第三幕 浪士組入隊
前回のあらすじ
両親を失い、孤独の闇にとらわれてしまった主人公の九尾雷丸。そんな闇を追い払ったのは、一度も会うことはなかった、壬生の狼と言われた男たちだった。そして、沖田総司は『雷丸を浪士組に入れる』という案を出した。果たして、土方歳三はどう答えるのか?雷丸は正式に浪士組に入れるのか?
え?沖田、今、何て?
「どうです?土方さん」
「壬生の狼の呪われた狐か…面白れぇ組み合わせだな。入隊かどうか決める前に、九尾。お前、刀は使えるか?」
土方さんがそう言うと、悩む。沖田の言う通り、この人は悪い人じゃない。
「えっと…木刀なら使えるんですが、真剣はちょっと…」
そう言うと土方さんは立ち上がり
「道場の方に移動するぞ」
俺を含め、みんな土方さんの声で立ち上がり、部屋を出た。
「ここが道場?広ーい」
着いたところは、さっきの部屋よりも広かった。壁には、木刀が飾ってあって、土方さんはそれを二本取り、一本俺に渡した。
「九尾。これからお前には俺たちの中の『居合の達人』に手合せしてもらう。死ぬことはないから、安心しろ」
死ぬことはないって…そりゃあ…木刀だからな…
「斎藤、お前だ」
「はい」
土方さんが言っていた『居合の達人』は、見るからに強そうな人だった。
「手加減はしない」
戦う気すらない。
「お手柔らかに」
渡された木刀を左で持っているということは、左構えか…俺と同じだな…
「構えて」
土方さんの声に合わせて、木刀を前に出す。その時、俺は一瞬で悟った。この人は…突きで来ると…
「始め!」
予想は当たった。彼は突きで来たが、俺はあっさり避けた。
「斎藤の突きをかわす奴が総司の他にもいたなんて…驚いた…あいつ、すげぇ」
外野がうるさいが、気にしないでおこう。
「俺の突きを避けるとは、総司以来だな」
沖田も避けたんだ。だったら、俺でも避けられる。
「隙ありすぎですよ」
木刀の先を斎藤さんに向けて、おれは『ある構え』をした。その構えを見ている外野がざわめきが起こった。
「なあ、左之さん。あれって、槍の…なんの構えだ?」
「あれは、槍を投げる構えだ。だが、あれは木刀。重さも長さも全然違う」
槍を使う人がいるのか…この構えが分かるのも当然か…まあ、俺はこの木刀を槍に変えて見せよう。そして、俺は木刀を斎藤さんに向かって投げた。
「斎藤!避けろ!」
当たる寸前、土方さんが斎藤さんに指示を出した。斎藤さんは俺が投げた木刀を避けた。当たっていて、真剣だったら、斎藤さんは死んでいるだろう。木刀なら、打撲で済む。今のおれは何も持っていない。斎藤さんにとっては絶好の隙だ。
「もらった!」
けど、こいつらは知らないし、見えないであろう。俺が糸持っているということに…糸を引っ張り、木刀は俺の手の元に戻り、そして、斎藤さんの腹にあてた。
「そこまで!」
俺の勝ちだ。
「初めて負けた。斉藤一だ、よろしく頼む」
「こちらこそ斎藤さん」
「斎藤でいい。あんたは俺に勝った男だ」
斎藤さん…いや、斎藤は目を合わせていった。
「九尾の実力は分かった」
土方さんが俺の前に来た。
「九尾雷丸。お前を正式に浪士組に入隊することを許可する。これから、よろしくな」
「はい!ありがとうございます、土方さん!」
仲間ができて、少し嬉しかった。そして、沖田の方に行った。
「これからよろしく、沖田!」
「よろしくね。雷丸」
これから俺と浪士組の皆さんとの一緒の生活が始まります。
母さん、今俺はすっごい幸せだよ。