夜に向かって
歯車が回る音と共に、私は進む。
おんぼろ自転車とともに進む先は遥か東。太陽の昇る方。
されどそこに、青空はない。今ではもう、夜のとばりに月と星が浮かぶばかり。
足を動かしながら空を見上げれば、上には橙、下には藍色。
夕方と夜の、その境界。私はこの時間が好きだった。
寒気をかきわけて進めば進むほど、加速度的に辺りは暗くなってゆく。
明るい場所にいる自分から暗い場所にいる自分へと。
己の中のスイッチが切り替わっていく、そんな感じ。
目的地なんて決まっていない、少しばかりのひとり旅。
ただひたすら、ひたすら、光と闇のグラデーションを他眺めながら進んでいく。
そうして、辺り一面真っ暗になったら引き返すのだ。
帰り道は藍一色。空の向こうに、微かなオレンジが見えるくらい。
そのことに妙な満足感を覚えながら、私は今度こそ本当の帰路についた。




