表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/45

スラミンの強さに、ようやく気付く面々

「……ふむ、なるほど。 侯爵には卿の口から私が礼を言っていたと、伝えてくれぬか」


「はっ、かしこまりました」


 国境付近まで来ていた不審者に関する報告を大臣から受けた国王は、他の国境へ通じる道の監視を強化させる一方で、不審者を撃退したセントウッド侯爵の功を称えた。


 けれども国王が持つ情報網にすら掛からない不審者を、事前に察知した上に返り討ちにした侯爵家の侍従長とメイドリーダー夫婦には、底知れぬ恐怖を感じている。


「陛下。 このような事を言うのは、無礼かと思いますがお聞きください。 かの侯爵家には、少し力が集中し過ぎております。 何か策を打ちその力を分散させておかないと、後々の災いとなるやもしれませぬ」


「大臣、それは私も懸念している。 だがその力は我々の常識とは違いすぎる故、下手に手出しをしたり策を弄する事こそ、災いを招く悪手だと思うのだ」


 結局彼らに手出し出来る筈も無く、さらには王家所有のプライベートビーチ周辺に甚大な被害が出ているとの報告を聞いて、国王は大臣と追加予算の確保に頭を悩ませた……。




 そんな国王や大臣達の悩みなど知る筈も無い、カイ並びにリア一行。

 泊まっていた場所が灰となってしまったので、仕方なく町の宿屋で泊まろうとした。

 だがこれまでの騒ぎから、彼らが元凶だと知れ渡った結果どこも泊めてくれない。


 総勢8人と+1匹(人?)は、現在野宿2日目である。


「あ~もう! 2日も野宿してたら、服も汗臭くなって着れなくなっちゃうじゃない! カイ、急いで全員が泊まれる場所を見つけてきて」


 宿を一緒に探す気が無いリアに対して、カイは容赦無くゲンコツで返答した。


「こうなった原因が誰なのか、もう1度おさらいした方が良さそうだな?」


「ごめんなさい、私も一緒に探します……」


 反省したらしく一緒に探すと言うリア、しかし心の中ではガッツポーズを決めている。


(ふふふ……これで大手を振って、カイと一緒に歩けるわ。 宿を探すという大義名分もあるし、言い訳もバッチリ! 2人きりの時間を作るためなら、カイのゲンコツ位は我慢出来るわよ)


 リアはカイと2人で歩く為に、わざとお仕置きされる言動をしていたのだ。

 しかし、その涙ぐましい努力は報われずに終わる。

 何故ならスラミン(スミ)が、2人の間に入ってきたからだ。


「カイ様、リアの頭を殴るの良くない。 痛そうだから、私とアニス様で代わる。 3人で探した方が、多分早い」


「そうか? リア、さっきはすまなかったな。 お前の代わりにスミ達が一緒に探すそうだから、そこで頭を何かで冷やしながら待っていてくれ」


「待って! それじゃあ、わざとゲンコツを受けた私の苦労が!?」


(しまった!?)


 失言した事に気付いて、慌てて口を塞ぐリア。

 だが時既に遅く、カイのこめかみには青筋が浮かんでいる。


「そうかそうか、さっきの言葉はわざとだったのか……。 今度は前よりも痛いぞ、歯ぁ食いしばれ!」


 拳を硬く握りしめながら、リアに再びお仕置きをするカイ。

 今度のゲンコツは、多分喰らえば即気絶する威力だろう。

 リアはとっさに目を閉じる、だがいつまで経っても頭にゲンコツが当たる様子が無い。


 片目だけ恐る恐る開けると、カイの拳をスラミンが片手で止めていたのである。




「カイ様、何度も言うけど女の人に拳を出すのは良くない。 私が代わりにゲンコツするから、それで見逃してあげて」


 そう言いながら、スラミンはリアの頭を軽く叩く。

 だが叩いた瞬間に、リアの上半身は地中に埋まっていた!


「リア!」


「リア様!?」


「リアちゃん!」


 アニスは急いで駆け寄ると、リアを地面から引き抜く。

 助け出されたリアは、白目をむいて気絶していた……。


「スラミン、さすがにこれはやり過ぎだぞ」


 呆れながらもカイは、スラミンを諌める。

 流石にリアに対して、ここまでする気は無かったからだ。


 けれどもスラミンは首を傾げながら、不思議そうに答える。


「私、軽く叩いただけだよ? カイ様は、普段この位の強さで頭をゲンコツしてた」


「ぶべっ!?」


 スラミンは証拠を見せる為に、今度はカイの頭を真上から叩いた。

 するとカイの身体が、首まで地面にめり込んでしまう。


「あれっ!? おかしいな?」


「おかしいな、じゃないわよ!? 早く、お義兄ちゃんを助けないと!」


 ウミはカイが着ている服の首の部分を掴むと、上に引っ張るが中々抜けない。


「う~ん、う~ん!」


 それでも何とか肩まで地面から引っ張り上げると、次はウミナにも協力してもらう。


「いっせ~の、で持ち上げるわよ」


「分かったわ」


 両脇に腕を入れて、彼を持ち上げようとするウミとウミナ。

 2人の胸がちょうど腕に当たり、ある意味で幸せな状態だがカイは昏倒している。


 するとスラミンが2人の前に立つと、彼を片手で地面から引き抜いてしまった!


「なんで2人ががりでやって、カイ様を抜く事が出来ないの?」


「いや、片手で抜ける方がおかしいから!?」


 驚愕するウミとウミナ、流石にこの異常な状況の原因が何なのか予想が出来る。


「ねえスラミン……あなた、もしかしてお義兄ちゃんよりも強くなっちゃった?」


 ウミに言われて、ようやくスラミンもとんでもない強さを身に付けた事を自覚した。

 しかしこれが、後日のスラミンの夜這いに繋がってしまう。


 余談ではあるが夜這い当日、スラミンは飼い主のアニスを含め女性陣全員を気絶させた上でカイを拘束するという、用意周到な計画まで立てていたそうである……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