一章8話 開戦?マジか?
隣国ルージュの戦準備、王に知らせると、案の定攻められる前に攻めると言い出し、フィリアと協力して何とか止めさせることができました。
それから暫く経ち、マルスの国境にルージュのものと思われる大隊が攻め込んできて戦線が開かれました。国境の辺りは制圧されましたが、幸い以前に送っていた増援が間に合いそれ以上攻め込まれることも無く戦線は膠着状態に至りました。ここから何とか停戦に持っていけないでしょうか?
「無理でしょうね、今もこちらから何度も書状を送っていますが、全て無視されています。
あの王を抑えておくのにも限界が有るでしょうから、それほど猶予はないでしょうね」
「・・・戦わないと終わらないようですね。フィリア、協奏魔法隊は動かせますか?」
「はい、いつでも」
「出来るだけ被害を押さえ、この戦いを終わらせますよ」
「はい」
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先日、謎のローブ男に消し炭にされた男はどうやらリアの命を狙っていたらしい、謎のローブ男が手を貸し魔物の運用方等を洩らさぬよう口封じに男を始末したとマナは考えているそうだ。
「まぁ、あれから平和だよな・・・」
訓練所で俺と手合わせしているソルダに呟く、ソルダの動き以前と比べて随分と余裕が出てきたなぁ。
「何言ってんだ?今この国は戦争の真っ最中だぞ」
そうは言うけど俺は戦争なんか体験したことが無いし、戦線はここからだいぶ離れてる所だろ?実感なんて湧かねぇよ。
「面倒なことになってるなは確かか・・・ソルダ、訓練はちょい中止だ、ちょっと今どうなってるか聞いてくる」
「は?聞くって、どこでだよ?」
「マナのとこだ」
「はあ?!」
ソルダを残して俺は城に向かう、後で聞いたことだが、離宮付きの者が無許可で城に入るのは禁止されているそうだ。まぁ、俺には関係ない。
城の中を進み、しばらくして気が付いた。マナの奴どこに居るんだ?あいつの部屋とか俺が知るわけ無いんだよなぁ・・・
「あ!リョウお兄さん!どうしたの?」
お、リリカじゃないか、丁度良いマナの所まで案内させよう。
「よお、マナにちょっと聞きたいことが有るんだけど場所がわかんねぇんだ、連れてってくれないか?」
「うん!マナお姉様なら今の時間は自室にいるはずなの、付いて来て~」
リリカに付いて城を進みマナの部屋の前にたどり着いた。
この城何階まで有るんだろう、今居るのが5階、でもまだ上が有るみたいだな・・・
部屋の中から話し声がするな・・・さてどうしようかな・・・
―ガチャ―
「誰ですか!?」
迷っていると内側から扉が開けられ耳の長い女が出てきた。思わず気配を消し認識されにくくする、リリカ(目立つ奴)が居るからうまくいけば気付かれないだろ。
「フィリアさん、こんにちはなの!」
「リリカ様でしたか、マナ様に何かご用ですか?」
あの耳どうなってるんだろ?長いのに垂れてない、骨でも入ってるのか?
「リョウお兄さんがマナお姉様に聞きたいことが有る、って言ってるから連れて来たの」
「リョウ?そんな名前の人、城に居ましひゃぁ!!」
うお、長く尖ってる以外は俺たちと変わらないみたいに思えるけど、なんだ?すげぇ触り心地が良い。
「え?あ!ちょと!や、あ、あ、やめ!やぁ」
やばいなずっと触っていたくなる・・・
「ふぁ!」
悶えるのを無視して耳の感触を楽しんでいると限界が来たのか?座り込んでしまった。
「リョウイチさん?何をやっているんですか?」
マナの部屋から聞こえた彼女の声に思わず手を耳から離す、顔を向けると凄い良い笑顔でマナがこっちを見ていた。
「ははは、よう、マナ」
「こんにちは、リョウイチさん」
「ちょっと聞きたいんだが、この国、今戦争中なのか?」
下手なことを言ってマナを怒らせるのはまずいと感じた為早々に用件を切り出す。
「ええ、残念ながら今は戦争の真っ最中です」
「えっと戦争の原因は何だ?」
「分かりません、先日急に隣国が進行を開始して、此方からの呼び掛けに答える事も無く戦線を維持し続けています」
まぁ、攻めて来られたら迎撃しない訳にもいかないよな。
「解決策は有るのか?」
「幸い向うは騎士国家此方は魔法国家です。戦線で大魔法を放ち、向うの戦意をそぎ落としてからもう一度停戦を呼びかけます。今その魔法部隊の護衛をどうするか相談していたところですよ」
そう上手くいくか?ここが魔法国だってこと相手だって分かってるだろう?なんか作戦に不安を感じるな、ホントは戦争なんて関わりたくないんだけどリアや他の奴にも少なからず恩が有るし手伝ってやるか・・・
「んじゃ、その護衛に俺も入れといてくれ」
「・・・ええ、良いですよ、よろしくお願いしますね」
あっさりOKを貰った。
「詳しいことは後で知らせてくれ、なに、良い仕事してやるさ」
余計な事を言われる前に部屋を出る、さて、神代理との約束も有るし、ちょっと張り切ってみるか!
