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エロゲ世界でハーレム無双? ふざけんなあっ!  作者: 空也真朋
第七章 クード・ガジェル山賊団
201/265

90話 ハージマル大森林の異変

 ――「なつかしいな、この森。本当に戻ってきたんだ」


 船酔いのような感覚をがまんしてまわりを見回すと、そこは一面緑のハージマル大森林。

 この世界への転移はゲームのラムクエのシステムをベースにして行っているので、いつもラムクエの最初のステージのこの森に出てしまうのだ。

 ラムスとモミジを探して回りを見る前に、その声が聞こえてきた。


 「うわああっ、オレ様のカメラが、カメラがああッ!」


 「はあぁっ。あんな稼いだ成果何一つ持って帰れんかった。ほんに何のため、あんな仕事きばったんやあっ」


 二人とも悲しみにくれているけど、その姿を見てホッとする。本当に私達は帰ってきたんだな。

 ぐるり辺りを見回すと、近くに私のメガデスやラムスの剣。それぞれの装備や荷物袋がまとめて置いてあった。


 「おっ、オレ様たちの装備と荷物がある。助かる。また装備を買い直すのは骨だからな」


 「これもミスターXはんの仕業やろか。いきなり帰すとかムチャクチャする奴かと思えば、細かいこともするんやな」


 ―――!!?


 突然、森の奥から脅威がやってくる気配を感じた。

 おそらくは捕食型モンスター!


 「ラムス、モミジ、荷物はまだとらないで。武器だけ構えて。襲撃だ」


 「なに!?」


 二人は途端に戦闘態勢。私が見据える方向に向かって防御姿勢をとる。


 「チッ、わざわざ死に来おって。サクヤ、早くロミアの所に行かねばならんし、さっさと片づけるぞ」


 たしかに多種多様なモンスターの生息するハージマル大森林とはいえ、こんな浅瀬に住むモンスターは大したことはない。………そのはずなんだけど。


 「油断……しないで!」


 強すぎる殺気の圧。近づいてくるスピード。感じる相手の体積。

 すべてが高レベルの脅威度をもつモンスターだと感じる。

 そして、ついに森の茂みを抜けてヤツはその姿を現す。


 ガサガサァッ


 「な、なんだ、コレは!?」


 そいつは姿を現したと思ったら、頭上からおそろしいスピードで顎を振り下ろしてきた。


 ガキィィンッ


 その攻撃をカウンターで迎撃。

 ヤツは体液をまき散らしながら悶えた。


 「新種か? こんなヤツ、ハージマルには居なかったぞ!」


 それは巨大なムカデ型のモンスターだった。

 体長は八メートルほど。その巨体でも多足歩行のせいでスピードはおそろしく速く、直立からの振り下ろし顎は鋭く殺傷力に満ちている。

 ムカデってこんなに強かったんだな。


 「まずいわ。ウチらじゃあのスピードに反応できへん。どう動くかも予想できん。サクヤはん、頼んでええか?」


 「だよね。コイツは危険だ。倒しておかないと、リーレットの人達に被害が出るよ」


 ウネウネした動きは蛇型モンスターのよう。されどヤツは多数の足を持っている分、蛇よりはるかに素早い。

 しかも体をくねらせ変幻自在に動いているせいで狙いがつけにくい。


 「すばやい獲物を狩るとき狙うのは……そうだ、動きの起点となる重心だ。動きの多い上部を狙うのは悪手だね」


 体を低く構えジリジリ間合いを詰め、相手の射程内に踏みこむ。


 重心は足元から数センチ上の腹の結節。そのあたりが動きの起点となっている。


 ヤツの重心が下がった瞬間、スキルを発動。


 頭上から再び顎が、私のいた場所に振り下ろされる。


 されど私はすでにそこには居ない。高速襲撃スキル発動!


 「スキル【疾風(しっぷう)襲狼牙(しゅうろうが)】!!」


 ザシュウウウウウッ


 重心を深く切り裂くと、ムカデはカン高い声を出して地面に倒れ伏す。

 それでもまだ生きていたので、首の結節にメガデスを深く入れてトドメを刺した。


 「ふうっ。さすがだなサクヤ。こんなヤバいモンスターを一人で倒すとは」


 「そやな。こんなん、並みの冒険者はおろか兵士小隊でもかなわんで。こうなると村の方が心配やな。コイツと戦えるモンなんておらんだろうし」


 「奥地から這い出てきたのかな? それともドルトラル方面から流れてきたのか。他に仲間が居るかもしれないし、少し探ってみよう」


 気配察知スキルを目いっぱい広げて大森林中を探る。ほどなくして冷や汗が止まらなくなった。


 「ラムス、モミジ、急いで大森林を出よう。ここいらはコイツの縄張りみたいで、近くに他のモンスターはいない。けど大森林のそこら中には、コイツと同格のモンスターが何体も居る」


 「な、なんやて!? じゃあ村はどうなったんや。こんなんが何体も近くにおるやなんて、とても人間が住めるとは思えんで!」


 「ロミアもさすがに領主として何か手はうってあるだろうがな。しかし失敗してる可能性も高い。一刻も早くロミアから話を聞いた方がいいな」


 リーレット領にとって、このハージマル大森林は大きな収入源。獲物や素材や薪を取るために何人もの冒険者が収入の場としている。

 それが手に負えないモンスターだらけの森になったら、どうなるのだろう。


 「急ごう。いくら私でもこんなヤツが何匹も現れて囲まれたら、相手をするのは難しい」


 「チッ、何があったというのだ。オレ様たちがいない間に」


 「待ってな。せっかくのレアやし、高そうな素材は回収しとこ。お金はこれから必要になるかもしれんしな」


 そう言ってモミジは大ムカデの解体をはじめる。

 やれやれ。しかし村や街がどうなっているかもわからないし、お金も必要か。情報料とかも必要になるかもしれないしね。

 せっかく帰ってきたってのに、先行き不安だなぁ。




 

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― 新着の感想 ―
[一言] 新章突入! >ミスターXはんの仕業  こういう細かい事には気を配るんだな。 >私のメガデス  そういえば、スマホはないのかな?
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