84話 真夜中のスケコマシ
今夜、私は二人の女をオトす。
なのに、その前にロミアちゃんとダンスを踊ったのは失敗だった。
あの可愛くて無邪気で天使なロミアちゃんの面影をチラつかせたまま、こんなヤクザな作戦をしなきゃならなくなった。
まるでハードボイルドみたいな苦い気分。
それでもダンス後のラムスから話を聞きながら、冷静にこの先の予定を立てていく。
「……という感じだ。言われた通り、セリアはこのオレ様の部屋に、サーリアはお前の部屋に呼んでおいたぞ。しかしサーリアは、一緒に酒場に連れて行きたかったのがな」
「それは無理。彼女、ラムスのお兄さんに囲われているもの。連れていったら、お兄さんが取り巻きいっぱい連れて押しかけてくるよ」
「うーむ、そんな事になったら抜け出す意味がなくなるな。残念だがオレ様だけで行くとしよう。ではあとは頼むぞ、サクヤ」
「任された。ノエル、ゲートを出して」
「はい、サクヤ様。ラムスさん、いってらっしゃい」
ノエルは私の泊まっている宿屋へゲートを開き、ラムスは意気揚々と入って行った。
これでラムスは酒場でお楽しみ。そして私はターゲットの二連撃。
ラムスから聞いた話はだいたい予想した通りの流れだし、作戦に大きな変更は必要ないだろう。
では、作戦スタッフを呼ぼうか。
「ユクハちゃん、モミジ。もう出てきても良いよ。話を聞いて状況は分かったかな?」
寝室に待機させてここの話を聞かせていた二人を呼ぶ。
私とノエル、そしてユクハちゃんとモミジ。
この四人が作戦の実行メンバーだ。
「ああ。ラムスさんが王女さんと会う約束したんに、すっぽかして行ってしまったんやろ? サクヤさん、何で止めんかったんや。お城を抜け出す手伝いまでしてからに」
「セリア王女殿下、相当な覚悟をしてここにいらっしゃるはずです。それなのに女の恥をかかせて。いったい王女殿下にどう説明するんです?」
あきれたようなモミジと心配そうなユクハちゃんが、寝室の方から出てくる。
「説明なんかしようないやろ、こないな最低な真似。ウチもここまで最低な話、聞いたことないわ」
「大丈夫、私に秘策あり。セリア王女様に完全納得していただき、恥もかかせない方法がある」
天才軍師のように目をギラリと光らせ言うと、みんな「ええッ!?」とおののいた。
「……何か、ものすごい嫌な予感するんやけど。話してみ?」
「私がラムスのフリをしてセリア王女様の相手をするのさ。ユクハちゃん、幻を見せる精霊とか出して私をラムスにして」
ドーーン
天才軍師の天才奇計発動!
皆は落雷にうたれたようにシビれる!!
「ぐあはぁッ! まさか、さらに最低な話聞かされるとは思わんかったわ!」
「サ、サクヤ様、何という事を! まさかとは思いましたけど、本当に王女様に手を出すなんて大それたことを企んでいたなんて!!」
「そういう訳。みんな協力してほしいんだ」
逆らう者にはエロテク鬼指導あるのみ!
君たちが私に逆らえない体だということを、再教育してくれるわ!
「あんなぁ! いくらサクヤさんの言う事でも、そないなスケコマシの片棒担ぐ真似、女としてよう出来んわ!!」
よしッ最初に鬼指導受けたい者は君だな、モミジ。
見せしめに最上級なアヘ顔にしてあげよう。
「サクヤさん。また……好きな男の人はいる女を盗っちゃうの?」
ピタリッ。
ユクハちゃんの言葉に、ふとホノウの影がよぎり、モミジへ伸ばしかけた魔の手が止まった。
「……うん。悪い?」
「悪いに決まっとるやろ! サクヤさん、悪いクセもいい加減にせんとッ……!」
「いいよ、協力する」
「ユ、ユクハ!?」「ユクハさん!?」
静かに答えるユクハちゃんに、さすがの私も毒気を抜かれた。
「いいの? ユクハちゃん」
「うん。さっき答えたとき、サクヤさんの顔、泣きそうだったもん。何か事情があるんだよね?」
「はぁ? 王女さんを策略でヤルに、どんな事情があるっちゅうんや」
「ゴメン、言えない。でもありがとう、ユクハちゃん」
「いいよ。抱かれていると、何となくわかるよ。サクヤさんって本当はそんな事したい人じゃない。優しいもの」
「優しい? あれがかい?」
うん、それは私も疑問に思った。
ユクハちゃんとのえっちは、だいたい鬼畜攻めだぞ。こんな風に。
『ホラホラホラあっ、こんなブザマな恰好、ホノウが見たら何て言うかなぁ?』
『ううっ、ホノウくんの事は言わないでぇ……』
『私とこんな事するために愛する男を裏切るなんて超最低! このゴミクズ! ゴブリン女あっ!』
『は、はいいいいっ! ゴブリン女ですううっ!!!』
いや私自身はこんな事、趣味じゃないんだけどね。
でもお互いホノウの事が引っかかっているから、どうしてもこんな風になっちゃうんだよ。
「わかった。ユクハがやるんなら、ウチもやるわ」
「わたしもです。サクヤ様、お手伝いします」
「ありがとう。それじゃモミジは私の部屋の前で見張っていて。もし誰か来たら、魔導通信機で連絡してほしいんだ」
この世界にも、一応魔導具の長距離通信機はある。
もっとも距離が離れるほど大型のものになってしまうが、同じ城内に居るなら小さい物でも十分。もちろんモミジの製作したものだ。
「はぁ? 誰かって誰……あっ! ラムスさんが、サーリアさんはそっち行くって言ってたな。彼女とまでやるつもりかい!」
「まあね。セリア王女様が終わったら行くけど、その前に来ちゃったら予定を早めないとね」
「まったく呆れてものも言えんわ。まぁいいわ。手伝うって言ったし、やるわ。ほんじゃな」
そう言ってモミジは出ていった。
「で、ノエルはユクハちゃんとここで待機。こっちが終わったら、私の部屋へゲートを繋げて」
「はぁい。……やっぱりサーリアさんともヤルんですね」
「そしてユクハちゃん、さっきも言った通り……」
「サクヤさんをラムスさんの姿に変える精霊を出すんですね。やります」
ユクハちゃんが召喚の儀を行って呼び出したのは、山羊の脚の子供の姿をした精霊だった。
「幻術の精霊【パックル】です。彼なら望み通りに幻を見せることが出来ますよ」
よし、これですべての準備は整った。
作戦名は『愛する男と結ばれてベッドインしておめでとう。でも残念! じつは私だったと今さら気がついてももう遅い。神スキル【エロテク】で王女様はメロメロのアヘアヘになって天国直行!』だ。
がんばるぞー!




