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68話 ホノウ絶望

 「あっ、姿が見えはじめたよ。みんな準備はいいね」


 ここに来る前に購入した耐寒冷フルプレート防具に身を包んだ私は皆に聞いた。

 私達【栄光の剣王】は開かれた王都城門前にペギラヴァを迎え討つべく陣取っている。

 さらに私達の背後にはハイレベル召喚士となったユクハちゃんの召喚した大きな火トカゲの精霊獣サラマンダーが煌々と炎を揺らめかせながらいる。

 ペギラヴァは城門よりはるかに大きいため、兵の移動をスムーズにするため開きっぱなしだし、衛兵もすでに退避済み。

 なのでこうやって堂々と武装しながら待ち受ける事ができるのだ。 


 「おうっサクヤ。オレ様はいつでも準備万端だフハハハハハ」


 と、真っ先に応えたのは着ぶくれてダンゴになったラムス。

 でもいったい何の準備? 君は戦闘要員と考えていないんだけど。


 「はーいサクヤさま。合図があったら作戦通りにやります。でも気をつけてくださいね。サクヤ様はかなり無茶するんですから」


 ノエルは風を操って吹き荒れる吹雪の威力を抑えている。そのお陰でここは多少強い程度の風しか吹いていない。

 私は「頼んだよ」と言ってキスで応える。


 「ボクはとにかくこの盾でみんなを守ってればいいんだな?」


 アーシェラは購入した大盾を支える。


 「そ。とくに術士の二人が集中できるようにね」


 彼女にもキス。凛々しい彼女が「ふにゃあ」となるのが面白い。


 「出来る限り早く決着をつけてください。この子、灼熱の世界の住人ですから、長くこんな極寒の地にとどめていたら死んでしまいます」


 と、ハイパー召喚士となったユクハちゃん。

 彼女は後ろに離れているのでキスは出来ない。残念。

 そして彼女の隣にはモミジ。


 「サクヤ。そのフルプレート、言われた通り軽くしたけど、その分防御力は下がっとる。気いつけてな」


 彼女の錬金術でフルプレートを軽くしてもらったおかげで、こんな重い物を纏えているのだ。

 私は剣を高く掲げ「「おうっ」と応える。

 だけど視線は、せまり来る巨大な影を見据えたまま。



 ズン……ズン……ズン……ズン……ズン……


 その地響きの元は彼方より近づく巨大な翼ある二足歩行の獣の影。

 翼となっている両腕からは絶えず猛吹雪が巻き起こり、辺り一帯を極寒地獄へと変えている。

 ノエルは懸命に風を操り弱めてはいるものの、やはり抑えきれぬ風が私達に吹きつける。


 「おや、王都防衛隊のみなさんが撤退してきたよ。ねぎらってあげよう」


 ペギラヴァより先に、今までダンジョンの入り口でペギラヴァを抑えていた王都防衛隊の人達が吹雪に耐えながらこの城門に向け撤退してきた。

 皆ボロボロで、その戦闘の激しさ過酷さがよく分かる。

 彼らは王国七賢者のバニングさんが率いており、その隣にはホノウもいた。


 「ハァハァハァ、ここは風が弱いし暖かい? あっ! あれは炎の精霊獣サラマンダー? いったいあんなもの、誰が召喚したんだ?」


 ホノウの姿を見たユクハちゃんは駆け寄った。


 「ホノウくん! よかった、無事だったんだ。よくがんばったね」


 「ユクハ!? それにモミジと【栄光の剣王】の連中。お前ら王都を出なかったのか? ここで何やっている」


 そして背後で炎を出して燃えている大きなトカゲを見た。


 「それにあのサラマンダー、ユクハが召喚したのか? いつの間にこれだけの精霊獣を召喚できるようになったんだ。俺でさえまだ尻尾部分しか召喚出来ないのに」


 「うん……出来るようになっちゃった。それとね、聞いてほしい事があるの」


 ユクハちゃんは私の右横に来て腕を絡めて言った。

 ああ、とうとう彼を絶望させる時がきてしまったか。


 「その……ホノウくん、わたし、サクヤさんの女になりました。ええっと……サクヤさんの女同士ハーレムに入りました」


 「…………はっ?」


 さらにモミジも左横に来て腕を絡める。


 「ちなみにウチも」


 「ユクハにモミジ!? お前ら正気か!? 自分が何言っているのか分かっているのか!? サクヤ、これはいったいどういう事だ!!?」


 ああ。ホノウの叱責だけじゃなく、後ろで唖然と見ている防衛隊のみなさんの目も痛い。まさか死闘をくぐり抜けた先に、こんな大変態がいるとは思わなかったろうな。

