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「ふぅっ、、、」

一人残されたナカモンは銃口を未だ入り口に向けている。もしかしたら奴らがまだ、入ってくる可能性があるからだ。その証拠に廊下側では依然として獣の唸り声が響いている。しかし、それと同時に下の階に続々と何かが落ちる音がしていた。それは、爆発によって空いた穴に続々と押し寄せる亡者たちが落ちている音だ。馬鹿な奴らだとナカモンは小さく口角を押し上げる。

 すると、かすれ切った喉仏からだしているかのような呻き声をした亡者ゾンビが這いずるようにして入り口から入ってきた。その声の主はこの荒廃した都市に相応しい住人そのもので、頭髪は抜け落ち、目は白目で、体は朽ち果てている。腐敗臭がしそうな典型的なゾンビの頭を撃ち抜き、二脚を仕舞うと、ナカモンも隣のビルに飛び移った。


**************************************


「CP、こちら薩摩。感明(無線チェック)、送れ」


『薩摩、こちらCP。感明良し、送れ』


「言っただろ、ここなら中継地まで届くって、この屋上の広さならロクマル(UH-60JA、多用途ヘリコプター)も余裕で着陸できるだろうし、ここへの入り口は非常階段一つだから守りやすい、」


「ナカモン、静かに」


「すまんっ」

 CP(指揮所)と連絡を取り合う健一の傍でナカモンが誇らしげに笑いながら言葉を発すると、同じく笑みを零ずアズヒロがそれを言葉と人差し指で遮った。4人全員が小さくとも笑っている。CPと連絡を取れたことがうれしいのだ。ここに来たのは”亡者”の脅威を避けるためでもあるが真の目的は違う。中継地点を介した無線通信を行い、ヘリ回収を要求することだった。そして、その目的が叶った今、もうすぐで任務が完遂される。油断と分かっていながらも自然と4人の口角は上がっていった。



「CP、こちら薩摩。座標********、オフィスビルの屋上に安全な着陸地点を確保。東側からのヘリ回収を要求する。送れ」


『薩摩、こちらCP。了解。ヘリの識別は チョッパー01 着陸地点には10分後に到着予定。終わり』

 相手側の送信が切れると、4人は大いに喜んだ。なにせ、10分後には此処から離脱できるのだ。無理もない。


「待って待って、まだ任務遂行してない、ヘリに乗ってここを離脱したら終わりだから」


「確かに、今のノリって映画でいうヘリが着いた瞬間に撃墜されるフラグだよな、はい、喜ぶの無しぃぃ。解散っ」

 健一がそう言うと、ナカモンが賛同して、喜びの輪の中から外れていく。何かと映画のシーンになぞらえるのが彼の癖みたいだ。


「解散って、こんなところで解散できるかよ、あと何かにつけ、これが映画だったら、映画みてぇって、いちいちうるさい。お前、そんなシーンのある映画見たことないだろ?」


「解散ってそういう意味で言ったんじゃありませんぅぅ~。あと、映画は見たことあるから」

「まぁまぁ、俺らも喜び過ぎたよな。いくら安全な場所に陣取ってるとはいえ、あっ」 

  タケとナカモンが笑いながら言い争っていると、アズヒロが何かを思い出したようにタケの装備を指さした。


「どうしたの、アズヒロ?」

 健一がきょとんとした表情で聞く。


「非常階段にC4仕掛けた方がよくないか?入り口つぶしてしまえば、あいつら上って来れないし」


「「「確かにっ」」」

 喜び過ぎていた4人はC4を仕掛け終わった後、ヘリが来るまでの10分間、極力音を出さないように無駄話をせずに警戒態勢を維持した。すると、東側の空にヘリの影が映る。


『薩摩、こちらCH01。到着1分前、発煙弾で合図せよ。送れ』

4人がヘリを目視で確認したのとほぼ同時に輸送ヘリから無線通信が入る。4人は顔を見合わせ、親指を立てた。そして、アズヒロが上空に発煙弾を発射する構えを取る。


「CH01、こちら薩摩。緑色の発煙弾で合図する、送れ」

 引き金を引くと、発煙弾が煙を噴出しながら上空に上がっていく。


『薩摩、こちらCH01。確認した。さぁ、一緒に帰ろう』


「よっしゃ。タケ、ヘリの音にありつらが集まる前に爆破してくれ」


「任せとけ」

 アズヒロの言葉にタケが意気揚々と返事をし、起爆装置を2回押し込むと非常階段に仕掛けられたC4が爆破。4人の腹の底を爆音が揺らす。体の芯を突き抜け、足をしびれさせるかのような衝撃、破壊された階段が地面にぶつかる衝突音がここ一帯を覆った。


「やっと終わるなっ、アズヒロ」

  タケが着陸間近のヘリを見ながら問いかけた。


「なにせ4人でボス級を2匹倒して、目標物の破壊までしたもんな。これじゃ絶対に死ねないって。よっしゃ、生還しよう」

 4人の上空からたいそうなローター音を響かせながら多用途ヘリコプターUH-60JA、通称ロクマルが遂に屋上に着陸。そして、回転音をたてながら全員が乗り込むまで待機し、4人無事、乗り込み終わると機体はその場を離脱。荒廃した街の上をゆくっりと飛行していった。


『全員の生存を確認……任務完了!!、新マップ、新武器・アタッチメントの解除コードをアンロックしました』


「「「「よっしゃーーー!!」」」」

 4人の目の前にその文字と同時に、ログオフをするか否かの選択画面が表示された瞬間、全員が歓喜の声を上げ、ガッツポーズをとる。


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