生命の危機に立ち向かう時こそ人間はもっとも大きな力を発揮する第二話
目の前にいるのは狼であろう。体長はおよそ1m程度。通常の大人でも殺される可能性のあるレベルである。
そんな相手に小学校レベルの身体能力を持つ俺は一体どうやって戦えばいいのだろうか?
1 逃げる。
さっき試したが無理であったのは証明済みである。
2 戦う。
どう考えても正面から戦っては勝てない。挽き肉にされてお腹の中だろう。
3 突如反撃のアイデアを思いつく。
現在考え中である。助けを呼ぶにもこんなところに人なんてほとんどいない。地域によってハンターや冒険者など名称は異なるがモンスターをぶっ殺すことを生業としている人たちがそれなりにいるらしいが、レアなモンスターが出現するわけでもないここにいるわけがない。
(狼は様子をうかがっている)
こちらがどう動くか観察しているのであろう。こちらがいきなり逃げ出したことでこちらを下にみているのかそれとも確実に仕留めたいのかは知らんが、おかげでこちらの生存時間は延びている。
(さて、狼やなんかに効きそうなものはあったかな・・・)
バックパックの中身を思い出す。
キャンプ用のたき火のための木
使えんな。殴打してもダメージは大して入らないだろうし、それに振る隙を与えてくれるかも怪しい。
スマホ
現状じゃなにもできない。
なけなしのコイン
せめてもの餞別としてもらった日本円変換すると4万円程度の現金。どう使えと。
携帯食料群
町から出てくるときに買った干物とか長期保存の出来る食料。
(携帯食料で・・・いけるか?)
臭いが強い携帯食料群はおそらく嗅覚の鋭い狼にはなにかしらの効果はあるだろう。しかし、取り出す際に殺されかねないし、さらに言えば相手を刺激して攻撃的になるかもしれない。
(まぁ0パーセントを10パーセントに上げるくらいにはなるだろう)
どうせこのままなら死ぬのだから可能性があるなら賭けてみるか。
後ろのポケットには・・・自販機のおつりの小銭が入っている。これで気をつっている隙に取り出そう。
小銭をちらつかせ、狼の視線を釘付けにする。
「そーれ取ってこい!」
宙に10円玉と1円玉が飛び散る。狼は一瞬声も合わさり驚いたようである。その隙にバックパックからものをドサッと叩きだし、その中にあった臭いの一番キツい魚の干物を狼に投げつける。
「グルゥ!?」
嗅ぎなれていない強烈な悪臭に狼はのたうち回っている。
「おりゃあ!」
一緒に叩き出されていた木の棒で狼を何度もたたきつける。
時間としてはほんの数秒の動作がまるで数分のように感じられた。
6回目殴りつけると、頭にクリーンヒットし、グチャッと何かが潰れたような音がした。
しかしまだ生きている可能性があるので念入りに頭をつぶす。
抵抗されたら俺が逆転負けして三途の川へ一直線の可能性もあるのだから当然だ。
狼の頭の原型がなくなった頃、体の中から力がみなぎってくるような感覚を覚えた。
間違いない。レベルアップである。
そして、ステータスを確認すると、そこには驚きの光景が広がっていた。
ヒント:繰り返す