二章6話 再戦魔剣部隊
リョウイチが炎を纏い戦場を駆け回る、いったい何をやったのか分からないが、そんなことが出来るなら最初からやっておけよ、これなら俺たちが助けなくても大丈夫だったんじゃないか?
俺は俺で魔剣を片っ端から破壊して回る。
俺の持つ剣は爺さんの最後の作品で希少金属【星鋼】を錬鍛し光の精霊の魂を込めて創られている。武器(特に魔剣)に対して絶大な破壊力を持つ魔剣を超えた武器。魔剣部隊にとっては天敵と言えるだろう。
『マスター、輝力残量50%を切りました』
魔剣部隊を半分ほど潰しただろうか?ここで俺の持つ剣から声が聞こえてくる、光の精霊の魂を込めて創られていると言ったが、その精霊の人格が剣に宿っているのだ、武器を破壊する剣の力、刃断などを使用するために必要な輝力の蓄積量と、能力の使用を管理していてくれている。
「リョウイチも頑張ってるし、残しといた輝力だけで足りそうだな」
『はい、マスター1人で相手をしていたら確実に足りませんでしたけど・・・』
「分かってる、だからさっきの戦いでは頃合を見て逃げただろ?」
『はい』
「ま、もう少しだ、リョウイチに負けないように暴れるぞ!」
俺の剣の名は、天燐の剣、魔剣の粋を超え奇跡の刃に近付いた、天剣と呼ばれる人が叡智によって創り出した奇跡。
「魔剣如きじゃ相手にならねぇよ!」
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魔を纏う、魔剣武装か・・・さっき取り込んだ魔剣、俺が掴んだ時炎を出したんだよなぁ、俺の周りに火が舞ってるのはそれか?
さて、今取り込んでる魔剣は単に火を出すってだけみたいだな。
あと、火に対する抵抗も上がってるみたいで俺の周りで舞ってる火が全然熱くない。
「おまえ、何だそれ?魔法じゃないよな?」
ソルダ、お前こそなんだその格好、着替え無いのか?こいつゴスロリドレスのままじゃねぇか、え?目覚めたのか?微妙に似合ってるけど止めとけ、殴るぞ。
「って!何で殴る!?」
「その格好で俺の前に出て来るな、変態」
「違!好きで着てるんじゃねぇ!
まぁ、そうだろうな。好きでやってるならお前とは縁を切るぞ。
「まぁ、死なない程度に頑張れよ、俺もジンに負けないように暴れてくるからよ」
炎を纏ったまま俺は混戦の中に突っ込んでいく、俺の周囲に渦巻く炎を強化した手に集め敵の1人を後から殴る、炎が鎧を焼き俺の拳を直接敵の体に届かせる。
面白いように飛んで行った。周囲の敵と味方を巻き込んで吹っ飛んでいった。
やべぇ、味方も巻き込んだな、次はちょっと注意しよう。
魔剣部隊を半分ほど潰したか?ジンの活躍が大きいな、負けてらんねぇ!