「リョウお兄さんお話し終わったの?」
リリカが俺の後ろをチョコチョコ付いて来ていた。話してる間は大人しくしていたな、まだ幼いのに空気の読める子だ・・・つい優しくしてしまう。
「あぁ、もう用事は終わりだ」
「だったら一緒に遊ぶの!」
ソルダを訓練所に放置しっぱなしだけど・・・まぁ、いいか。
「で、なにするんだ?」
その日、俺はリリカに城中を引き回されることになった。
おかげで城の中をある程度把握できたので良しとしておこう、さすがに王とかとは会えなかったがそれで良かっただろう、リアを離宮に閉じ込めた張本人だ、会ってたらぶん殴ってたかもしれないからな・・・
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「あんなに簡単に話して良かったのですか?それに魔法隊の護衛に同行することを許可するなんて、彼は何者です!?」
彼が去った後少し顔を赤くしたフィリアが私に問いかける。今まで一緒にいて気付きませんでしたが、フィリア耳が弱いんですね、さっきの悶える姿、ちょっと可愛かったですよ。
「そう言えば、色々あってフィリアにはまだ話していませんでしたね、彼はしばらく前にマテリアが森で拾って来た子よ、それも魅魔の紅月の夜にね」
「な!マテリア様に魅魔の紅月の夜に連れられて来たって、それは危険すぎますよ、もし彼が預言書に有る魔王だとすると此度の戦いに関係無く国が滅びますよ!」
フィリアは焦っているみたいだけど、私はここ数日の彼を見ていてあまり悲観的なことは考えていない、彼なら大丈夫なんじゃないだろうかと思えているのだ、これでも人を見る目は有るつもりです、その直感を信じるなら、彼が例え魔王だとしてもこの大陸を滅ぼすことなんて無いのではないでしょうか。
「フィリア、大丈夫よ、何より私たち姉妹3人の中で一番そういう事に敏感なリリカが、あれだけ懐いているんだもの、彼が邪悪な存在である筈がないわ」
「む、確かにあのリリカ様が懐いていたのには驚きましたが・・・」
なんだか歯切れが悪いですね、もしかして耳を弄ばれたことを根に持っているんでしょうか?
「それにしてもフィリアはいい声で喘いてましたね・・・」
おもむろにフィリアの耳に手を伸ばす。まさか私がそんな事するとは思っていなかったのでしょうか?あっさり触ることが出来ました。
「え?あ、ちょっと、マナ様!?あ」
・・・これは、なんでしょう、すごく触り心地が良いです。リョウイチさんがいつまでも触っていた気持ちが分かります。
「あ、だめです!や、あ、あ、あ、マナ、様、待って、やぁ」
いけません、つい夢中になってしまいました。耳を開放して少し真面目な顔を作ります。
「大丈夫ですよ、彼はマテリアに少なからず好意を持ってるみたいですからね、マテリアが悲しむ結果は望まないでしょう」
彼の好意がどういった類のものかまでは分かりませんけどね。
「護衛隊、私も同行します。何かあれば彼を始末しますが、よろしいですね?」
顔が赤いままのフィリアを可愛く思いましたが、弄ると話が進まないので置いておきましょう。
「ええ、何も無いと思いますが、よろしくお願いしますね」
「はい」