3.『武神』は『勇者転生』の資格を得る。
「この度、タケル様が『十王裁判』ではなく、『救世神』である私が担当する事になったのは、タケル様が生前『太極』に至ったからです」
「『太極』?」
「はい。レジュメ14ページをどうぞ」
レジュメの14ページ目には『太極とは ~極限のススメ~』と書いてあった。
「『太極』とは、生きてる間に政治・学問・武術等の様々な分野において、『秀才』や『天才』と呼ばれる方達を通り越し、『進化』を重ね、『神化』という人間の極地へと辿り着いた人達の事です」
「ほう…」
「そして、『太極』へと至った人間…『太極者』が、死後に与えられる権利は『転生』でございます」
「転生?裁判も無しに?」
日本人である猛には馴染みの事だった。
人間は死後、生前の行いによって、『六道』のどれかに転生する。
猛としては『修羅界』が希望だったが…
「いいえ、『十王裁判』後の『輪廻』とは違います」
アリスはデスク表面のタッチパネル押す。
すると、何もない所から『地球』の立体映像が写る。
(高級オフィス&未来感が半端ないのう…案外、この女神はエリートなのか?)
「『世界管理局』が管理する『世界』はタケル様のいた『地球』だけではございません」
『地球』の周りに様々な『世界』が写る。
『地球』のように球体の『世界』。
大昔の『地球平面説』そのままの『世界』。
球体ではなく、四角形の『世界』。
「このように様々な『多元世界』…俗に言う、異世界が存在します」
「ほほう…ファンタジーじゃのう」
猛の言葉に少しアリスは意外そうにみる。
「なんじゃ?今はロマンスグレーの儂だって、若い頃はアニメもゲームも嗜んだし、世界を回った時に様々な国の事に明るいわい」
「そ、そうですか…コホン。それで、『転生』というシステムですが、『太極』に至った方が生前の『太極』としての力を振るい、未発達な『世界』の発展、問題を抱える『世界』の解決等に努めてもらうものです。次のページが、過去例です」
次のページをめくる。
「…なるほどのぉ」
「そこに書いている通り、『政治の太極者』は歴代を重ねる王朝を築いたり、『軍務の太極者』は長年続いた戦争を終わらせた。『文学の太極者』は『聖書』の作成や文化の発展、『発明の太極者』は技術革命等…それは様々でございます。そして…」
アリスの瞳に、真剣さが増す。
「オオガミ タケル様。『武の太極者』である貴方は、特殊転生『勇者』としての資格があります」
「…ユウシャ?」
アリスの言葉に猛の眼が点になる。
「ゆ、『勇者』というと、あれか?伝説の聖剣を抜いて、『魔王』を倒すってあれか?」
「まさにその通りでございます。次のページから『勇者』の説明がありますが…全てをご説明した後でも、拒否する事ができ、その場合は俗に言う『極楽』に向かう事ができます」
まるで、救いを求めるように、アリスは説明を始めた。