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勝負の刻(とき)

「夏の定番といえば、そう度胸試し。 折角だから今晩はクジ引きでペアを組んで、誰が1番度胸が有るのか試してみましょう」


 バカンスも1週間になろうかという頃、皆で昼食を食べていると急にウミナが、夕食後に度胸試しをやろうと言い出した。


「それ良いわ、面白そう! ねえ、カイも参加するわよね!?」


 リアが、カイの腕に抱きつきながら聞いてくる。

 腕に感じる彼女の胸の感触に、懸命に気付かないフリをするカイ。

 彼の気を引こうとわざとしているのに、気付かれなかったと勘違いしたリアは拗ねる。


(なによ、私がこうして誘惑してるのに全然気付かないなんて。 こんな事、あなた以外には絶対にしないのよ)


 そのカイも生返事をしながら、誘惑に必死に耐えていた。


(こいつ、俺の気も知らないで胸を腕に押し付けるな! この前の水着が目に焼きついて離れないんだ、ウミの奴に秘蔵のお宝を見られてさえいなければ……)


 リアのスク水姿を、忘れられずにいるカイ。

 これ以上彼女の水着姿を見たくないので、海に出来る限り近づこうとはしなかった。

 カイを巡る争奪戦において、彼女に一歩リードを許す形となっている事に、他の娘達も敏感に感じ取っている。


(お義兄ちゃんったら、リアちゃんにデレデレしちゃって。 許さないんだから!)


(カイ様は、リア様のような胸の起伏に乏しい方が好みなのでしょうか?)


(カイ君を、あの女に取られる訳にはいかない!)


 今回の度胸試しはそんなウミナが、半ば強引に2人きりになれるチャンスを作るために思いついた企画だが、他の2人もそれに便乗する形で賛成に回っていた。


 それから6時間後、カイ争奪戦第2ラウンドのゴングが鳴り響いたのである。




「それじゃあ、みんな準備は良い? ここに番号を書いた、8本のクジを用意したわ。 1人ずつ順番に引いていって、出た番号のペアで回るからそのつもりで」


『はぁ~い』


 夕食を食べ終えて皆で向かった先は、宿泊してる場所からほど近い墓地だった。

 ちなみに何故クジが8本用意されているかというと、システィナ・ベルモンド・デモンの3人組も参加しているからである。


「時間も勿体無いから、迅速に進めるわよ。 そこで突っ立っているカイ君から、順番に引いて頂戴」


「分かったよ。 ところでツナミ、なんで今日はそうツンケンしているんだ?」


「誰かさんの所為よ、それくらい気付きなさいバカ!」


 頬を膨らませながら、そっぽを向くウミナ。

 しかし内心では昔のようにツナミと呼んでもらえたので、大喜びしている。


「やったやった! お義兄ちゃん、今日はよろしくお願いね♪」


「あ、ああ。 こちらこそ、よろしく頼む」


 カイとのペアを引き当てたのは、義妹のウミだった。

 しかも番号は最終組の4番で他の人達は先にスタート地点に戻るため、2人きりで話す時間も十分作れる。

 今回のくじの抽選結果は、以下のとおりである。


 1組目 リア&ウミナペア


 2組目 ベルモンド&デモンペア


 3組目 アニス&システィナペア


 最終組 カイ&ウミペア


 知らない者同士にならなかったので大した混乱は起きなかったが、カイとのペアを切望していた3人は、恨めしそうな目でウミを見ていた。

 それに対してウミはあっかんべえをして、3人を挑発する。


 見るに見かねたカイは、義妹の頭を軽く叩いた。


「痛っ!」


「調子に乗りすぎだ、あとでケンカになっても知らないぞ」


「そうなっても、別に構わないもん。 だってお義兄ちゃんと2人で歩くのって、本当に久しぶりなんだよ! それともお義兄ちゃんは可愛い義妹じゃなくて、別の誰かとペアになりたかったの?」


 急にリアとの仲を疑われるような事を言われたカイは、やや言い訳じみた答えを返す。


「そ、そうじゃないって! 義妹とまた歩けるとは思っていなかったし、俺も嬉しいよ。 けど昔と違ってお前も成長して美人になっているし、俺と一緒に居て変な噂が立つと困ると思って心配しているんだよ」


『むしろ噂になるくらい、一緒に居たいんだけどな私は……』


「何か言ったかウミ?」


「ううん、何も言ってないわよ。 お義兄ちゃん」


 ウミの口から、小さく本音が漏れていた……。




 突発企画の度胸試しのスタートの時間となった。

 1組ずつ5分間隔で出発して、墓地の奥にあるメダルを取ってくるのが今回のルール。


 幽霊などに変装する者は居ないが異世界らしくアンデッドが徘徊しているので、それを退治しながら進む事となった。

 最初の組の出発の合図は、リアの頭に振り下ろされたカイのゲンコツ。


「折角の夜だし、爆散して人間花火にでもなってみるか?」


 八つ当たりでウミナにいらん事を言うリアに下された、容赦の無いお仕置きである。

 泣きながらリアに引きずられていくウミナを見送りながら、後の組も順番に出発した。

 カイ達の出発時間も近づいた頃、カイの左手をウミが掴んだ。


「お、お義兄ちゃん。 少しの間、こうしていても良い?」


「何だ急に? お前も、まだまだ子供か?」


「お願い。 このままだと勇気が出せそうに無いから……」


「?」


 そして最後の組が出発時間を迎え、2人はゆっくりと歩き出す。

 ウミの一世一代の大勝負が始まった……。

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