三章2話 フリージア
ナインティリア大陸の西部にドラゴンの生息する飛竜山脈(そのまんまだな・・・)が有るその山脈の麓にアステア王国は存在する。
今回フリージアで行われる武闘大会に向かう為の手段をアステア王国が用意してくれている、そう、竜だ。
シルバーリーフ城の庭に背に籠を背負った一匹の竜が降り立った。
飛竜を繰るのは竜騎士と呼ばれるアステア王国の騎士、竜を繰るには、竜の亜種やそれらをものともしない魔物の住む飛竜山脈の頂に君臨する、竜神に力を示さなくてはならないので竜騎士の数はもの凄く少ないそうだ。まぁ竜騎士の数は少なくても竜騎士が繰るのは竜だ、こんなのに攻撃されたら人なんて軽く吹き飛ぶだろう・・・
「面倒な送迎をさせられて、竜騎士も大変だな・・・なぁ、あんた、竜の神さんに力を認められたってことは相当な腕なんだろ?大会には出るのか?」
竜の背に乗り移動中、暇なので籠の外で竜に跨り操縦している竜騎士に話しかけた。
「ちょっと!籠の外に出ないで下さいよ!落ちたらどうするんですか!」
確かに風もきつく、吹き飛ばされそうだけど、まぁ問題無い。
「で、大会ですか?僕は出ませんよ、今回出るのは最近アルア姫様の専任騎士になった少年と近衛騎士団の団長です」
「そいつ等、やっぱり強いのか?」
「そうですね、団長は近衛騎士の中で唯一の竜騎士ですから実力は竜神様の折り紙つきです。専任騎士の少年も姫様の護衛を任される位の実力はありますよ」
それは楽しみだ、そうだなドラゴンとも一度戦ってみたいな、この竜騎士に頼んでみるか・・・いや、やっぱり野生の竜とやる方が楽しそうだよな。機会があったら探してみるか。
竜騎士に再度籠に戻るように言われたので籠に戻り大人しく到着を待つ、その間、リアとシルバーリーフからのもう一人の大会参加者、シルバーリーフの近衛騎士団長が勝手に籠の外に出て動き回るのが危険だと2人で説教かましやがった。
「みなさん、そろそろ到着ですよ」
竜騎士の呼びかけでようやく説教が終わり、地上に目を向ける。
「あれが自由都市フリージア」
中心に闘技場が有りそれを囲むように街が広がっている。
多くの冒険者や旅人が集まる街、ここナインティリア大陸の中央に有るから、確かに拠点にするには良い所だろう。
フリージアに着いた俺たちは用意された宿に案内された。
さすがに一国の来賓を泊めるだけあって豪華な宿だけど、一般庶民な俺にはどうも落ち着かない、まぁ、リアの護衛の役目もあるから俺だけ違う宿って訳には行かないし仕方ないか。
「とりあえず新しい所に来たら探索だな」
「そういうもの?」
「RPGの基本だ、まぁどうでもいいか、それよりなんか食い物探しに行かねぇ?」
「RPG?よく分からないけど、私はまず到着したことをフリージアの代表に報告に行かないと・・・リョウ、付いて来てくれる?」
「ん?わかった、とっとと終わらせて飯食いに行こう」
フリージアの代表か・・・この国は王制じゃないんだよな、他国との交流のために住民に択ばれた代表者が数人居るということだ・・・正直どうでもいい。とっとと終わらせよう。
街の中心にある闘技場の隣にある邸、ここが代表達の仕事場になっている。
「ん?客か?悪いな今俺以外誰もいねぇんだよ」
こいつがフリージアの代表の一人か?俺達が其処に着いた時、俺たちとそれほど変わらない年頃の男が代表の物であろう椅子に座りくつろいでいた。
「あんたは違うのか?」
「あぁ、違う、君には俺が代表者みたいに見えるか?」
見えない、むしろどこかのチンピラに見える。
「そうだろうな、まぁ俺はフリージアからの大会参加者だ、今は留守番中、なんか用なら後で改めて来てくれ、俺じゃ何も分からないからな」
「何適当に帰そうとしてるんですか・・・ちゃんと対応してくださいってお願いしたじゃないですか、
すみません、お待たせしました。私がフリージアの代表の一人ハヅキ リュウグウです」
俺たちの入ってきた扉とは別の扉から一人の女性が入ってきた。
こいつも人以外の種族か?頭に龍の角の様な物が生えてるんだが・・・
「ゴルド王国から参りました。マテリア シルバーリーフです」
「貴女が最近まで隠蔽されていたシルバーリーフの姫君ですか、大会中楽しんでいってくださいね」
「そっちの男は?」
ん?俺か?
「彼はリョウイチ アカヤ、シルバーリーフからの大会参加者の一人です」
「なら俺と当たるかもな、そんときゃよろしくな」
「あぁ、まぁ、適当にな」
その後もリアとハヅキがごちゃごちゃ話していたが、難しいことはどうでもいいのでボーっとしていた。留守番をしていた男は自分の仕事は終わったと、早々に退室しているので暇だ。
やがて話も終わり俺達は街に繰り出していた。明日から武闘大会の予選が始まると言うことも有り、露店なんかが多く出ていてお祭りムードで盛り上がっている。
「は~~凄く緊張したよ~、色々失敗しちゃたし・・・」
「そうか?上手く対応できてた様に見えたけどな」
ボーっと聞いてただけだけど特に問題があるようには感じなかったけどな。
「そうでも無いよ、姉さんならもっと上手くやると思うのよ、剣ばかりじゃなくてもう少しこういうのも勉強しとけば良かったな・・・」
まぁ、城から出て王女としての役割を果たす機会が有るなんて思って無かったのだろうから仕方ないだろう。
「んなもん適当で良いんだよ、面白ければ何でも有りだ、文句言う奴がいたらぶっ飛ばす」
リアは王女とか関係なく外を楽しんでいいと思う、今はあの離宮の中で感じていたモノからだいぶ解放されたのだから、これまでの分も存分に楽しむべきだ。
「ぶっ飛ばすって、ほんとにやっちゃ駄目だよ」
「・・・・・・・・・・・・あぁ」
「今の間は?!やる気なの?!」
「・・・冗談だって、それよりこんなに店が出てるんだ色々回ってみよう」
「又間が有った!?ほんとに冗談?!」
「いいから、いいから、とりあえず楽しもう」
「もう、ま、いいわ、とりあえず本戦までやることも無いし付き合ってあげる」
仕方ないから付き合ってるみたいな言い方だったけど、リアの表情は笑顔で今を楽しんでいることがちゃんと伝わって来る、楽しんでいるなら問題無い、俺はこれから先、この笑顔を守っていくだけだ。