6.『武神』、可能性に賭ける。
「『勇者』か…まさか、齢100歳で勇者とは。長生きはするもんじゃ、って死んでおったわ」
猛は自分の言った事に呵々大笑する。
「ちょ、ちょっと待ってください!?」
「んんむ?」
「い、いいんですか!?『極楽』にいけるんですよ!『極楽』に行けば、大抵の願いの叶う酒池肉林!タケル様にはぴったりですよ!」
「…お主様もしかして、儂の事、色香に狂ってるエロ爺じゃとおもっとらんか?」
「違うんですか!?」
「概ねあっておるが…」
「『魔王』の棲む『世界』はまだ不安定で、凶暴なモンスターもいます!それに情勢が酷く、治安も悪い!人間に殺されるかもしれませんよ!」
「ほほぅ、まさに、ふぁんたじぃ」
「死んでしまえば『無』となるのに…あなたは何も考えずに…!?」
「まあ、待て。落ち着け」
息を切らして喋るアリスを猛は宥める。
「まず、質問じゃ。お主様…儂の『望み』を知らんのか?曲がりなりにも『神さま』じゃろ?」
「『神』だからって、人の心は読めません。そんなことできたら、もう全ての『世界』は平和です」
「そ、そうか…思うとったのと違うのう。まあ、質問を返すなら…」
猛は『にかっ』っと笑い、
「その酒池肉林の『極楽』は魅力的じゃが、聞く限り、儂の『望み』が叶いそうにもないのでな、遠慮しておくよ」
「『極楽』で叶わない望み…?そんなものが?」
「そう、まあ、それは秘密じゃ。じゃが、儂の『望み』は『魔王討伐』で叶うかもしれん。それが、第一の理由じゃ。そして…」
猛は笑ったまま、
「お主様が『優しい』からじゃ」
「えっ…」
「歳の甲じゃ。お主様の話からの所々…その『世界』の事、そして『魔王』の事を心の底から案じて居る」
元々、猛は生前、特に女子供から何かを助けを乞われた時、例えそれが、死ぬかもしれない状況でも助けていた。
ならば…この『優しい#女神__おんな__#』の願いは聞き入れたい。
「だから『儂の願いを叶える為』に、『お主様の為』に…」
猛の言葉にアリスは感動と驚愕が走る。
しかし、
「ま、待って…!それ以上言っちゃダメ…!」
「儂は『勇者』となろう!」
突如、猛の体が白く光る。
「おおっ!?なんじゃぁ!」
「け、『契約』が、受理されて…しまいました…」
アリスは、取り返しのつかない事をした、という顔をしている。
「おおっ、これで儂は『勇者』か!?」
「………」
「よっし、若返ったことじゃし!気合入れるかのぅ!」
「………」
「…もし。どうした」
ぱちん
アリスは力無く、猛の頬を叩く。
「…『契約』は、完了しました。もう変更はできません。本当に、馬鹿な事しましたね」
アリスは泣きそうな笑顔で、
「…ありがとうございます、バカ勇者様」
「ふふん。馬鹿ではない…大馬鹿なのよ」
にかっ、と再び笑う猛。
しかし、内心は楽しみでしかたなかった。
(これで…儂の『本願』が得るかもしれん。しかし、約束したし、最後の『魔王』で叶えられるよう、頑張るかのぅ)
「それでは勇者様、『討伐支援』に何を持って行かれますか?」