」


「うん」


「ありがとうございます……!」


 肩を寄せ合う二人に口の中が甘くなった気がした祐奈は肉団子をつまみ食い、


「取り合えず、まだセックスは早いって事だよねぇー」


「せっ――!?」


「くっ――!?」


「祐奈ちゃん! 女の子がそういう事言わないの!」


 咄嗟に身を離す二人に意地の悪い笑みを浮かべる姉に母は大きな溜息をついた。


 パン! と手を叩いて、話題を強引に変えようと、


「さっ! 冷めないうちに食べましょ!」

お読み頂き、ありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[一言] 二人の家族があまりにも軽すぎて報告がゼロ秒で終わることになんの違和感も感じないのはヒロインが初回でメッキを剥がしたからなんでしょうね。 いきなり本性を晒したヒロインだからこそ周囲の違和感が…
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