5.『武神』、答えを出す。
少し変えました。
「争っている…じゃと?」
「はい…それぞれが、世界に、『よくある理不尽』に会い、その時に『世界』を恨み憎んだ人間であり、その存在自体が憎しみの塊です。世界を滅ぼすのは…人間を、世界を滅するのは己であると争っています」
「ふん…」
「そして、『勇者』は天寿以外の死…殺されると、『御魂』が壊れ、『完全な無』となります。それは『神』でも再生できぬこと…どうなるかは神もわかりません。それが、次の理由です」
「………」
猛は静かに聞く。
「…以上がリスク。次はメリットです」
アリスは鏡を取りだす。
「まずはこれです」
「ん?鏡…うぉっ!?」
猛は鏡に映った自分の顔を見る。
「儂、若っ!若返っておる!?」
「はい。特典の一つである『若返』。全盛期の頃まで若返りました」
「おおっ、通りで力が漲ると!20代の頃かの?やっぱ、この頃の儂、イケてるのぉ!」
感動している猛を見ながら、アリスは説明を続ける。
「次に『討伐支援』。まず、『勇者』になると私の前で確約した時、デフォルトとして、『聖なる力』が宿ります。それと制約はありますが、神からの支援があります。『魔王』を殺す為に必要と受理されたモノならなんでも。伝説の剣、その世界の貨幣が溢れ出る銭袋等ですね」
「ふむ…右斜め45度…おおっ!イケとる!」
猛は鏡に向かって夢中でポーズを取っている。
興味はなさそうだ。
「そして、『勇者』最大のメリット…『願いの成就』」
「…なに?」
猛は鏡から眼を離し、アリスを見る。
「『魔王』を一人殺すと、どんな願いでも、一つ叶えます」
「それは、確かにでっかいのう。どんな聖者でも、自分の力では絶対に成就が不可能な、叶えたい願いは一つや二つあるもんじゃ」
「はい。それが全部で4回のチャンスがあります。そして…『魔王』討伐後、その世界の支配者として、君臨できます。これも一つ制約があり、『太極者』は魂の存在である為、子孫を残す事ができませんので、一世代限りです…」
アリスは息を吐き出して猛の眼を見る。
「以上で、『勇者』の説明は終わりです」
「ふむ…」
「オオガミ タケル様…これは強制ではありません。断る事もでき、その後は極楽に行き、この世の快楽を全て味わう事ができます。これは嘘ではありません。大抵の人間の願いはここでも叶います」
アリスはゆっくりと笑顔に顔を戻す。
「『勇者』になりリスクを負うか、リスクなく『極楽』で叶えるか、時間はいくらでも待ちますので返事を…」
「あいわかった。『勇者』となろう」
「お待ちしますので…ってはい?」