03話 契約剣メガデス
本日3話目です。
それにしても、このペースでは最初の娘に会うまでに、どれくらいかかるやら。
ヤバーイ!
あのモンスター。どっかで見たことがあると思ったら、ラムクエに出てくるモンスターの【虎ゴーン】だああ!
でもアレは、ゲーム序盤にはまだ出てこない、強モンスターのはずだぞ!
あの虎ゴーンの突進は、建物もペチャンコにしてしまうんだから!
奴は……いや、奴らはノソノソ私に近づいてくる!
なんと、背後にはまだ二匹もいたのだ!
「ヒイイイイッな、なにか武器とか……コレかぁ。うーん」
それは、スマホと同じように私のそばにあった大剣。
この剣にも見覚えがある。
たしかラムスの終盤アイテムにして最強剣。
契約剣【メガデス】。
そうだ。たしかコレを手に入れるイベントまでゲームを進めたんだっけか。
しかしこんなゴツイ鉄の塊、ラムクエ沼つかりまくりJKの細腕で持てるはずが……あった。
「なにコレ!? 軽すぎ! 発泡スチロール製なの!?」
いや、発泡スチロールでもいい!
使えない鉄の塊よりはよっぽど役に立つ‼
ブーン ブンブンブン
威嚇だ!
剣を無茶苦茶に振り回してトラちゃんを脅して、逃げてもらおう。
が、目測を誤って先頭の虎ゴーンの顔に当たってしまった。
(ヤバッ! 折れる!!)
……と、一瞬思ったものの、結果は逆だった。
「バクンッ」と粉砕したのは、虎ゴーンの顔の方だったのだ!
「え、えええっ!?」
見た目に反して脆すぎ!
発泡スチロール製はコイツらだったの?
でも、血しぶきとか内臓とか本物に見えるんですけど!?
「フ、フン雑魚め。オレ様の経験値にしてくれるわぁぁぁ!」
もう、これはゲームイベントだと思うしかない!
私はラムスの言っていたキメ台詞を叫んで、剣を振り回して剣をブンブン振り回してトラちゃんに襲い掛かる。
本当に雑魚かと思うくらい、残り二頭を簡単にミンチにしてやった。
「はぁはぁ……やっぱ本物の生き物だったよねぇ。当たり前だけど」
倒した虎ゴーンはゲームみたいに消えたりしないで、そこに屍をさらしていた。
ついでに毛皮とか触ってみたけど、岩のように硬い。
私ごときが簡単に剣をあてられたのも、攻撃に耐えて反撃するのが戦闘スタイルだったからだろう。
「となると、この剣の威力がハンパないのかね?」
私は剣をゴンゴン叩いてみる。硬い。
剣身はたしかにしっかりとしたモノホンの鉱物だ。
なのに持ってみると、発泡スチロールのように軽い。
ビュンビュン振り回しても、慣性力で体がふらついたりしない。
「うーん、これはもう一度メガデスを試し切りするしかないかなぁ。今宵のメガデスは獲物に飢えておるわ」
そこで今度は、ここらで一番高く太い幹をした樹木に狙いをさだめる。
「ええーい!」
シュバッ バキバキッ ズズウウン
「うわああっ。ホントに一刀両断」
樹木はなんの抵抗もなく切れ、大きな音をたててまわりの木々を巻き込みながら倒れた。
「すごい……【契約剣メガデス】。この威力も軽さも、この剣の力ってわけ? さすが終盤アイテムの最強剣!」
いやっほーーい
これって、私、最強じゃね?
この無双パワーがあれば、女の子オトしてハーレム作るのもたやすい。
このラムクエ世界で大英雄になるのはラムスではない。
この私、咲耶だあっハハハハハ……
「ってバカかあ私! まんまと女子高生拉致犯の思惑に乗せられてんじゃねえ!」
アドレナリンが下がると、にわかに冷静に状況の分析ができるようになってきた。
「あーまったく。この服、血が染みついてもうダメだな。かといって着替えはないし。このトラちゃんの毛皮で服を作るとか……ナイナイ。そんな技術ないって」
ともかく、この血の臭いにつられて他の獣が寄ってくるかもしれない。
私は契約剣メガデスを背負いスマホを持ち、その場から離れた。
それでも、もう一度だけ叫ばずにいられない。
「つまり、この剣でモンスター無双するかたわら、女の子をオトしてハーレム作りするって趣旨なのね。ゲームみたいに。はっはっは最高! ……ふっざけんなあ!」




