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三章5話 ミーナ、シルク、ライネス


第二試合終了後、俺は気絶したシルクが運び込まれた医務室にミーナを連れて訪れていた。

試合前にミーナがシルクと話をしたいって言ってたけど、さっきの試合でシルクのこと気絶させちまったんだよなぁ、大丈夫か?


「あれ?リョウイチさん、どうしたんですか?」


医務室の扉を開けると意識を取り戻しピンピンしているシルクが椅子に座っていた。


「もうだいじょうぶなのか?」


「あ、はいもう大丈夫ですよ、治癒魔法のおかげで傷も残ってませんしね。でも、リョウイチさんは怪我してなかったんじゃ・・・あぁ、心配して来てくれたんですね、ありがとうございます」


どうやら、今大会の為に集められた治癒魔法使い達の腕は確かのようだ。


まぁ、大事が無くて良かったと言う事にしておく・・・余談だがこの世界(エルリオール)の人は地球の人よりも丈夫な体の創りをしている、何度かソルダとかを殴って行き着いた結論だが、間違っては居ない筈だ。


「こんにちはシルクさん、あたしはミーナ ブレイス魔剣鍛冶師をやってます。ちなみにリョウイチさんの一回戦の対戦相手です」


待ちきれなかったのか、俺の後ろから出て来たミーナがシルクに語りかけた。


「あ、どうも、前の試合はアタシも見てましたよ、どちらかが次の対戦相手でしたからね、でも、魔剣鍛冶師ですか・・・どうりで大量の魔剣を所持している筈ですね」


「はい、それでちょっと聞きたいんですけど・・・」


「ミーナちゃんも魔剣鍛冶師って事は・・・グラフト ソードについてかな?」


「えっと、そうです。魔剣鍛冶師グラフト ソードは魔剣鍛冶師の最大の目標である天剣を生み出したって噂の後、全く噂を聞かなくなりましたから、今どうしているのかと思っていたんですけど・・・そんな中、家名が同じシルクさんを見つけて、グラフト ソードと何か関係あるんじゃないかって思ったんですけど」


「うん、グラフト ソードはアタシのお爺ちゃんだよ」


正解だな、シルクはグラフトの孫のようだ・・・ってことは、こいつジンの妹か従兄妹ってとこか?


「でも、残念ですけど、お爺ちゃんはもう居ませんよ、噂にある天剣を造った後数日して息を引きとりましたから・・・それに、お爺ちゃんの造った天剣は完璧じゃないんですよね。本来天剣と言うのは創剣と言う心剣を造り出す力を持たない者が、自らの力のみで代償を払う事無く造り出した、心剣と同等の力を行使する事の出来る魔剣を指すんですけど、お爺ちゃんは天剣を造る際に自らの魂と消えかけた精霊の魂を使っていますからね・・・」


「精霊の魂って!それは魔剣鍛冶師としては最低の邪道ですよ!!」


「いえ、あの場合はそうしないと精霊は完全に消滅してたから、解放する術もちゃんと用意してあるから完全な邪道って訳でもないんだよね・・・」


2人が話し込み始めたので俺は完全に置いて行かれることになった。魔剣は俺の能力、魔剣武装(カオスアルマ)にも関わるからちゃんと話を聞いておけば役に立つんだろうけど・・・めんどい。


俺の頼まれた役目はミーナをシルクと引き合わせる事、なら俺の仕事は終わっているしライネスの試合でも見に行くか・・・確かもう直ぐ始まるはずだよなぁ?俺の試合の前にあいつに聞いた話も気になるし、様子を見に行ってみるか。


その事を2人に告げ俺は医務室を出てそのまま闘技場(コロシアム)に向かう、せっかくなので来賓席に行きリアと近衛団長(ミスト)に勝利報告をしておく。


今回はリアとミスト2人に女の子を虐めるなと説教された。試合だから仕方ないだろうが・・・

っと、そんなことよりライネスの試合だ・・・ってもう始まってるのか?!


ちっ、ライネスの二つ名聞き逃したな、俺のみたいに変なのだったら後でからかってやったのに・・・


舞台の上でライネスが冒険者風の男と対峙している。相手は一般参加の奴だな。

男が試合相手か、正直その方がやりやすいだろうなぁ、花は無いけど。


ライネスは男の攻撃を剣で受け、隙を突いて炎の攻撃魔法を放つ。


接近戦より魔法の方が得意だと言ってたけど・・・さすが騎士国の王子、剣の方もそこそこ使えるのだろう、冒険者の男と普通にやりあっている。


「ライネス、結構強かったんだな・・・」


戦争の時も俺はライネスの戦いを見てなかった為、ライネスの戦いを見るのは今日が初めてだ。


「一国の王子だしね、余程のぼんくらで無い限りそこそこの自衛手段は持ち合わせていると思うよ」


政に関わる立場上頭も良いよな、そう考えるとライネスのスペックは高いようだ。

俺なんかは難しい事はあまり考えたくない、体力バカだから考えるより行動する方が得意だ。


「リアは全試合観戦してるのか?」


「そうよ、元々その為に招かれてるんだしね、因みにリョウの次の対戦相手も女の子だから・・・あまり虐めないようにね」


「まじかよ、めんどくせぇ・・・で、強そうな奴はいたか?」


「えっと、ライネスさんと、この間出合った冒険者の・・・」


「リジアか?」


「うん、彼と・・・アステアの近衛団長で竜騎士のスピアさん、あと一般参加ではサンダって言う魔法使いと、リョウの次の対戦相手かな?一回戦でミストに勝った娘ね、今勝ち残ってる中で強そうなのはそれぐらいかな?」