「くそ!こんな筈じゃ!俺の魔剣部隊は最強なんだ!」
「なんだ?俺1人に何人か殺られるような部隊が最強なのか?」
こいつ、敵の司令官だよな、これぐらいで取り乱してたら直ぐに全滅するぞ、まぁ、敵だからいいけど・・・
「ちっ、死に損ないが!!」
「へっ、さっきまでの俺とは違うから、覚悟しろ」
拳の炎を周囲に戻す、こいつの雷に炎でどれだけ対抗できるか分からないけど無いよりはいいだろう。
「もう一度喰らわせてやろう!走れ雷蛇!」
さすが雷、速いな・・・放たれた雷の蛇が回避行動に出ていない俺に瞬時に迫る、巻き付こうとする雷を炎を集めた拳でぶち抜く。
雷が弾け火花が飛び散る、雷蛇は消すことが出来たが俺の纏っていた炎も消え瞳の色が元に戻る魔剣武装が解けた、俺から離れ魔剣に戻った剣が砕け散る。
ちっ、取り込んだ魔剣よりあいつの魔剣の方が力が上か、でも前の時、雷蛇を使うのに時間がかかる感じだったし、今の内に・・・近付いて魔剣を掴む。
「魔剣武装」
「な!?」
掴んだ魔剣が光を放ち弾けるように消える、光は俺の身体に取り込まれ俺の瞳が紫に染まる。
敵の武器は奪った、後は・・・
「ぶっ飛ばす!!」
雷の魔剣を取り込み、俺の速さは強化され攻撃が鋭さを増す。
敵指令は俺の拳を顔面に喰らい吹っ飛んでいった。まぁ、死んでなくても暫く動けないだろう。
最早ぶっ飛ばした奴への興味は無い、俺は再び戦場を駆け暴れ回る。
もう直ぐ決着だ・・・
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魔剣部隊の戦闘は、魔剣の全破壊と言う結果で終わりを迎えた、戻った部隊の中に兄さんの姿が無かったけど戦死してはいないらしい、兄さんがこれで終わるとは思えない僕は、この戦争を終わらせる為にゴルドの陣営に訪れていた。
「ん?お疲れ、多分暫くは交戦は無いから今のうちに休んどけってよ」
ゴルドの陣営で僕が初めに会ったのは銀髪の僕と同じ年頃の男性だった。
あれ?銀髪?この大陸じゃシルバーリーフの血筋以外で銀髪は珍しいんだけど、この人シルバーリーフの王族の1人かな?なんか僕を味方と勘違いしてるみたいだけど・・・
「すみません、司令官はどちらにいらっしゃいますか?」
「司令官?あぁ、フィリアなら向うだ、何か有ったのか?
まさかもう、次が攻めてきたとかじゃないだろうな?
こっちは一回死にかけてるってのに、少しは休ませろよな・・・」
兄さんの魔剣部隊との戦いは壮絶だったようですからね。
「まぁいいや、こっちだ、付いて来い」
銀髪の方に案内されてたどり着いた場所で綺麗なエルフの女性が、数人の騎士達と共になにやら話し合っていた。
「あ、リョウイチさん!どこ行ってたんですか!まだ作戦会議は終わってませんよ!」
「俺は暴れるだけだろう?難しいことは任せる、なぁに、ちゃんと役に立ってやるよ」
「それでも、作戦をもう一度説明する手間がですね、あら?そちらの方は?」
銀髪の人に説教を始めたエルフの女性が、ようやく僕に気付いてくれた。
「会議中失礼します。僕の名はライネス、ライネス フレイムロウ、この度の戦いにおいてお願いが有ってまいりました」
「「フレイムロウ!!」」
さて、ここからは失敗できないぞ、この戦いを終わらせる為、国の民みんなを守る為に・・・
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「くそ、俺の部隊があんな奴等に負けるなんて!このままじゃ絶対に済まさないぞ!」
戦場から少し離れた森の中で魔剣部隊の司令官、ルージュ国の第一王子、ハイレル フレイムロウが悪態をついていた。
そこに、フードを目深に被ったローブ姿の男が近付いて来た。
「力が必要か?」
「お前か、ああ!必要だ!魔剣でも魔獣でもいいさっさと寄こせ!」
「ふむ、では魔獣に戦ってもらおうか・・・これを使え」
ローブの男は懐から取り出した宝玉をハイレルに渡し姿を消した。
「ふふふ、あははははは、待ってろよ屑共、直ぐに殺してやる、あははははは!」
宝玉が怪しく輝き森を不気味な光で染め上げる、光が消えた後、森には一匹の醜悪な魔獣が奇声を上げていた。
それは、壊れたような笑い声、魔獣は周囲に破壊を撒き散らしながら戦場に向かい歩みを進める。