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ある意味で、運命の3女神?

「ねえカイ、そろそろ言おうと思っていた事が有るのだけど……」


「何か気になる事でもあるのか、リア?」


 ある日の朝、朝食を皆で食べているとリアが急に話し始めた。

 心なしか彼女はぷるぷると、身体を震わせている。


「なんだ、その歳にもなって手荒いに1人じゃ怖くて行けないのか?」


「そんな訳無いでしょバカ! 私が言いたいのは何でこの女が、何で平然と居座っているのか?ってことなのよ!?」


 リアの指差す先ではアニスの姉のイレイアが、何食わぬ顔で一緒にご飯を食べていた。


「私を討った褒美をカイに渡したのだから、もう用件は済んでいる筈よ。 なのに、何故平気な顔して居座れる訳?」


「それはもちろん、あなた方を観察する為ですよ」


 イレイアは真顔で返す、悪びれないその態度に逆にリアの方が気圧されてしまう。


「普通に考えて、この世界はおかしいと思いませんか? こんなにも都合良く勇者や魔王が揃う世界、おまけにそのほとんどが知り合いで異界の女神も2人居るなんて……」


 言われてみれば確かにそうだ、カイを中心とした輪が出来上がっている。

 くり返しになるがリアは彼が討った元魔王だが、義妹のウミの幼馴染。

 そしてウミナにいたっては、カイ本人の幼馴染という関係である。


 この場で彼と関係を持たないのは、アニスとシスティナ達の4人。

 アニスはカイの事が好きなので、実質半数以上が彼の関係者だ。


「私も関係者、忘れないで」


 元のスライムの姿でご飯を食べていたスミが、人の姿になって話に加わる。


(そうなるとこの状態を、誰が何の目的で作り出しているのか? って事になるよな?)


 まだ食事の途中なのにカイが考え込み始めたので、リアは手を数回打つと彼を無視して食事を再開した。


「はいはい。 カイがまた考え始めたから、この件は後にして私たちは先にご飯を済ませましょう。 待っていたら、折角の朝食が冷めてしまうわ」


「そうですね、早く食べて今日も狩りに出かけないと」


「今日は、私が1番の大物を捕まえるわよ!」


 狩猟者となったリア達一行のお陰で、最近は周辺の村と町で旅人や商人が襲われる事件が激減していた。

 それに比例するように、奴隷にして欲しいと懇願する者が急増したのは余談である。


 ようやく自分の世界からカイが戻ってくると、リア達は既に狩猟に出かけていた。

 そして残ったイレイアは、ニコニコと笑みを浮かべながら彼の顔を見ている。


「なあ、俺にまだ何か褒美でも有るんじゃないのか?」


「何故、そのように思われましたか?」


「リアが言っている通り、お前がこの世界に居続ける事が異常だからだ。 最初に渡した奴で用件が済んでいるなら、すぐに帰っていておかしくない。 こっちの世界を見る位の事は、お前ならたやすい筈だしな」


 イレイアの表情を見る限り、及第点には届いているみたいだ。

 だが合格点に至らないと、答えを教えるつもりは無いらしい。


「それと1番不思議に思っていた事がある、何故褒美をお前が直接届けに来た? 神ならこの世界にも居る筈だ、何故その神に頼まない?」


(まだ表情は変わらない、何か他にも理由が在る筈……)


 めまぐるしい速さで思考を整理するカイ、そしてようやく本当の答えを導いた。


「まさか、この世界を束ねている神が居ないのか? それでこの世界が崩壊する前にお前が来て、維持し続けていると?」


 すると彼女の顔が満面の笑みに変わった、どうやらこれで合格点に達したようである。


「私が元の世界にいつまでも帰ろうとしない理由、分かって頂けたようですね。 こちらの世界の神は、現在行方不明となっております。 そして居ない隙を狙って、この世界を邪神が支配しようとしていました」


「していましたって事は、今は解決しているんだよな? 一体誰が、その邪神とやらからこの世界を救ったんだ?」


 カイの問いかけに対して、イレイアが言った答え。

 それは、彼を怒らせるのに十分だった。


「それは……秘密です。 てへっ♪」


「それは秘密です、てへっ♪ じゃねえだろ!」


 条件反射的に、お仕置きのげんこつを出すカイ。

 しかしイレイアは、その攻撃を全て簡単に避けてしまう。




 攻撃を全て避けられたカイは、お仕置きを仕方なく諦めた。


「これ以上、無駄な時間を使うのは止めだ。 せめて、これ位は教えてくれ。 その邪神を倒した奴が、俺達の敵になる可能性はあるのか?」


 この問いに関しては、彼女は真面目に回答する。


「それだけは、絶対にありえません」


「……絶対に無いね。 今日の所は、それだけ分かれば良いや。 じゃあ、もう1つだけオマケで質問しても良いか?」


「ええ、どうぞ」


 またイレイアがニコニコしながら、OKを出した。

 カイがどんな質問をするのか、既に予想が付いているらしい。

 その態度がなんだか腹立たしいが、それでもこの質問だけはするしかなかった。


「その行方不明になっている神は、一体どんな奴なんだ?」


 想像通りだったらしく、彼女は顔色一つ変えずに即答する。


「居なくなった神の名はユウナ、私やアニスの妹です」


 衝撃の事実に、カイは一瞬呆然としてしまった。

 今の状況そのものが、この女神3姉妹によって作り出されたことになる。


「それと……これから話す事は、とても重要です。 気を強くもって、聞いてください」


 これ以上驚くような話は無い筈、そのカイの予想は大きく外された。


「あなたは亡くなられた母君を、覚えていますか?」


「ああ、優菜って名ま……」


 言い始めてすぐに固まってしまうカイ、幾らなんでもそれは出来すぎな話ではある。


「出来すぎではありません。 カイ、あなたの母親は私達の妹のユウナです」


「そんな話があってたまるか! それじゃあ、アニスやあんたは俺の叔


 途中まで言いかけたところで、イレイアに殴られた。


「優しくて綺麗なお姉さん、いいですねカイ。 決して○○さんとは言わないように」


「……はい」


 どうやらカイの中には、このお騒がせ3女神の血が流れているようである。

 無関係と思われていたアニスが、実は血縁者という事実にカイは泣きそうになった。


「おまけにもう1つ、良いかもしれないお話があります」


「もう言わないで良い、これ以上俺を混乱させないでくれ!」


 カイの懇願を無視して最後にとんでもない爆弾を、イレイアは投下する。


「ユウナの魂は、こちらの世界で転生を果たしました。 あなたの傍であなたと一晩一緒に寝る為に、頑張っています。 幸い、前世の記憶はまだ戻ってないようですが……」


 スラミンは、なんとカイの亡き母親が転生した姿だそうだ……。

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