 せめて不適に笑って悪役のブルースを奏でよう。


 「悪いホノウ。じつは二人とは秘かに関係していたんだよ。そしたら二人とも女しか愛せないカラダになっちゃった。だから私が面倒みるよ」


 そう言って見せつけるようにユクハちゃんにキス。ついでにモミジにも。


 「そ、そんな……」


 ガックリ膝から崩れ落ちるホノウ。

 ああ。さっきまで命を懸けて彼女の住む王都を守っていた男に、あんまりな彼女のお出迎え。

 まるで家族のため夜遅くまで仕事を頑張ってた男の妻を、密に寝取って自分の女にして「ざまぁ」したような気分。

 絶望で立ち上がることも出来ないホノウの姿を見て、つくづくそう思う。


 ―――「ほほう、サクヤよ。孫をずいぶん可愛がってくれたようだな。その話、儂にもよく聞かせい」


 あ、そう言えばここには、もう一人犠牲者になる人がいたっけ。

 モミジのおじいさんで、錬金の賢者ワードラー・ルルペイア卿。

 そのお方が死闘の後遺症でよろめきながらも、目だけはギラつかせながら防衛隊の中から出てきた。

 

 「ルルペイア卿、無理をしてはお体にさわります」と、背後で心配する者の声がするも、


 「ええい、そんな事を言っとる場合か! こ奴、あまりにふざけた事を抜かしおるわ!」


 と殺気みなぎらせ私にヨロヨロと近寄ってくる。


 「ああっおじいちゃん! こ、これはそのう……ッ!」


 ふうっ、こんな因縁を背負うのはホノウだけじゃなかったな。


 「おじいさん、そういう事になりました。ふつつかな私ですが、モミジとメガデスを私にください!」


 「ふざけるでないわサクヤァァァァ!! やはり貴様は許せぬ敵! 成敗してくれるわああッ!!」


 飛び掛からんばかりに激昂したルルペイア卿。

 それを両脇から取り押さえたのは、同じ賢者のバニングさんとサンダークさん。


 「じいさん、今は体いたわりぃや。あちこち凍傷しとんのやから。じいさんは先に宮殿戻って休んで……」


 「ええい、さわるでないわ! このサクヤを誅すまで儂は動かんぞ!」


 「うーむ、たしかに我らの恩人とはいえ悪ふざけが過ぎるな。バニング、よく言っといてくれ」


 サンダークさんに促され面倒くさそうに頭を振りながらバニングさんは私の前に出た。

 心底あきれたようなまなざしが痛い。


 「あー、で、サクヤさん。アンタこんな所で何してん? まさかじいさんと、このがんばってくれたホノウ君おちょくるために待ってたん? だったら冗談が過ぎると言わざるを得んなぁ。死ぬ思いして災害級のバケモン相手に戦ってきたモンに何してくれてんの?」


 「ああ、それは……」


 「待て待てサクヤよ。それはこのオレ様に言わせろ」


 と、着ぶくれダンゴのラムスがノッシノッシと出てきた。

 そうだね。ここはラムス唯一の活躍の場。奪っちゃいけないね。


 「アンタはオルバーン候の……ええっとボンボン様がこの悪ふざけの首謀者で?」


 「バカめ。サクヤの悪趣味など知ったことか。オレ様達がここにいる理由わけを言ってやるから、よーく聞け!」


 防衛隊の皆さんは何事かとラムスに注目。

 こんな大勢の前でハッタリきかせられる所だけは英雄の器だね。


 「王国最高術士集団と言われた賢者の者達、そしてこれまでペギラヴァを抑えてくれた王都防衛隊の諸君よ。前座ご苦労。あとは我ら【栄光の剣王】にまかせるがいい! あのペギラヴァを見事地に堕としてくれよう!!」


 「はぁ? アンタらガキ共だけであの怪物を倒すっていうの? やめんかい、そんな自殺。ボンボンのスットコドイ様。これだけの若いお姉ちゃん達ぃ巻き込んで……ちッ来よった!」


 ズシンズシンと地響きを立て、伝説の大精霊獣は城門間近へと迫ってきた。

 皆はおののき一斉に城門へとなだれ込む。

 されど私はメガデスを構え不敵に嗤い指示を飛ばす。


 「ノエル、風を解放! アーシェラは盾を構えて!!」


 さぁ大物殺しジャイアント・キリングを始めよう。


 

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― 新着の感想 ―
[一言] 百合NTRは流行る
[一言] ホノウはともかく、そういやワードラー・ルルペイア卿もいたな。 タロット占いのとおりになるのか。 にしても侍らす女5人…事情を知らなきゃ、刺されてもしようがないな。
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