47話 王都を救うNTR
「ユクハちゃん、こんなにエロエロになっちゃってホノウのことはいいのかな?」
「い、言わないでください! 死にかけた記憶のせいで、こんなになっちゃってるんです!」
ああ、人間は死を予感すると子孫を残すために生殖行為、つまりえっちをしたくてたまらなくなるって聞いたことがある。
そのせいかユクハちゃんはやたらエロエロになり、とうとう昼までやり続けてしまった。
しかし女同士じゃ生殖行為にならないはずだけど、愛があれば関係ないよね。
「指も動くようになってきたし、またやろうか」
指をワキワキ動かすと、ユクハちゃんはちょっと怯えたように体を隠す。
「ハァハァ……もうやめてください! 本当にこんなことしている場合じゃないんです。王都のすぐ近くのダンジョンに伝説の大精霊獣が現れたんですよ。このことは、すぐ各所のえらい人に伝えないといけないんです!」
「ああ、うん。それはたしかに大変だね。じゃ、えっちはこのくらいにしようか」
おっと、スマホでユクハちゃんのクリア確認をしとかなきゃ。
まぁ確認するまでもなく、あのエロさなら余裕でクリアだろうけどね。
あれだけ濃厚で愛のあるえっちなんてはじめて。
NTR最高! アハハハハ!
だがしかし、スマホのクエスト欄で彼女の名前を確認すると……
「え、ええええっ!! クリアしてない!? あんなに愛しあったのにどうして!?」
「ど、どうしたんですサクヤさん、そんなに大声をあげて。ハッ! もしかしてペギラヴァのことでなにか悪いことを思い出したんですか!?」
それは関係ない。
けど、それと同じくらい大変なことが起きているのだ!
あれだけエッチしてメロメロにしたはずのユクハちゃんなのに、彼女の名前にクリアマークがついていないって、どゆこと?
あれだけ可愛く『アンアン』言っていたのは、じつは演技だったってこと?
もし、そうなら女性不信になりそうだ! 私も女なのに!!
「サクヤさん! どうしたんです!? いったいなにを思い出したんですか!?」
「ね、ねえユクハちゃん! 私とのえっち、じつはあんまり気持ち良くなかった!? あの可愛いあえぎ声は演技だったとか!?」
「なんの話をしてるんです! わたしがそんなバカなことするわけないじゃないですか! サクヤさんって、すごく上手くて嫌なのに抵抗とかできなくて……いや、その話はもういいです! とにかくギルドへ報告に行きますよ!」
「む? そう……だね。えっちにかまけて、伝えるのが遅れたら大変だ」
私達が服を着てやたら女臭くなった部屋から出たときだ。
そこに待ってたようにホノウがきた。
「ユクハ! 無事だとは聞かされていたが、姿を見て安心したぞ。サクヤ、お前が一晩中看病してくれたそうだな。礼を言うぞ!」
「う、うん。ホノウくん、心配かけてゴメン」
アーシェラとノエルが上手く言ってくれたのか。
しかし、さすがにホノウの姿を見ると罪悪感がわきわき。
「……しかしユクハよ。おまえ、妙に色っぽくなってないか?いや、死にかけたおまえを見たせいで、そう見えるのかもしれないが」
「ええっ! そそそそ、そんなことないよ。わたしはいつも通りだよ!」
さっきまでさんざんえっちしてたせいだね。
ホノウよ、ユクハちゃんの初めてのえっちの相手はおまえではない。
このサクヤだーッ!!
「ホノウくん、コメンね。でも、もう一度あえて本当にうれしい」
「バ、バカもの! 泣くんじゃない。それにあやまる必要もないぞ。弟子が危うくなったのなら心配するのは師匠として当然だ!」
「……うん。でも本当に本当にゴメンね」
ユクハちゃんの顔を見て、はじめてユクハちゃんの名前にクリアマークがつかなかった理由を理解した。
それはホノウの存在だ。
彼女の顔は泣いていても、すごく可愛らしく輝いている。
本当に彼のことが大好きなんだ。
私じゃユクハちゃんをどんなにエロエロにしても、あんな風に輝かせられない。
「『愛とえっちは別なときもある』ってことだね。お似合いだよ君達。サクヤはクールに去るぜ」
早くこのラブラブ空間から逃げないと罪悪感で死にそうだ。
NTR最低。トホホ……
「ユクハ、もう泣くのはやめろ。俺達は召喚術士として、あの最大級の精霊獣ペギラヴァのことを考えねばならんのだぞ。あれを精霊界へ送り返すことが出来るのは高位の召喚術士しかいない」
「それはどういうこと? 召喚術士なら、あのペギラヴァをどうにか出来るってことなの?」
「あれは過去に一度出現したことがあった。その時も甚大な被害が出たそうだが、ドルトラル帝国のザルバドネグザルがアレを精霊界へ送り返すことによって、その危機を終息させることができたそうだ」
「精霊獣の『送り返し』ね。でも、それは自分が招いた精霊獣しかできないはずだけど?」
「高位の召喚術士なら自分の招いたものでなくとも送り返すことができる。しかし、俺達ではまったくレベルが足りん。おやっさんが生きていれば、頼めたんだがな」
「お父さんか……もっと長く生きていろいろ教えてくれたら良かったのにね」
「死んだ師匠を頼ってもしょうがない。とにかく俺達にできることをしよう。まずはお偉いさんに報告だ」
何となく二人が気になってとどまり、話を聞いた。
でも、聞かなきゃ良かったかもしれない。
ペギラヴァをどうにか出来るのは『高レベルの召喚術士』。
それは今はいなくとも、作ることは出来る。
ユクハちゃんを私の女にすれば、彼女の召喚術士レベルを一瞬で上げることが出来るのだ。
でもそれをするには、原作のように私がホノウからユクハちゃんを奪わなきゃならない。
もし王都に住むすべての人間が、あのペギラヴァによって命の危機にさらされたならば。
このあまりに多くの人達を救うために、私はホノウからユクハちゃんを奪うことができるのだろうか?
「ユクハちゃん……ホノウ……」
心の通い合った二人を見ていられず、思わず目をそらした。




