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一章12話 契約

「詳しい説明をしている暇は無い、択べ、

このまま死ぬか、人じゃなくなったとしても生きるか・・・」


呼吸の浅くなっていくリアに告げる、人じゃなくなることをリアは受け入れるだろうか?

この世界には魔物や亜人が多数存在する、それがリアの答えにどう影響するだろうか?

どちらを択ぶのか、元々化物である俺には予想が出来ない。


「生き・・・たい・・・」


択んだ、どういう想いの元でリアがその選択をしたのかはどうでもいい、リアを死なせたくなかった俺は答えと共に自分の指先を噛み切り溢れる血をリアの口に含ませる。


「契約だ、俺の血はお前の中に溶け込み、俺とお前の刻の流れを同化させる・・・」


小さくリアの喉が鳴る、俺の血を飲み込んだ、これで・・・


「代価はお前が俺の糧となること・・・」


血の流れ続けるリアの傷口に口を付ける、血を一口飲みこれで契約は完了の筈だ、前に親父から聞いた記憶を頼りにやっただけなので上手くいくかは分からないんだけど・・・


じっと様子を窺っているとリアの傷口が塞がりだした。


成功、リアの身体に俺と同じか少し劣化した自己治癒能力が発揮されている。


共血の毒(バンパイアギフト)、吸血鬼化とでも言えば良いのだろうか?

厳密には違うけど上手い言葉が浮かばない、リアに俺の力の一部と人より長い寿命を与えた。

物語に出て来るみたいに吸血すれば眷族になるなんてことは無く今みたいに少し手順を踏む必要がある。


まぁ、これでリアは人とは言えない存在になったんだけどな、後天的な半吸血鬼とでも言えばいいかな?


俺の自己治癒強化とかは、リアの体質の影響を受けていないから、成功すれば助かると思っていたけど、本来この契約は吸血鬼が気に入った人間の血を長く捕食する為に有るものだ、半吸血鬼の俺にも出来るのかが賭けだったんだよなぁ。


後は副作用が出ないかだな。


顔色は悪いままだけど、静かに寝息を立て始めたリアを抱かかえリアの部屋に向かう、命は助かったけど失った血はまだ戻っていないようだ、とりあえず休ませてやらないとな・・・


「あ、リアの部屋どこだ?」


しばらくさ迷い、たまたま見つけたメイドにリアを任せる、血濡れの服などに疑問を持ったようだけどそこは強引に押し切った。



_______________________________________________________________________________


「ん・・・・・・」


目が覚めると見慣れた自分の部屋にいた、あれ?私、暗殺者に・・・

眠っていたベッドから身を起こしてみる、服を肌け確認してみたけど斬られた傷はまったく見当たらなかった。


「夢?」


そんな筈は無い、でも私の身体は怪我しているどころか逆にいつもより調子がいい、なんだか内側から溢れてくるような力を感じる。


「どうなってるの?」


暗殺者に襲われた時のことを思い出す、致命傷を負ってろくに動けない私に振り下ろされる黒い刃、その後その刃が私に届く事は無かったんだけど、どうしてだった?


「ん?何だ起きて・・・た・・・の・・・」


扉が開きリョウが部屋に入って来た。けど、どうして入り口で立ち止まっているの?


「お前は、何してるんだ・・・」


そう言われて自分が服を肌けたままなのに気付いた。


「!!」


慌てて服を整えて晒していた肌を隠す。顔が赤くなっているのが分かる、凄く恥ずかしい。

リョウが全然気にしていないように見えるのに何だかムッとする。


「調子はどうだ?何か変なとこは無いか?」


心配そうに訊ねてくる、どうしたんだろう?


「え?調子は今までに無いくらい良いけど・・・」


「そうか、まぁ良かった、副作用が無いかだけ心配だったんだよなぁ」


あ、そうだ、思い出した。暗殺者を一瞬でミンチにして助けてくれた、その後死にそうな私に死ぬか人を辞めるかの選択を迫ったリョウのことを・・・


私は・・・人じゃなくなっても生きることを望んだ。この調子の良さはそのせい?

