暴力というものは最も野蛮だが人間が最も多用した力である第八話
「とりあえず他の奴らも起こせ」
「は?」
「この作戦は二人では実行できない。必要事項だ」
若干迫真の演技をして男に行動を強要させる。
まぁ機嫌損ねたら脱出し損ねる可能性もあるから当然といえば当然であろう。
~だいたい10分後~
「何よ・・・」
女も数人だが捕らわれていた。まぁどうでもいい。
「逃げるぞ」
「はぁ?」
叩き起こされた面子から次々とネガティブな発言がこぼれる。
やれ無理だの不可能だの、やってもいないのに随分とまぁ偉そうな態度である。
「まず、お前等は、元々はそれなりの力を持っていて、ここだからその力を発揮できないと認識していいか?」
「そうだなぁ。まぁここの頭領をそれぞれが一人でぼっこぼこに出来る程度のパワーはあるよなぁ」
「まぁね」
「じゃあなんで捕まったんだよ・・・」
「寝込みを襲われたのよ」
「拉致ってやつですね~」
なんかやけに雰囲気が軽いがまぁ問題はないだろう。
「よし、じゃあ作戦を説明する。まず、ここの魔術を破壊する」
「魔術?これはスキルだと頭領自身が言っていたが・・・」
「効果はスキルだ。しかし、これは魔術だ」
「どういうこと?分かり易く説明して頂戴」
元は美人であろう褐色の女が問いかけてくる。まぁ今回は俺の説明が悪かった。
「スキルの効果を、魔術で拡散させている。そういうことだ」
これでも王城でほかの奴らとの格差を見せつけられてた男だ。大体の魔法を見たことがある。
これは、『拡張し、拡散せよ』という魔法陣による効果だ。どや顔で説明されたので頭に残っている。
効果は単純、効果を強烈にしながら範囲を拡大させるのだ。ただし範囲は魔法陣らしく固定されているのが弱点である。
で、まぁ魔法陣というのは弱点がある。
一定量以上の魔力が一度に流れると、回路を破壊してしまい効果を失うのだ。
LED電球のようなものだと思えばいい。
「魔法陣が何処にあるか、分かるか?」
「この地面そのものよ」
ふむ。拡張し、拡散せよを使って、アジトを覆うのが限界とは、範囲自体は強くないのだろう。
「よし、じゃあ中心から少し離れろ」
よく見れば、この部屋は魔法陣の真上に作られているらしい。俺の知っている奴とは少し形が違うので、おそらく『旧式』と呼ばれる奴であろう。
地面に手を付き、手のひらに魔力を集中させる。
「魔力直接注入」
体の中のおよそ10パーセント程度の魔力が魔法陣にたたきつけられる。
10パーセントと言っても、7兆の10パーセントなのだから7000億である。それだけの量をたたきつけられれば、魔法陣そのものが破壊される。物理的に炸裂してな。
ズドォン!
轟音と共に地面が炸裂し、散弾の如き岩の破片が周囲に飛び散る。
「お前等、復讐だ。終わったら、入り口前でな」
その言葉がかかった瞬間、入り口をふさいでるドアが弾け飛び、我が先にと外に飛び出していった。
「さて、俺は宝物と食料を漁りに行くか」
まるで火事場泥棒である。実際、腹が減って今にも倒れそうなのである。
次回、やっと飯を食う