「意外と少ないな、そこらじゅうから強い奴が集まってるかと思ったんだけど・・・」


「まぁ、相手が悪くて敗退しちゃってる人を入れるともう少し増えるよ、シルバーリーフ(うち)のミストでしょ、クインシスの格闘教師ナクルさん、マナティリアの魔道騎士エイリーさん、アステアのもう一人の参加者で新米近衛騎士のアテアスさんもね・・・それと、強いかどうかは分からないけど一回戦で一般参加の2人・・・イズミさんにトモカさんだったかな?その2人が面白い事やってたわね」


籤運で半分ぐらい強そうな奴も落っこちてるのか・・・まぁ、次の相手は楽しめそうだな・・・


リアとそんな話をしながらライネスの試合を見ていると、やがて決着がついた、冒険者の男が体勢を崩した所へライネスの放った爆発魔法によって男はリングアウト、今回の試合では危なげな所も無く問題無く勝利したようだ。


「ちょっと行って来るな」


「あ、うん」



リアに一言断って俺は試合を終えたライネスの所へ行く。



「よ、お疲れ、問題無く勝ったみたいだな」


「はい、お互い三回戦まで進みましたね・・・でもリョウ、次の試合は油断しないで下さい、リョウの対戦相手少し厄介そうですよ」


はぁ・・・まぁ初見で相手するのはどいつでも厄介だろうけど、次の相手に何かあるのか?


「試合中に小声でしたけど九薙流と呟いていたのが聞こえましたから・・・」


「それがなんなんだ?」


九薙流?何かの流派か?そんな厄介なものなのか?


「二年ほど前と一年ほど前にウィザレスク大陸の東部で起こった事件を解決した、英雄の使っていた剣術なんですよね・・・ま、脅しか本当かは分かりませんけどね」


「英雄の剣術か、はは、なかなか楽しめそうだな」


「いやいや『楽しめそうだな』じゃ無くってですね、リョウの強さが規格外なのは知ってますけど、油断はしないで下さいよ」


まぁ、心配してくれているのは分かるからな、注意はしておこう。


「そう言えば、試合前に話していた娘はどうしたんですか?」


「あぁ、対戦相手(シルク)が気絶したから医務室だ、引き合わせはしたしミーナの目的の人物だったみたいだけど、話についていけなかったからライネスの試合(こっち)に来たんだ、まだ医務室で話し込んでるんじゃネェか?」


「魔剣鍛冶師のミーナさんとソードの家名を持つシルクさん、目的の人物だったと言うことはシルクさんは魔剣鍛冶師グラフト ソードの関係者ですか・・・」


こいつ(ライネス)、本当に色々知ってるなぁ、英雄の使ってた剣術とか魔剣鍛冶師のグラフトって奴とかとか・・・これが王子の実力か?!


ライネスが2人の会話にちょっと興味が湧いたようなので、俺たちは医務室に向かうことにした。

ライネスはこうやっていろんな情報を得ているのか?只の野次馬根性じゃねぇ?

まぁ、2人がまだ居るかどうかは分からないけど・・・俺たちは医務室に向かう。


「孫らしいな、後さぁ前の戦争の時ライネスに着いて行った3人の中にジン ソードって居ただろ?」


「居ましたね、彼が居なかったらあの古代遺物(アーティファクト)を破壊できていたか分かりませんね・・・って、彼もソードですね」


「あぁ、ジンが自分のことグラフトの孫だって言ってたからな、シルクとは兄妹か従兄妹だろうな」



「兄さんに会ったんですか!?」


「「おわ!!」」


急に大声で声をかけられたため、ライネスと2人して飛び上がるように驚いてしまった、

ちょっと恥ずかしい・・・

で?誰だ?急に離しかけてきたのは?


