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二章9話 愚かな王子


魔物の爪と俺の強化した拳がぶつかり合い金属を打ち合ったような音が響く、身体を殴ることは既に諦めている、この魔物、獅子に似た外見をしているけど体毛が長い、しかも剣で斬ろうとするとその体毛が剣に絡みついて取れなくなるのだ、俺も一度試してみたけど危うく身体ごと捕まる所だった。


だから体毛に覆われていない目や口内を狙って矢が放たれるが、口と目をそれぞれ閉じやり過ごされる。


俺は魔法が使えるようになるまでの時間稼ぎに専念する事にした。現戦力で倒そうとしても被害が増えるだけだ。


幸い魔物の動きは遅いし俺なら余裕を持って避けられる。



振り下ろされる爪、横に跳び退く。


腕を横に振り薙ぎ払って来た、大きく後に跳び退く。


噛み付こうとしてきた、逆に突っ込んで鼻っ面を蹴る、ちっ、かすっただけか。


巨体での突進、ヤバイ、みんなに逃げるように叫ぶ、避難が間に合い何とかやり過ごせた。



「くそ、めんどくせぇ・・・」


一気に片付けられないもんか?魔法が使えるようにならなきゃ無理か?


「リョウイチ、調子はどうだ?」


ソルダか・・・とりあえず殴る。


「って!だから!好きでこんな格好してるんじゃねぇって言ってるだろ!」


毎回やってるから俺の意図に直ぐに気付いたか、フリフリドレスを着たソルダが大小の剣を両手に俺の隣で喚く。


「無駄に怪我したくないだろ?魔法が使えるようになるまで下がってろよ」


「ふふん、封魔の結界の中でも使える魔法が有るだろ」


何だその得意そうな面は、その格好(フリフリドレス)でやられると余計にムカつくぞ。



「まぁ、少し位オレにも活躍させろって、この魔法は得意なんだ


 右翼の剣は炎の刃

 炎属性攻撃付加(エンチャント)

 左翼の剣は氷の刃

 氷属性攻撃付加(エンチャント)



ソルダの右手のロングソードが赤い光を纏い左手のショートソードは青い光を纏う。

あぁ、付加魔法(エンチャント)か・・・そういえば、ジンの魔法剣といっしょで何故か使えるんだよなぁ・・・


「リョウイチ!来るぞ!」


「分かってる!出しゃばって来たんだ怪我するなよ!」


とは言うが、ソルダの動きなら油断しなければ問題ないだろう、こいつ俺との訓練でだいぶ腕を上げている、出会った頃と比べると雲泥の差だ、本人は気付いてないみたいだけどな・・・


俺もソルダも魔物の攻撃を避ける、俺はそのまま次の攻撃に備えたがソルダは魔物に向かって行く、炎の力を付加されたロングソードは魔物の体毛に絡まる事無く魔物の身体を傷つけた。


「お、効いたな」


「当然!でもやっぱり体毛が邪魔で大きな傷は付けられないな、時間稼ぎに徹した方が利巧かな?」


(こっち)もそろそろ壊れてもいいと思うんだけどなぁ・・・」


そう言い魔物の攻撃に合わせ拳を振るう、魔物の爪と俺の強化した拳がぶつかり合い、再度金属を打ち合ったような音が響く。まぁ、一度、俺の拳の方が先に逝っちゃってるんだけど、直ぐに治癒力を強化して治るまで回避に専念していたので今は大丈夫だ。


「もうちょいか?ならオレも・・・」


魔物と攻防を繰り広げながら何度か魔物の爪をロングソードで斬る、傷は付かないが爪が赤くなってるように見える・・・温度上がってるな・・・


「ソルダ、それじゃ熱くて俺が殴れねぇぞ」


「問題無い、冷やすから」


続いて左手のショートソードで爪を斬り付ける、ジュっと音がして爪の赤みが消えていく、ソルダの剣の青い光も消えた。


「だあらぁぁ!!」


思いっきり拳を爪に叩き込む、魔物の爪はようやく砕けた。


「グオオオオ!!」



「やっとかよ、割に合わねぇ」


「リョウイチさん、お待たせしました」


「今度はフィリアか?なんだ?魔法が使えるようになったか?」


ソルダに続きフィリアが出てくる。


「いえ、それはまだです」


「だったら下がってた方が良いぞ」


「そうもいきません、リョウイチさんにばかり負担をかけるわけにはいきません。今できる最大の攻撃を・・・」


後から前に出てきた兵たちに指示を出す。


「弓隊前に!私の射に合わせて一斉掃射!」


大量の矢が魔物に向けて放たれる、矢は魔物の体毛に遮られること無く魔物の身体に突き刺さった。


「矢に付加魔法(エンチャント)をかけました。時間は掛かりましたけど、これだけの数を一斉に打ち込めば少しは効くはずです」


矢には様々な付加魔法(エンチャント)がかけられていたようで、魔物は痛みでのた打ち回っている。


「ぐぞ!なんだんだ!おばえらは!」


「な!?」


今、魔物の口から言葉が発せられた、くぐもった声だが確かに言葉を話した。


「邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ!」


魔物は叫びながらがむしゃらに腕を振るってくる。


「各自後退しつつ第二射用意!・・・撃て!!」


ハリネズミか?・・・魔物は体中に矢が突き刺さっているが普通に動いている、多少のダメージは与えられたようだが決定打になってない、あれだけやって駄目なのか?


「まだまだ!火矢用意!・・・撃て!!」


「がぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


先に放った矢に何か仕込まれていたんだろうか、火が燃え移り魔物を包み込む。

魔法が使えないなりに色々有効な手を考えてきてるみたいだな。

弓隊が火を消そうと転げ回る魔物から離れる。

体毛が一部燃えたな、これならいけるんじゃないか?


隙を突いて魔物の横っ腹をぶん殴る、体毛による衝撃の緩和が行われず、魔物に直でダメージがいく。


「くぞ!死にぞこないが!!」


巨体なだけあってタフだ、死んでもおかしくないだけの攻撃は与えてる筈なんだけどなぁ。


「来た!リョウイチ!離れろ!」


ソルダの呼びかけにチラリと後方を見ると、前進してきた魔法部隊と、既に詠唱が終わっているのか部隊の頭上に、光る赤い魔法陣が浮かび上がっていた。


魔法が使えるようになったのか?ライネスやジン達の古代遺物(アーティファクト)破壊組みがやったみたいだな・・・


急いで魔物から距離を取る、俺が十分に離れたところで魔法部隊の奴等が声をそろえて叫んだ。


「「『フレイムフォール』」」


魔法隊の頭上に展開されていた魔法陣が消え、瞬時に魔物の頭上に現れる、その魔法陣から炎の光が降りてきて、魔物を飲み込んだ。


炎が消えた後魔物の姿も消えていた。


うわぁ・・・凄ぇ威力だ・・・


終わったな、ゴルドもルージュも被害は大きい、このまま戦いを続けるのは無理だろう、どのみちライネスが来るのを待たなきゃいけないからな、とりあえず休むか・・・


「ソルダ、フィリア、流石に疲れた・・・ちょっと休むわ」


敵味方関係なく勝利に沸く戦場で俺はゆっくりと目を閉じ少し休むことにした。


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