二章7話 魔と踊る
「戦場に張られた封魔の結界は古代遺物による物です。
この戦場の四方に設置された古代遺物を一つでも破壊できれば、陣は維持できなくなるはずです。」
今戦っているルージュ国の王子が来たらしい、まぁ、俺が案内しちまったんだけど・・・ここの兵士の顔全員覚えてるわけ無いからな、敵対しに来たわけじゃないみたいだから結果オーライっと。
今そいつ、ライネスはフィリアと話している。
「僕が古代遺物の一つを破壊に向かいます。
魔法が使えるようになったらこの戦場を押さえてください、ルージュの兵士たちの志気を殺いでもらえれば、後は僕が戦闘を止めさせます」
「それではルージュが負けることになりますよ」
「構いません、こんな戦いさっさと止めた方が皆の為です。
ただ、戦いが終わった後ルージュとは停戦協定を結んでもらいたいのです」
「無駄な争いをなくせるなら構わないでしょう、ゴルドの方には伝令を出しておきましょう」
「問題は魔法の封印された中で僕の剣技だけで古代遺物が破壊できるかどうかですが・・・」
「なら俺が一緒に付いて行こう、結界の中でも俺の魔法剣は使えたからな」
ジン、まだ居たんだな。魔法剣士か、俺のイメージするゲームとかの魔法剣とは違うんだよな・・・
「ジンさん、いいのですか?貴方達は本来ならこの戦争には無関係な方たちなのに」
「あぁ、この戦いが終わるまでは協力させてもらう、まだ破壊しなきゃいけない魔剣が残ってるかもしれないしな」
あ、そうだ。
「ジン、これも破壊しとくか?」
魔剣武装を解除したことで俺の手元に残った魔剣をジンに差し出す。
「爺さんの作った魔剣じゃないから俺に破壊する理由は無いけど、いや、そうでもないか」
剣を見て何かに気付いたみたいだな。
「あぁ、この剣を魔装した時やけに俺に馴染んだ、多分相当血を吸ってるぞ」
半吸血鬼の俺に馴染むんだ、相当血を吸ってるのは間違いないだろう。
「確かに、淀んだ魔力が漏れてきてる、破壊しとかないと厄介なことになるな」
「んじゃ、任せた」
「あぁ」
さて、話しは続いているみたいだ、俺は次に備えて寝るか・・・
後でフィリアに作戦会議中に寝るなと怒られた・・・
ライネス、ジン、ロウガ、カリンの4人は封魔の陣を張っている古代遺物の破壊に向かった。その間に俺たちはルージュに攻撃を仕掛けることになる。
「いいですか!今回は総力戦です。まず特異部隊が前線でルージュ軍を食い止めます。他の隊の騎士達は特異隊の動きの妨げにならない距離で敵の足止めと後ろに控える魔法隊の護衛、戦闘中に魔法が使用できるようになるので協奏魔法隊は大きい魔法の準備を、当てなくても構いません、威嚇して相手の戦意を殺ぐだけで充分です」
俺たちが戦場に出ると既に戦いは始まっていた。
まて、誰と誰が戦っている!?俺たちは今来たばかりだぞ!
何か大きな物を取り囲み戦闘を始めているルージュ軍の兵士たち。
「おいおい、何だよありゃ・・・」
「っ!!魔物!?」
丁度隣に居たソルダが魔物の大きさに震える、・・・てか、その格好(ヒラヒラドレス)で俺の隣に立つな、殴るぞ。
「って!何で殴る!」
「うるさい変態」
「だから好きでこんな格好してるんじゃねぇって言ってるだろ!
って、今はそんなこと言ってる場合じゃねぇ!」
確かに、こうして馬鹿やってる間にも魔物が腕を振るっただけで数人のルージュ兵が吹っ飛ばされて行く。普通に思いついたけど・・・
「これ放っといたらルージュ軍全滅しないか?」
「でもその次は私たちに狙いを変えてくるでしょうね・・・」
フィリアも近くに来たか、俺たちの会話が聞こえたようだ、フィリアの言うとおり魔物を放っておくのは危険だな、なら・・・
「ライネスとの約束もあるし、ルージュ軍と協力するか」
「ですね・・・
ゴルド全軍!ルージュ軍と協力して魔物の討伐にかかってください!
特異部隊、出来るだけ魔物の足止めを!他の隊は怪我人の治療と搬送を!
魔法隊!封魔の陣が破れ次第魔物に向かい攻撃を始めてください!」
フィリアが新たな指示を出し俺たちも魔物に挑んでいく、ライネスが事を成す前にゴルド軍とルージュ軍は一時的とはいえ敵対を止める事になった。
「魔物相手か、加減しなくて良い分楽だな」
「いえ、そうも行きませんよ・・・
あのデカ物、魔物かと思っていましたけどもっと性質の悪い物ですね、魔獣でしょうか?」
俺が全力で殺っても無理なのか?
まぁ、試してみるか・・・
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行方不明の指揮官、ルージュ帝国第一王子ハイレルを捜索に出ていた部隊が戦場で大型の魔獣に遭遇した。魔獣は捜索隊に襲い掛かり始めに本隊に連絡に行った者以外を全て引き裂いた。
ルージュ軍本隊が戦場に戻ったとき既に魔獣以外に動く者は居なくなっていた。
「なんなんだこいつは・・・」
援軍の兵士たちは大型の魔獣に少し混乱しているようだが、直ぐに部隊長と思われる者達が兵を指揮して魔獣との戦いを開始した。
「くそ、どうしてこんなことに!」
状況は悪かった、魔獣の動きはそれほど速くないのだが巨体故に攻撃力が凄まじい、
体中を覆う漆黒の体毛が武器を絡め攻撃を体まで通さない。
兵は疲弊して行き状況はどんどん悪くなる。
魔獣の爪が1人の兵士に振り下ろされる、兵士は反応が遅れそのまま魔獣に引き裂かれるかと思われたが、兵士と魔獣の間に割って入るものが居た。
「うらぁぁ!」
そいつは魔獣の爪を正面から殴り返し魔獣を僅かに後退させた。
「な!」
ルージュの兵士は常識外れなその行動と、それを成した人物を見て驚きの声を漏らす。
「深紅の・・・魔王!?」
「戦争は止めだ、魔獣を倒すほうが大事だろ?」
ゴルドとルージュの共闘が始まった・・・