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パラサイト・ブラッド   作者: 否定
2/6

1:絶望の始まり

 ――僕の名前は赤坂優。

 元は平凡の高校生だった。

 いつも友達と話して、楽しい日々を送っていた。

 そんな日々は、ある日絶望で塗り潰された。

 

 「に、逃げろぉぉおぉおぉお!!!!!」

 

 ある男性の声が、僕の耳に入り込んできた。

 何だろう。

 すると、今度は爆音が轟(とどろ)いた。

 町全体を揺るがすかの様なその爆音の正体は、僕の学校の窓からはっきりと分かった。

 

 「あれ、何だ……?」

 

 僕は一つのところへと、視線が向かう。

 それは、赤い謎の生物だ。

 クワガタムシの螯(はさみ)を模(も)したかの様な口元に、胴は人間であり、足は虎の様でありそれに謎の粘液に包まれている。尻の方は蜂の様な巨大な針がある。

 当然ながら、見たこともない生物だ。

 すると、僕がいる教室の中で他の生徒と教師達が悲鳴を上げ始めた。

 原因は……、

 

 「キシェェエエェエェェェェエエェエエエ!!!!!!!」

 

 ミミズの様な体躯(たいく)を持つライオンだった。

 ライオンは一人の生徒を蟻(あり)に酷似した足で掴み、口の中へと運んだ。

 そして、黄ばんだ歯で噛み砕いた。

 肉と骨が壊れる音が混ざり、不気味な音色と化した。

 次に、別の生徒の足元から小さなムカデの様な生物が這い出してきた。

 その生徒は悲鳴を上げ、自分の足からムカデを引き剥がそうとした。

 しかし、ムカデは全身から大量の棘(とげ)を出し、生徒の足に深く突き刺さった。

 その途端、生徒は白目を剥き、血泡を吹いて斃れた。

 次はコウモリの様な生物が現れた。だが、顔が違う。顔はヤモリだった。

 コウモリは次々に大量の生徒達を捕食していく。

 肉を食いちぎり、呑み込んでいく。

 そして奇跡的に生き残っていた教師は、後ろから何かに襲われた。

 その『何か』とは、巨大なカマキリだった。

 カマキリの部分は鎌と頭だけであり、他の部位は全てイモリである。

 残るは、僕一人だけ――。

 

 「もう、死んじゃうのか……」

 

 もういいか。この世に未練なんてないし。

 どうせ、生きたくもないし。

 すると、謎の生物たちは次々と銃弾で命を落としていく。

 何が起こったんだ……?

 僕は銃弾の飛んできた方を見る。

 銃弾を放ったのは、自衛隊の隊員達だった。

 

 「君、早くここから逃げるんだ!」

 「そうなんですか……じゃあ、逃げます」

 

 僕は走って教室から去った。

 廊下にも無数の生物達がいたが、全て自衛隊に殲滅(せんめつ)された。

 やがて、外へと辿り着いた。

 だが、そこにはあの赤い謎の生物がいた。

 後ろから自衛隊員達が赤い謎の生物に銃弾を撃つ。

 しかしながら、銃弾は全て跳ね返された。

 すると、赤い謎の生物は目では捉えられない速さで動いた。

 そして僕は後ろを振り返った。

 

 「は……」

 

 自衛隊員達の首が、全て消えていた。

 いや、赤い謎の生物に食べられたのだ。

 赤い謎の生物は、僕を睨んでいる。

 今度こそ本当に死を覚悟し、僕は瞑目(めいもく)した。

 その途端(とたん)、僕の耳には懐かしい声が響いてきた。

 

 「優……てめぇ、死のうとしてんじゃねぇよ!!!!!!!」

 

 この声は……。

 

 「美玖なのか?」

 

 僕は驚きで目を開いた。

 目の前には、一人の少女がいた。

 燃える様に赤い夕陽の茜色(あかねいろ)をした髪を持ち、虎の剛毛を模したかの様な美しく輝く金の瞳、身長はそんなに高くはないが、なぜか右手には地獄の様な色をした黒い鎖鎌が握られていた。

 

 「あったりめぇよ。あたしだ」

 「美玖も死にに来たのか?」

 「ちげぇよ馬鹿野郎! あたしは、今からこいつを狩るんだよ」

 「は……?」

 

 美玖の言う『こいつ』とは、赤い謎の生物のことだ。

 狩る……? 美玖があの生物をか?

 そんな話があるのか?

 そもそもあの生物に人間が太刀打ちできるのか?

 

 すると、美玖はにやりと不敵に笑った。

 そして――、

 

 「いいから、てめぇはそこで見とけや!!!」

 

 美玖は怒鳴り、その途端、鎖鎌に炎が纏(まと)わり付いた。 

 そして美玖は赤い謎の生物に飛び掛かった。

 美玖に対し、赤い謎の生物は針から緑色の液体を飛ばした。

 しかしながら、美玖は鎖鎌を赤い謎の生物に振るったと同時に液体は蒸発した。

 対抗手段を一瞬にして消失された生物は、胴を切り裂かれる。

 生物は奇声を上げて、身をくねらせる。

 胴からは大量の赤い血が飛び出していた。

 

 「よえぇぞ、赤野郎」

 

 赤い謎の生物の目を、美玖は鎖鎌で突き刺した。

 見事に命中し、生物はまたもや奇声と鮮血を撒き散らす。

 

 「さっさと死ねぇ!!!!!!」

 

 美玖は華奢な足で、生物の顔面を蹴った。

 螯を圧(へ)し折り、頭の外殻を砕き、胴の付け根から頭自体が美玖の蹴りによって吹き飛ばされた。

 頭は血を滴らせながら地面を転がり、やがて勢いは止まった。

 

 「な、狩れただろ?」

 

 鎖鎌を消失させ、美玖は僕に言った。

 唖然(あぜん)と美玖の戦いを眺めていた僕は、ぱちぱちと拍手をした。

 

 「凄い……美玖は強いんだなぁ」

 「当たり前だとも。あたしは『特殊隊』の中でも入隊してから今も生き残る事のできている人物だからな」

 「そうなんだ……その『特殊隊』とやらは、こういう生物達と戦ってるのか?」

 「そうだ。あたしもその一人だ」

 

 美玖は平然とそう述べ、そして――、

 

 「ちっ、もうこの町は駄目か」

 「どういうことだ?」

 

 すると、美玖は苛(いら)ただしげに言った。

 

 「救えないってことだ」

 

 その言葉に、僕は目を見開いた。

 すると、美玖は空を見ていた。

 晴天だったはずの空が、今や曇天だ。

 暗くなった空を、ふと、美玖は睨んだ。

 

 「ここは危険だ。奴らが来るぞ」

 「え……?」

 

 美玖は僕の手を取って、走り出した。

 そして跳躍した。

 ある民家の屋根に着地した彼女と、僕。

 僕は美玖の跳躍に驚きながらも、美玖に連れていかれる。

 すると、学校の方から轟音が鳴り響いた。

 僕は振り返ろうと――、

 

 「振り返んじゃねぇ。もう見るな」

 「分かった……」

 

 僕は美玖の言う通りに、後ろは振り返らなかった。

 人気のない住宅街を抜けて、そして高層ビルに向かって、美玖は大きく跳躍した。

 高層ビルの屋上に着地し、道路に向かって飛び降り、見事に着地し、そしてまた走り出す。

 そんな美玖に引っ張られながら、僕は思っていた。

 

 ――ここの町にいた人々は、僕以外皆あの生物たちの餌食になってしまったのだろう、と。

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