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狐と狼  作者: 黒崎 真琴
5/10

第五幕 芹沢鴨暗殺計画

~前回のあらすじ~


 浪士組から新選組と名が変わった組織。そして、主人公の雷丸は人間の恐ろしさをまた知った。しかし、彼はもう一つ知った。人間にも、上下関係があることを。だが、土方たちがとんでもない計画を考えてることは知らなかった。

 土方さんに急に呼び出された俺たち。一体、何の用で呼び出したのだろうか…

「悪いな急に呼び出しちまって」

土方さんが申し訳なさそうに言った。

「いいですよ、別に。これといった大きい行事もありませんでしたし」

山南さんが励ました。

「それで、土方さん。僕たちを呼び出した理由ってなんですか?」

沖田が土方さんを訊ねた。そういえば、今ここにいるのって、俺と、近藤さん、土方さん、山南さん、沖田に斎藤、源さん、平助に原田。…あれ?一人いない…

「土方さん。あの、永倉は呼ばなくていいんですか?」

「いいんだよ…あいつは…」

土方さん…なんか…冷たいなぁ…

「俺たちは今から、重大な任務をする。芹沢を暗殺する」

「暗…殺…」

俺は土方さんの言葉から出てきた、たった四文字の言葉に体が震えていた。息が苦しい。

「雷丸…大丈夫?」

俺の背中に沖田の手が当たる。

「う…うん」

そう言いながら、体は震えたままだった。

「九尾には厳しいと思うが、これは新選組の未来のためだ。我慢してくれ」

「未来のために、人を殺すんですか…?」

「怖いか?」

俺は首を縦に振った。怖いに決まってる。人を殺すなんて、親父と一緒だ。

「だろうな。お前は血が怖くなってしまったからな」

「血が怖い…俺が…?」

刀も扱えず、血が怖くなってしまった俺。こんな状態で俺は武士になれるのか…

「まぁ、無理もありません。あんなことになってしまいましたからね」

山南さんは分かっているようだ。分からなくてもいいけど…

「だから、九尾。お前はこれをつけてやれ」

土方さんが俺に渡したのは…穴の開いてない狐の面?

