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三章7話 夢見の予言

そろそろリョウの試合が始まりますね、その次の試合が僕の試合ですし、そろそろ移動しておきましょうか。


「あれ?ライネスさん、リョウの試合見ないんですか?」


席を立ち会場へ行こうとする僕に気付き、ゴルドの来賓として来ているマテリアさんが声をかけてきた。


「いえ、僕の試合がリョウの試合の後ですから、先に会場の方に向かっておこうかと、リョウの試合は向うで見ますよ」


そう簡単に話し来賓席を後にした。


リョウの試合は九薙の技、英雄と同じ剣術を使う者が相手かもしれません、これは是非近くで見ておかないといけませんね。世界を救った英雄の剣技、どれ程のものなのか興味があります。



「ライネス フレイムロウ」


ふと、名前を呼ばれた気がして立ち止まる、珍しく周りに人は居ません・・・

まぁ、これから試合がありますし、そっちに皆行っているのでしょう。


「こっちだ・・・」


声のした方に目を向ける、今は試合に使う資材などが積んで置かれている為、通路からは上手く死角になる位置、ローブを身に付けそのフードで顔が分からない様にしている人物が居た。声からして男でしょうか?


「えっと、なんでしょう?」


ローブの男は通路の死角に入り込むように少し後退し言葉を発する。


「ルージュとゴルドで起こった戦争で、戦場に出た3人の王子の中で唯一生き残った王子・・・」


「・・・まぁ、そうですが」


なんだろう?この男、凄く怪しいんだけど。


「本来ならあの戦いで3人共が命を落とすはずだった・・・」


しまった!ローブの男が物陰に隠れて行くので釣られて近付き過ぎた!

不意を突かれ僕は物陰に引き込まれる。

体勢を立て直すと僕は奥、通路側を塞ぐ形でローブの男が立っている。


逃げ道を塞がれてしまいましたか・・・不味い、どう考えても敵ですね。


「不測の事態が多すぎる、我等の予定は狂いっぱなしだ・・・そろそろ、埋め合わせを行わなければ・・・先ずは、お前を殺しルージュを落とそう」


ルージュを落とす?あ!こいつ、兄さんを殺ったあの時のローブの男か!?


「『ストーンエッジ』」


っつ!!こんな所で攻撃魔法!!


ローブの男の持つ魔力が形を成していく気配を感じ取り焦る、通路から死角になっているここは、武器を振り回すのには問題ないぐらいの空間はあるけれど、それほど広い訳ではない。しかも僕は今壁を背に追い詰められている状態、通路の側はローブの男が塞いでいる為、逃げる事も出来ない。凌ぐしかない!


剣を抜き飛んでくる石の刃を叩き落す、場所が場所だけに大きな魔法は使えないのが唯一の救いでしょうか?


「いったい何が目的なんだ!」


「・・・『ガイアランス』」


聞く耳無しですか、足元から石の槍が突き出てくる、これは・・・剣で防ぎきれるでしょうか・・・


「くっ!!」


僕の剣と石の槍がぶつかり、僕の方が押し負ける、石の槍は剣で受けることが出来たけど、僕は吹き飛ばされ背を壁に叩き付けられた。


息が詰まる、このまま倒れてしまいたくなりますけど・・・それは出来ない、男を睨みつけながら周りを気にする事を止める覚悟をする・・・


男の放つ石の刃や槍を防ぎ、または避けながら呪文を紡ぐ。


「汝は秘めたる紅蓮の欠片

 我が放つは咆哮する火球

 纏いし炎を解き放て、爆ぜろ」



なんとか詠唱を完了することが出来た・・・後は放つだけです。周りもの物も一緒に吹っ飛ぶでしょうけど、仕方ありません。



「ちっ、面倒な・・・」


「『フレイムボ・・・!!」



男に向かって魔法を放とうとしたけれど、何だこれ?


背にしている壁と下以外の全方向から石の杭が先端を僕に向けた状態で取り囲んでいた。


「『ストーンメイデン』」


「くっ!『フレイムボム』!!」


一部の杭が僕に向かって動き出したので、咄嗟にそっちに向かって中断していた魔法を放つ、けど駄目だ、数が多すぎるうえに無詠唱の魔法では防ぎきれない程の威力が込められている!


一斉にではなく数回に分けて飛んで来る石杭を、剣で弾き体を捻り避けるものの何本かは身体を掠め、更に何本かは僕の身体に半ばまで突き刺さる。腕や足を犠牲に危ない箇所(きゅうしょ)への被弾は免れることができた。


「白き奇跡の力

 暖かな慈愛を纏う輝きのベール

 光よ、我に癒しの祝福を・・・『ヒールライト』」


身体に刺さる杭を抜き、すぐさま治癒魔法を施す。しかし、その間もローブの男は待ってはくれない。


「治癒魔法か・・・そう言えば貴様は聖騎士だったな、

神聖魔法が使えてもおかしくは無いか、しかし・・・」


文句を言いつつも攻撃の手は緩めない、石の刃や槍が次々と僕に襲い掛かる。


「回復されるのは面倒だ、潰しておくか・・・

 

 其は最凶たる漆黒の影

 聖なるモノを否定し負を好しとする

 影に纏われし汝は、ただ滅び行くのみ・・・『カーススペル・不治の霧』」


黒い霧が僕の身体を包み込んだ後、僕の身体に溶けるように消えていく。


「な!」


治癒魔法が効かない!?かけ続けていた治癒魔法が突然効力を発揮しなくなった。

どうなっているんだ?これがさっきの魔法の効力なのだろうか?

とにかく不味い、傷の方はまだ完全には癒えていない、この状況で傷を治せなくなるってことは・・・


「『ストーンメイデン』」


僕を取り囲む石の杭、傷で動きの悪くなっている僕には凌ぎきれませんね・・・


「がぁあ!!」


石杭が次々と僕に突き刺さり僕の身体は床に磔にされてしまう、わざとなのか分かりませんが、杭は僕の急所を上手く外していました。

それでも今の僕は治癒魔法を受け付けない身、これはもう絶望的・・・


「ふん、いい様だな、今楽にしてや・・・ん?・・・ちっ、誰か来たか?まぁいい、このまま放っておいてももう助かりはしないだろう・・・」


誰かがこちらに来ることに気付いたローブの男の気配が消える、僕を残して立ち去ったようです。けど・・・ほんとに不味い、身体は磔で動けないし治癒魔法も効かない、今から僕に掛けられた魔法を解いて治癒を施しても助かるかどうか・・・


「ライネス!!」


あ・・・この声は、リョウ?僕がローブの男と戦っている間に試合は終わったんでしょうか?


僕自身が危険な状態だというのに、そんなどうでもいい事が頭に浮かんだ・・・


はは、本当に不味いですね・・・


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