・・・シルクだった、ミーナと共に医務室から出て来て何処かに向かう途中のようだ。


「いつ!?何処でですか!?何してたんですか!?」


「ちょっと待て、まずは落ち着け・・・

で?シルクはやっぱりジンの知り合いか?」


まともに話が出来るくらいには落ち着かせて、まず確認する。


「はい、ジン ソードはアタシの兄です、とても大事なモノを届ける為に探しているんですけど、なかなか見付からなくて・・・兄さんはお爺ちゃんの作った魔剣を回収もしくは破壊する為に旅してるので、この大会に出る出場者の魔剣を確認する為に出てくるんじゃないか、と思ってアタシも出場してみたんですけど・・・」


「ジンは出て無かったってことか」


「はい・・・」


うわぁ、なんか落ち込んじゃったよ、おい・・・


でも俺もあの後のジンの足取りなんて知らないからなぁ、どうしたものかな・・・


「そうですか、でもすみません、僕達もジンさんが今どこに居るのかは分からないんですよ」


おいおい、ライネスそんな正直に話したらもっと落ち込んじゃうだろ、でもそう答えるしかないんだよなぁ・・・


「そう、ですか・・・」


「でも探し方は間違ってないと思いますよ」


「そうだな、俺がジンに最初に出会ったのは偶然だけど、二度目は戦争の時、あいつルージュの魔剣部隊を潰す為に来てたからな、魔剣の集まっている所で待ってればその内来るだろ?」


「そうですね、もしくはどこかに落ち着いてそういった噂を流してみてはいかがですか?

なんでしたらルージュがまた魔剣部隊を作ってるとか噂を流しましょうか?」


「ライネス、お前結構頭良いと思ってたけど・・・バカだろ?んな噂流したらルージュがまた戦争しかけるんじゃないかって疑われるぞ・・・」


「あ、そうでした・・・」


「ははっ、ありがとうございます。噂を流すって言う手は落ち着いた後協会にでも依頼してみますね(あまり兄さんに迷惑かけたくないんだけど、こうも会えないと何らかの手を打たないといけないですね)」


「各地で魔剣を破壊してるんだろ?結構派手に動いてるみたいだし、噂を追っていけばいいだけじゃねぇのか?」


「それが全然追いつけないんですよね、だから先回りしようとしてるんですけどね・・・」


まぁ、やっぱり最初にやってるんだよな、一応確認で聞いただけだ。


「でも、この大会でグラフト ソードの魔剣を使ってる選手って居ないですからね、というか、魔剣はあたしぐらいしか使ってないんですよね、今回の先回りは失敗だったみたいだね」


「そうか、この先の試合は魔剣出てこないのか・・・まぁ適当にやるけど・・・」


「あ、またあたしの魔剣持って行きますか?」


「いや、大丈夫だろ?問題ねぇって」


「だからって油断しないで下さいよ、次の相手は英雄の剣術を使うかもしれないんですから・・・」


ライネスは心配するけど俺はあまり気にしていない、英雄だかなんだか知らないけど関係無いだろ?


「英雄の剣ですか?」


俺は気楽に構えているんだが英雄の剣術にシルクが反応した。


「あぁ、ライネスが俺の次の対戦相手が、前の試合中に九薙とか呟いていたのを聞いてるんだ・・・まぁ、どうでもいいけどな」


「クナギですか・・・それが本物で腕の立つ者なら厄介ですよ」


「シルクさんは九薙流について何か知っているのですか?」


「前に戦ったことが有るだけです。もっともまだ彼が英雄と呼ばれる前の話ですけどね、九薙の剣士が相手なら気を付けて下さい、あの時の彼以上の実力者ならアタシよりも速さは上です。更に魔法使いやアタシのような特異能力者でもないのに、風を繰る剣技を扱ったりしますから」


そうか、シルクより速いのか、次の試合は更に強化をかける必要が有りそうだな、まぁ、適当にやるだけだが・・・


「あ・・・」


「ん?ライネス、どうかしたか?」


「いえ、大した事ではないんですけど、僕の次の対戦相手の試合・・・終わったみたいです」


あ、ホントだ、ライネスの試合の次の試合が終わり、更に次の試合の選手が呼び出されていた。


「どんな相手が勝って来るのか確かめておきたかったんですけど・・・仕方ありませんね」


「はは、俺なんか自分の試合以外ほとんど見てないんだ、問題ねぇ、でも気ぃ付けろよ」


「そうですね、油断はしませんよ」


俺が試合前に話した男の言っていた予言の内容も、まぁ気になるので、ライネスには注意を促しておく、こいつの実力ならそう簡単にはやられないと思うんだけどな。


「それじゃあ、あたしも大会を最後まで見ていきますので、2人とも頑張ってくださいね」


「リョウイチさんの次の対戦相手も気になるので、アタシも大会を最後まで見ていきます。

ま、まだまだ修行中の身ですから、強い人たちの戦いを見て参考にさせてもらいます」


ミーナとシルクと分かれて俺とライネスは来賓席、リアの所へ戻る。

今日の全試合が終わり皆で宿に戻る、ライネスも来賓の一人の為宿も一緒だった。


しばらくリアと話しゆっくりしていたが、俺は明日の試合に備え早めに休む事にした。


英雄の使ったモノと同じ剣術を使う剣士、明日の試合もなかなか楽しめそうだ・・・














・・・はぁ、何だこれ、誰もそんな事言ってなかったけど、わざとか?


翌日、試合の舞台(リング)に上がった俺は思わずため息をついていた。




 第三試合2回戦


 深紅の魔王         疾風の美少女剣士

 リョウイチ アカヤ  対  エリス アサギリ




対戦相手、また女かよ!!


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