今の私は人じゃないの?姿形は変わってないと思うんだけど・・・あれだけの傷が一切見当たらないのだ、確かに私の体は人間を辞めてしまっているのかもしれない。


「顔色も悪くない、失った血も戻ったみたいだな」


「えっと、どうなってるの?」


「まぁ、話さない訳にもいかないよな・・・

説明する前に聞いておきたいんだが、この世界に吸血鬼っているか?」


吸血鬼?昔、そう呼ばれる魔族は居たみたいだけど・・・

吸血鬼化の感染力が危険すぎて駆逐された為、今は居ない筈。


「そうか、居たのか・・・まぁ、その吸血鬼とは別物だけど・・・」


吸血鬼と人間の混血?リョウって混血(ミックス)だったの?しかもあの桁外れの能力、間違いなく両親の良い所を受け継いだ良混血(ダブル)ね、その能力で私を半吸血鬼化して、リョウほどじゃないけど強化された自己治癒能力で助かったってことか、体の調子が良いのは、身体強化の力が制御できてないから無意識に身体を強化してしまっているせい。


「ま、これでお前は吸血鬼(バケモノ)だ、嫌なら今すぐ殺してやるぞ」


驚きはしたけど嫌じゃない、人じゃなくなっても生きることを択んだのは私だ、後悔はしていない。


「そうか・・・まぁ姿は人の時と変わらないから今まで通り生活して大丈夫だぞ、あとは・・・気にしなくていいか、それぐらいだ、普通より長く生きられてラッキーぐらいに思っといてくれ」


ラッキー?今まで通りで問題ないみたいのかな?

何かまだ有りそうな感じだけど、これだけの力を得るのに代償が無いってわけ無いわよね。


「代償か?まぁ、俺に対して俺を殺すような攻撃は出来なくなってる筈だ、本来この契約は吸血鬼が飯を確保する為の物だからな、俺に血を吸われることに快感を覚えるようになるが・・・まぁ、俺は普通の飯で栄養取れるからな、血を吸うこともないし、気にするようなリスクは無いと思っていい」


本当に私は運が良かったみたいね、ほぼ代償無しで人並み外れた力を手に入れた、強化の力を制御するには少し訓練が居るみたいだけど・・・


「んじゃ、俺はマナのとこに行って来る」


「姉さんのとこ?」


「ああ、なんかまた戦いに参加してくれって言うから打ち合わせだ」


また?!前にもあったの?リョウはゴルドの兵士ってわけでもないのに・・・


「まぁ、次の戦いでは離宮(ここ)の兵士のみが前線に立たされるみたいだからな・・・

俺は離宮ここの連中が結構気に入ってるんだ、死なせないように暴れてきてやるよ」


そう言って扉に向かうリョウの背にお礼の言葉をかける・・・私を助けてくれたこと、離宮のみんなの助けになろうとしてくれていること・・・


「ん、気にすんな、俺はやりたいことをやってるだけだからな・・・」


うん、ありがとう・・・




_______________________________________________________________________________


戦場は前回と同じ場所、封魔の陣が残ったまま・・・それは、俺にとって有利にしかならないな、戦線に立つのは離宮の特異部隊、指揮官が・・・


「ん?フィリア、お前が指揮を取るのか?」


マナとフィリアから次の戦闘の細かい話を聞いていたんだけど、どうやらフィリアも特異部隊と共に前線に出るらしい、それも指揮官として。


「下手な指揮官をつけるよりその方が良いでしょう、最も私は撤退命令ぐらいしか出しませんけどね」


前に、離宮の奴等には自由に戦わせたほうが良い動きをするって言ってたやつか・・・


「じゃぁ俺も好きにヤっていいんだな?」


「はい、貴方の活躍、期待しています」


「あまり期待しないでくれ、俺なんて殺ろうと思えば簡単に殺られるぞ。

まぁ、前回と同じ場所なら俺に利が有るけど・・・」


魔法使いが相手じゃないなら人間相手に負ける気がしねぇな・・・相手にしている奴が雑魚ばかりなのかもしれないけど・・・うん、油断しないようにしとこう。


「そういえば、諜報員の報告で有ったのですが、リョウイチさんマテリアに何かしましたか?」


「お前なぁ、見てたなら助けろって、その諜報員に言っとけ・・・

まぁ、やったって言えばやったな、あいつ前より死ににくくなってる筈だ」


それと、少し訓練すればリアの奴、俺より強くなるぞ・・・劣化版の身体強化に魔法無効化の体質、俺だと魔法使いが天敵なんだけど、それをまったく気にしなくていいって・・・強すぎねぇ?まぁその辺は言わないけど。


「それは貴方の力?」


「説明する気は無いぞ、面倒だからな・・・」


あまり自分のことを話すのは止めよう、厄介なことになるのは目に見えてる、いや、この世界ではどうか分からないか、元の世界で俺のことがばれたら大騒ぎになるのは間違いないしな、まぁリアに説明するのは仕方ない・・・後で言触らさないように言っとこう。


「まぁ、知らないほうが良い事って有るもんだぞ、気にすんな

とにかく俺は次の戦いで暴れればいいんだろ?了解だ、じゃ、俺はこれで・・・」


余計な事を聞かれないうちに逃げることにした。


なんか後ろからまだ何か言ってる声が聞こえるけど、聞こえない、聞こえない。




さて、それじゃひと暴れするか・・・




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