「穴が開いてねぇから、血を見なくても済むだろ。それに、お前は伊賀の生まれだから、心眼が使えるだろう?」

この人も勘が鋭いようだ。

あやかし図解録を見たんですよね?」

「ああ」

時々、土方さんに頼まれて、書物の整理したら、図解を見つけて、山南さんに渡したんだ。たぶん、土方さんも見たんだろうな。

「九尾の流血恐怖症はなんとかした。あとは、刀か…」

土方さんが頭をかかえた。

「地下にある刀でいいんじゃないんですか?」

山南さんの提案だった。地下にある刀?地下倉庫があるんだ。

「だが、あの刀は…」

地下に眠る刀…どんなんだろう…

「いいじゃないか、歳。この際、試してみたら」

「近藤さんがそう言うなら…」

「じゃあ、私が刀を持ってきますね」

「俺も行く」

山南さんが立ち上がった後、俺もつれて立ち上がった。

「九尾。お前が言っても意味がn…」

「いいじゃないですか、土方君」

「そうですよ。それに俺、外の風に当たりたいし」

「そうか」

「それでは、行きましょう」

「はい」


 俺は山南さんと一緒に部屋を出た。俺は肩を撫でおろした。山南さんに感謝しなきゃな。

「すみません、山南さん」

「いいんですよ。あなたの顔を見てたら、心配で仕方がなく…それに、顔色が少しすぐれませんでしたから。大分、楽になりましたか?」

「ちょっとだけですけど…」

「図解録を見つけてくれてありがとうございます。これで、あなたの事について調べることができます」

「いえ、俺はたまたま、見つけただけですし…」

廊下で山南さんと喋りながら、地下倉庫の入り口まで行った。


「ここ、ですよね?」

「ええ」

「開けてもいいですか?」

「もちろん」

 俺は倉庫の重たい扉を開けた。目に映ったのはだだっ広い居間のような感じだった。

「こちらです」

俺は山南さんの後ろについて行った。


 着いた所は、三つの透明なガラスの中に刀が一本ずつ入っていた。俺は真ん中の刀に心を奪われた。刀身は黒く、光に反射して剣先がきらりと光った。

「きれいだな」

「その刀に触れてはいけません」

山南さんの背筋が凍る冷たい声が俺の体を止めた。

「それは『妖刀 村正むらまさ』です。一度、触れたものを呪うといわれている刀です」

一度触れたものを呪う!?そんな力があるのか?この刀には…

「ですから、決して触れてはいけません。分かりましたね?」

「はい…」

でも、この刀には妖と同じ力があるなんて…思えない。

「あなたに試してほしいのは、両脇にあるものです」

「この二つですか?」

「はい。天下五剣の中で唯一の打刀、『火蓮かれんげ』と、太刀の中で最も打刀の長さに近い『月風魔げつふうま』。この二つを試してもらいます」

「試す?どういうことですか?」

ずっと気になっていた。授けるじゃなく、なぜ試すなのか。

「何人かの隊士が試したのですが、火蓮は鞘からさえ抜くことができず、月風魔は鞘からは抜くことはできますが、重すぎて振るうことができませんでした。沖田君や土方君、斎藤君や永倉君でさえも扱えませんでした。もちろん、局長もこの私でさえも」

「沖田や土方さん、近藤さんでさえも使うことができなかった刀なの!?俺に扱えるかな?」

俺は少し心配になってきた。土方さんや近藤さん、沖田でさえも使うことができなかった刀を俺が使いこなせるのか?正直、不安でいっぱいだ。

「大丈夫です。自信を持ってください。九尾君なら、きっと、使いこなせます。私はそう信じています」

山南さんの言葉が温かく感じた。俺は改めて、人間の優しさを知った。

「山南さん…ありがとうございます」

俺は山南さんの方を向いて笑った。

「さあ、土方君達のところに戻りましょう」

「はい」

俺達は倉庫を出て、土方さんたちがいる部屋に戻った。


「すみません。遅くなりました」

 山南さんがが入り、俺も後から入った。

「おう。別にいいぜ」

「土方君、九尾君はきっと、この二つを使いこなせます」

「山南さんがそう言うなら、俺も信じるぜ」

土方さんは少し笑って言った。

「雷丸、頑張ってね」

沖田が俺の頭を撫でながら言った。「子供扱いするな!」と言いたいところだが、俺はそこまで短気じゃない。

「うん!」

「決行は今夜だいいな?」

「「「はい!」」」

今宵、この屯所で暗殺計画が決行された。


☆沖田総司目線


 島原にあるどこかの酒屋。ここでみんなで飲んでる…って、みんなじゃないか。雷丸は酒が飲めないから、外で待機中だから。

「いや~いい飲みっぷりだぜ、芹沢さん」

「新八っつあん、飲みすぎだぜ」

平助だって結構飲んでるのにね。まあ、平助はただの時間稼ぎだし、いいか。

「では、俺は屯所に戻るとしよう」

芹沢さんが立ち上がる。

「じゃあ、俺達も帰るか」

土方さんが立ち上がると同時に、僕、山南さん、左之さん、源さんも立ち上がる。

「お前らも帰るのか?じゃあ、俺も」

新八さんが立ち上がろうとすると、一君が喋り始めた。

「いや、俺と新八、平助は待機だ」

「え?」

「副長からの命令だ」

うまく誤魔化せるといいね、一君。


 外で待機をしていた雷丸の姿が見えた。

「行くぞ、九尾」

「はい」

雷丸は夜になると人が変わるようだ。もういつでも人を斬ってもいいって顔してる。ある意味、僕もだけど…

「雷丸、大丈夫?血が怖いんでしょ?」

でも、僕は雷丸が心配で仕方がない。

「見えなければ問題ないよ」

「でも、気をつけてよ」

「うん」

喋っているうちに、屯所の近くにいた。

「いいか、灯りが消えたら行くぞ」

「「はい」」

「雷丸、面つけな」

「うん」

雷丸は横につけていた狐の面を自分の顔の前に持ってきた。


 灯りが消えた。いよいよだね。

「いくぞ」

僕達は配置に着いた。左之さんは入り口、源さんは部屋の前の庭の茂みの中、僕と雷丸、土方さん、山南さんは部屋の前、これで、芹沢を斬る。


 そして、芹沢鴨、八木邸で死す。


 僕達は新選組の中の組織、『手偏の新撰組』をつくった。

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