朝食るんるん
重厚なオーク材に彫刻が施された扉を重いからって杏さんが開けてくれた。
朝の光が高い天井から柔らかく差し込んでいて、リリアちゃん家の豪華さに圧倒されつつも、どこか落ち着く空間だ。
中央には深みのあるチーク材の大きなテーブル。
背もたれに精巧な彫刻が施された椅子はふかふかのクッション付き。
テーブルの上には、バターの香りが立つふわふわのブリオッシュや宝石のように輝く甘酸っぱいベリーとみずみずしい果実。黄金色に輝くオムレツにはハーブの香りがふんわりとかおるソースつき。濃厚なミルクティーとフレッシュジュース
……異世界だけど、前の世界でたまに言っていたホテルの朝食バイキングを思い出した。
「リリア様、おはようございます!」
杏さんが笑顔で私の隣に立つ。
「今日から皆さんと一緒に朝食ですね!楽しんでください!」と微笑んでくれた。
視線を上げると、家族が揃っていた。
長男は長身で落ち着いた雰囲気。それとは対照的で次男は少年っぽく明るそう。母は柔らかい微笑みと優しい声で、気を遣ってくれてるのがわかる。父は、目が優しい。
……うん、愛されてる。
転生前の私なら、ここにちょっと嫉妬するレベルだ。私1人暮らしだったしね。お母さんも、お父さんもはやくに亡くなっちゃったしね。
「リリア、よく眠れたか?」
長男が穏やかな声で聞く。
「はい、ありがとうございます」
次男ももぞもぞと席につき、「今日は楽しもうね!」と眩しい笑顔弾ける。
母は優しく微笑み、「さあ、今日も皆で朝食よ」と声をかける。
父は背筋を伸ばして座り、私たちを温かく見守る目をしている。
――そういえば……私、12歳で結婚相手がいるらしいんだよね。
さっき、お手伝いさん達が婚約がどうのーって言ってたし。
なんだか信じられないけど、ワクワクもする。
私、はやく結婚したかったし。
転生前の婚活パーティーは散々だったけど、こんなにはやく、巡り会える日が来るなんて……!
頭の片隅で、家族からさりげなく聞こえる会話がチラリ。
「また、あのバカ皇太子がやってくれたらしい」
――ふふ、どこにでもやばいやつっているのね。
リリアはまだ知らない。この会話に出てきた婚約者が、いかにやべぇやつかを。
――こうして、転生リリアの新しい日常は、愛情と期待に包まれながら幕を開けた。
……この幸せな朝食を、まずは楽しもう




